帰ってくると、待っていたのは
報告を聞き終えた曹昂は陳留に帰る前に、献帝に挨拶をする事にした。
謁見を申し出ると、すんなりと通りそのまま会う事が出来た。
「陛下。臣曹昂、拝謁いたします」
「義兄上。此処は朝廷ではない。お顔を上げられよ」
用意された部屋で会うと、曹昂が拝礼すると、献帝は手で顔を上げる様に促した。
挨拶を交わした後、陳留に帰る前に伏皇后の様子について訊ねた。
「・・・・・・華佗も頑張っている様だが、未だに治る見込みはない」
献帝は悲しそうに呟いた。
その反応から、もう回復する見込みがないと聞いていると察する事が出来た。
曹昂は内心でそのまま治らないでいてくれと思いつつ、表面上は心配そうな顔をしていた。
その後、曹昂は一礼しその場を後にした。
献帝への挨拶を終えた曹昂は許昌の外に布陣している軍と合流し、そのまま帰路へと着いた。
十数日後。
許昌を後にした曹昂率いる軍勢は北上を続けると、陳留が見えてきた。
城壁にいる兵達が歓声をあげていた。
城内に入ると、沿道には多くの市民が詰めかけていた。
勝利した報は聞いている様で、歓声をあげて出迎えてくれた。
その歓声を聞きながら、内城に入っていく。
内城に入ると、留守居役として残していた刑螂が出迎えた。
「殿、ご無事の帰還を喜ばしい限りです」
「お主も、わたしがいない間、留守を守ってくれた。礼を言うぞ」
「ありがたきお言葉にございます」
刑螂が頭を下げると、居ない間に何かあったか訊ねたが、特に何もないというので、曹昂は軍は部下に任せて、妻の下に向かった。
曹昂は馬に跨り、護衛と共に道を歩いていると、先ほどまで沿道に詰め掛けていた人達が勝利した事を喜びながら歩いてるのが見えた。
皆、勝利した事に喜んでいるのが、顔を見ればすぐに分かった。
それに喜びつつ、屋敷の前に辿り着くと玄関を潜ると、使用人達が何かに慌てているのが分かった。
何事かと思い、声を掛けようとしたのだが、先に使用人が気づき近づいてきた。
「旦那様。お帰りなさいませっ。丁度、人を遣わそうと思っていたところでした」
「どうかしたのか?」
「はい。丁度、今貂蝉様が産気づきました!」
「・・・・・・・なにっ⁉」
使用人の言葉を聞いて、言葉の意味を理解した後、曹昂は声をあげて驚いていた。
(そういえば、もうそろそろとか聞いていたな。江夏郡の事でバタバタしていて、すっかり忘れていた)
申し訳ない事をしたと反省しつつ、曹昂は用意されている部屋に通された。
産室は、男子禁制の為、入る事が出来ないからだ。
曹昂は通された部屋でソワソワしていた。
産室に近い為か、声が聞こえてきた。
「ほら、下っ腹に力を入れて、ひねり出すように力をいれろっ、んんんって、んんんっ」
董白の声が聞こえてくるので、どうやら産室にいるようだ。
そのような声を聴いていると、難産なのかと思ってしまった。
初産だからなのか、それとも難産なのか気になり、曹昂は室内を歩いていた。
暫くの間、董白の声が聞こえてきたのだが、突然ピタリと声が聞こえなくなった。
何事だと思いながら、唾を飲み込んだ。
少しすると、赤ん坊の声が聞こえてきた。
その声を聴いて、曹昂はその場に座り込んだ。
やがて、侍女が部屋に入ると、元気な女の子が生まれたと教えてくれた。
曹昂は声をあげて喜んだ。