報告を
誤字があり修正します。
双睛× 重明〇
孫権が長沙郡の侵攻を決めてから、十数日が経ったある日。
陳留に居る曹昂は野猫を撫でていた。
「気持ちいいか? 短耳」
「ニャーオ」
背中を撫でられている野猫の短耳は気持ちよさそうな声をあげていた。
名前の由来は、属名が短い耳という意があるので、其処からとった。
狸猫に比べると、耳が短いので誰も名前の由来を気にしなかった。
そう撫でているの曹昂の背には、西藏獒犬の吼天がおりぴったりとくっついていた。
短耳を吼天と会わせたのだが、二匹は暫く視線を交わらせた後、特に喧嘩する無く仲良くしていた。
最初、会わせると喧嘩すると思っていたので、あっさりと仲良くなるので、曹昂は拍子抜けしていのた。
だが、短耳が犬鷲の重明と会うなり、二匹とも睨みあった後、威嚇しだした。
普段は吠えない重明が鳴き、短耳は片方の上唇をつり上げ震わせて、大きな犬歯をむき出しにしていた。
睨みあう二匹を見た曹昂はどうしようと思っていると、吼天が吠えた。
その大きい咆哮に、二匹はビクリと体を震わせた。
やがて、二匹は威嚇しあうのをやめた。
この二匹は相性が悪いのだと悟り、出来るだけ一緒にしない事に決めた後、曹昂は重明の相手をしていた。
此処の所相手をしていなかった為か、撫でろとばかりにくっついてきた。
重明が満足するまで相手をし専用の籠に戻した後、私室に戻り今度は短耳の相手をしていた。
「はぁ、何か撫でているだけなのに、心が落ち着くな」
これが所謂アニマルセラピーというものなのだろうと思いながら、曹昂は短耳を撫でていた。
そう癒されている所に、部屋の外に控えている孫礼が入ってきた。
「お寛ぎ中、失礼します。殿、密偵がお会いしたいと申しております」
「通せ」
孫礼が下がると、曹昂は緩んでいた顔を引き締め、短耳達を連れて部屋の隅に置き軽く身だしなみを整えると、孫礼が密偵と共に部屋に入ってきた。
そして、孫礼が部屋を出て行くと、密偵が曹昂に一礼する。
「何か報告する事が起きたのか?」
「はっ、揚州にいる者から報告が・・・・・・」
密偵が話している最中に、視界に短耳が視界に入った。
そのまま目で追っていると、曹昂の傍で止まり、鳴き始めた。
相手をしてほしいと鳴いていると様だ。
「後で相手をするから。少しだけ静かにしてくれ」
曹昂が口に人差し指を立てて言うが、短耳は構わず鳴き始めた。
困ったと思っていると、吼天が立ち上がり短耳の元まで来ると、首根っこを咥えて部屋を出て行った。
「・・・・・・賢い犬ですね」
「まぁ、そうだな」
「それで、孫権が兵を集めていると報告が来ました。どこかに攻め込む様です」
「やれやれ、何処に攻め込んでも大した事は出来ないというのに」
曹昂は呆れた様に息を吐いた。
「どこに攻め込むかは分かるか?」
「報告によりますと、長沙郡に侵攻する事にした様です」
「長沙郡か。劉磐を倒す事が出来るのか?」
周瑜が居るので出来ない事はないかもしれないが、劉表が援軍を送れば困難になるだろうと予想できた。
孫権は、そこまで考えているのか気になりはしたが、曹昂には分からなかった。
「・・・まぁ、孫権をどうするか考えるとするか。報告ご苦労」
「はっ」
曹昂から労いの言葉を聞いた密偵は一礼し、部屋を出て行った。
司馬懿達を呼ぼうとした所で、短耳が部屋に入ってきて曹昂に身体をこすりつけて来た。
「はいはい。分かったよ」
甘えてくる短耳を撫でる曹昂は、終わったら司馬懿達を呼ぶことにした。
(長丁場になるから、何か作るか)
そう思っていたせいか、短耳が不満そうな声をあげて鳴いた。
「ああ、すまない」
考え事していた為、おざなりに撫でていた事を謝りつつ、曹昂は短耳を撫でた。
短耳が満足して離れていくと、今度は吼天が頭突きをみまってきた。
構ってほしいと言っているのだと思い、曹昂は吼天が満足するまで相手をした。




