多いので
王異が陳留に来てから数日が経った、ある日。
王異の伝手で、送られてきた狸猫が届けられた。
「これは、また随分と多いな」
大広間にて、曹昂は届けられた狸猫達を見ていた。
茶色の毛衣に、黒の縞模様があるのもいれば、灰色の毛衣に青みがかった黒い縞模様のもいた。
中には、虎の様に黄色い毛に黒い縞模様や、白い毛に黒い斑があるのもいた。
曹昂の気を買おうとしたのか、大量に送られていた。
その数、全部合わせて七十二匹もいた。
「流石に、全て飼うのは無理があるな」
「申し訳ありません。まさか、これだけ送ってくると聞いていませんでしたので」
王異もこれほど沢山送ると聞いていなかったので、数を見て驚いていた。
「とりあえず、欲しい人にあげるとしよう。後は誰かに送るか」
曹昂は既に王異が共に連れて来た狸猫を飼う事にしたので、送られてきた猫については欲しい人にあげて、残りは誰かに送る事にした。
「・・・・・・ああ、そうだ。この前荀彧殿が話していたな」
猫の事を考えていると、この前陳留に来た荀彧の事を思い出した。
江夏郡への侵攻の詔が来るまでの間に、雑談していたのだが、その時に屋敷にある書物が鼠に食われるので、管理が大変だという事を話していた。
この時代は、紙よりも竹簡で字を書く為か、鼠に食われるという事がよくあるのであった。
その時は大変だなと思っていたが、丁度猫が居るので鼠退治に良い役目と思い送る事に決めた。
曹昂は後、誰に送ろうか考えていると、足元に虎の様に黄色い毛に黒い縞模様の狸猫が近づいてきた。
「ニャアァ」
声をあげて、体をこすりつけて来た。
甘えている様だと思い、曹昂は屈んで狸猫の背中を撫でた。
背中を撫でられて、気持ちよさそう声をあげていたので、尻尾の付け根の所まで手を伸ばした。
すると、其処を触られるのは嫌だったのか、狸猫は体をビクリと震わせた後、離れて行った。
(そう言えば、猫のよっては尻尾の付け根を触られるのを嫌がるのもいれば、喜ぶのもいると聞いた事があるな)
ちなみに、曹昂が飼う事にした野猫は尻尾の付け根を撫でても嫌がる素振りを見せなかった。
むしろ、もっと撫でろと催促してくるのであった。
「殿、貰ってもよいですか?」
「ああ、いいぞ」
劉巴がそう言った後、沢山いる狸猫から灰色の毛衣に青みがかった黒い縞模様の狸猫を持ち上げた。
「狸猫は鼠を狩ると聞いております。これで、書物が鼠に噛まれる事は無くなるでしょう」
これで、安心とばかりに顔を緩ませる劉巴。
その後も、家臣達主に多く文官達が狸猫を飼う事になった。
それでもかなりの数が残っていた。後は送ろうと考えている所に諸葛亮が来た。
誰からか、狸猫を手に入れたという話を聞いた様で、二匹ほど飼ってもらう事になった。