閑話 IFストーリー もしも劉備に送った使者が諸葛亮ではなく龐統であったら
劉巴が夏侯淑姫の返還を求めるべきという意見を聞いた曹昂は一理あると思い、使者を立てる事にした。
(とは言え、誰を立てるか。・・・・・・此処は荊州出身の龐統にするか)
そう考えた曹昂は龐統を呼んだ。
程なく現れた龐統に、劉備の下に使者として赴いて欲しいと頼んだ。
「ご命令とあれば。後伊籍を連れて行っても良いでしょうか?」
「別に構わない」
襄陽攻略した際に説得に応じた伊籍は劉備と親しくしていたと聞いていたので、役に立つと思い曹昂は許可した。
「では、準備がありますので。失礼」
龐統は一礼し、その場を離れて行くと、自分の屋敷へと帰って行った。
翌日。龐統は伊籍と共に劉備がいる安陸県へと向かった。
十数日後。
荊州江夏郡安陸県。
劉備が拠点としている県に、ある人物が訪れていた。
自分を朝廷の使者と言い、劉備にお会いしたいと述べていた。
話を聞いた劉備はすぐに家臣を集めて、大広間にてその使者と共に会う事にした。
病で療養中の麋竺を除いた家臣達全員揃い、劉備は上座に座りながら、使者が来るのを待った。
そして、兵が「使者を連れて参りました」という言葉を聞いて、劉備は鷹揚に構えながら、使者に入る事を許可した。
兵と共に二人の男性が入って来た。
一人は無精髭を生やしておりもっさりとし、ごつい顔をしており鼻はひしげていたが、目が鋭く、鳳凰の目の様であったが、劉備達からすれば見慣れない男であった。
劉備に至っては、何だこの冴えない容姿の男は?と思っていた。
その男を見て反応したのは、単福と馬順の二人であった。
劉備達はその男よりも、もう一人の男の方に意識が向いていた。
もう一人の男は伊籍であったからだ。
「殿、お連れ致しました」
「・・・ああ、ご苦労。下がって良いぞ」
「はっ」
兵を労い下がらせると、劉備は気持ちを落ち着かせる為、息を吐いた。
「伊籍殿。何故、貴殿が此処に?」
「・・・・・・色々な事情が重なりまして、今は曹陳留侯の下におります」
「何とっ⁉」
伊籍の答えを聞いて、家臣達がざわついていた。
劉備が手を掲げると、直ぐに静まった。
「そうか。ところで、使者というのはお主なのか?」
「いえ、わたしは付き添いです。使者はこちらの方です」
伊籍が手で示すと、龐統が一礼する。
「この度、使者として参った龐統。字を士元と申します。皇叔におかれましては、お会いする事が出来て、誠に喜ばしい事にございます」
「龐統と申すのか。単福、知っておるか?」
「は、はい。わたしの友人で、共に司馬徽の下で学んだ友人です。司馬徽先生から、その優れた才を見て鳳雛と称しておりました」
「その通り。ちなみに、この場には居ないが、もう一人の友人である諸葛亮も司馬徽先生が才能を絶賛しておりました。お主も先生から、優れた才を持っていると言っていたぞ。徐福」
龐統がそう言い単福を見たが、劉備を含めた皆は首を傾げていた。
「徐福? 誰の事だ?」
「徐福ですか。何処かで聞いたような気がしますな」
張飛は首を動かしていた、誰なのか捜し、馬順は首を捻っていた。
その声を聞いて龐統は馬順を見つけた。
「おお、お前は、馬氏の五兄弟の長男ではないか。久しぶりだな。息災か?」
「お久しぶりです。士元殿、またお会いできると思いもせんでした」
「それはわたしも同感だ。ああ、そうだ。お前の弟の馬統がわたしの主に仕えているぞ」
「えっ⁉ 襄陽を攻略されたと聞きましたが、弟が何故、仕える事になったのです?」
馬順の疑問に、龐統は伊籍を見た。
「襄陽を攻略した際、我が主が伊籍殿を説得して家臣に加えたのだ。その際に、お主の弟達を紹介して、馬統が仕える事になったのだ」
「何と⁈」
話を聞いた馬順は目を剥いていた。
「殿、今は士元の話を聞きましょう」
「うむ。そうだな。それで、使者殿。何用で参ったのだ?」
「はい。この度、わたしがこの地に参ったのは」
龐統の口から、張飛の妻である夏侯淑姫の返還を求めている事と、朝廷に降伏するのであれば、江夏郡の太守にも任ずる事を述べた。
話を聞いた劉備は、キッパリと拒否した。
「然様ですか。では、我らはこれにて」
龐統が話す事は終えたので、一礼しその場を離れる事にした。
離れる際に、単福に何かを伝えたいのか、ジッと見て来た。
そして、その場を離れて行った。
部屋を後にした龐統は帰還の準備を伊籍に任せて、暫し廊下に留まった。
少しすると、単福がやってきた。
「おお、来たか」
「士元。何かわたしに話があるのか?」
単福が訊ねると、龐統は懐に手を入れると、其処から一枚の紙を取り出した。
「これは?」
「お主の母から預かった手紙だ」
「っ⁉」
単福は自分の母からの手紙と聞いて、目を剥いていた。
「安心しろ。偽手紙ではなく正真正銘御母堂からの手紙だ」
「何故、母からの文をお主が持っている?」
「まぁ、話せば長くなるから、掻い摘んで話すと、お前の母の面倒を見ているのだ」
「なっ、そ、そうか。すまんな」
「構わん。友人であろう」
龐統は手を振った後、文を単福に渡した。
単福は渡された文を受け取るなり、中を改めた。
其処に書かれているのは、まぎれもなく母の字であった。
内容は単福の身体を気遣っている事と、今は龐統の世話になっている事が書かれていた。
『今、其方は劉皇叔に仕えてると聞きました。如何なる事情で仕える事になったのかも知れませんが、母の事を思うのであれば、けして忠義に叛くことはしない様に。それが、孝行に繋がると思いなさい。
身体を大事に』
と文の最後の方に書かれていた。
「・・・・・・・お、おおおおおっっっ、ははうえっ」
久しく読む事がなかった母の手紙を読み咽び泣く単福。
「お前の母はわたしが責任をもって面倒を見る。だから、安心しろ」
「おおおおっ、す、すまない・・・」
「気にするな。わたし達は友であろう。ではな」
龐統は咽び泣く単福に一礼し離れて、伊籍の下に向かった。
感想欄に、使者が諸葛亮ではない場合の話を見たいとあったので、作ってみました。
次話の使者が諸葛亮ではなく呂布の場合の話で、今年最後の投稿になります。




