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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第三章

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何とか救援す

「ぐぶっ⁉」

 華雄の斧槍を抜かせない様に頑張っていた祖茂であったが、何時までも抵抗するのを見て兵達が槍を突き立てた。

 幾つもの槍が突き立てられ吐血する祖茂。

 それでようやく力尽きたのか祖茂の手から力が抜けて、だらりと下がる。

 槍を引き抜かれるとそのまま地面に倒れた。

「ふん。手こずらせてくれたわ」

 華雄は斧槍を振るい、刃に付いている血を落とした。

「将軍。敵軍は壊滅いたしました。多数の捕虜と戦利品が山程あります」

「そうか。だが、相国はそれだけでは満足しないだろう。李粛に孫堅を追うように命じろっ」

「はっ」

「残りの者は付近の生き残りを狩るぞっ」

 華雄の命に従い、李粛が一部隊率いて孫堅の後を追い、残りは未だに燃えている陣地で生き残りが居ないかの確認に回った。


 祖茂のお蔭で虎口から抜け出した孫堅達。

 孫策達と合流して、そこで祖茂の生還は絶望的だと教えられた。

 悲しみに浸りたいところであったが「此処は戦場である以上、敵の追手が何時来るか分からない」と程普が進言するので皆、悔しそうに顔を顰めながら馬を進ませる。

 中でも孫堅は一番悔しそうな顔をしていた。

「……祖茂」

 古くから自分に仕えている部下の一人で信任が厚かった。

 もう会えないと分かると、祖茂の日頃の忠勤を思い出し胸を痛めていた。

 すると後方から大量の蹄の音が聞こえて来た。

「孫堅を追い詰めろっ」

「孫堅を生け捕った者には重い恩賞を与えるぞ!」

 そんな事を言うところを見るとどうやら敵軍の様だ。

「敵かっ」

「一、十、百騎以上はおりますな」

「我らは五十騎。相手にもなりません」

「殿。急ぎ敵の追撃から逃れましょう」

「そうだな…っ!孫策、何処に行く?」

 孫堅が馬を進ませようとしたら、息子の孫策が馬首を翻して敵軍に突撃しようとしているのを見て呼び止める。

「父上。此処は私にお任せを。父上は御逃げ下さい」

「馬鹿を言え。息子を置いて逃げる親が居るかっ」

「俺が死んでも弟の権が居るから大丈夫です」

「そういう事ではないわ。馬鹿者っ」

 孫堅は頭に血が上っている孫策の頬を叩いた。

 その痛みでようやく落ち着く孫策。

「今は逃げるのが先だ。行くぞ」

「……はいっ」

 孫策がようやく大人しくなったので、孫堅達は馬を進ませた。

 だが少し進ませると前方に黒い影の一団が見えた。

「敵かっ」

「伏兵か? 突破する。続け!」

 夜陰で良く見えないが恐らく敵だろうと思い孫堅は前方の一団に攻撃を仕掛けようとしたら。

「文台殿。お待ちあれ!」

 大声で孫堅の字を呼ぶので孫堅は知り合いだと分かり、部下達を止める。

「誰だ?」

「私にございます」

 そう言って前に出て来たのは曹操本人であった。

「おお、孟徳殿か。何故、此処に?」

「貴殿が窮地に陥っていると耳にしましたので、五千騎を連れて援軍に参ったのですが・・・・・・」

 曹操は孫堅の今の姿を見て、今がどんな状況なのか察した。

「どうやら一足遅かったようですな」

「いや、救援に来てくれるだけでも十分だ、よくぞ来てくれた」

「此処は我等にお任せを。曹昂っ」

「はい。父上」

「『帝虎』と『竜皇』を前進させろ。敵の士気を挫け」

「はい」

「夏候惇、夏侯淵」

「「はっ」」

「『帝虎』と『竜皇』の左右を守れ」

「「御意」」

「曹仁。お前には五百騎を与える。敵部隊の横っ面を叩けっ」

「おうっ、任せろっ」

 曹操の命に従い曹昂達は行動を開始した。

「鬨を上げろ。鳴り物を鳴らせ。『帝虎』『竜皇』進軍っ」

 曹昂が手で合図すると、兵達は声を上げて鉦を鳴らし『帝虎』『竜皇』四機は地面を揺らし大きな音を立てながら進んで行った。

 その動きに合わせて弓兵も歩を進める。

 孫堅達は慌てて曹操軍の進路を妨害しない様に退けて『帝虎』と『竜皇』が動くのを見る。

「このような物が存在するとは」

「しかし、本当に馬も曳いてないし人も押していないな」

「それで火を吹くのだから凄いの一言だな」

 味方と合流出来た事で安堵できた。それで自分達が見ている物を関心しながら話す孫堅達。

 孫堅達がそう驚くのも無理はない。彼らが陳留に到達した時は、この『帝虎』と『竜皇』は何処かの宗教の御神体の様に祀られている所を見ただけなので、最初は新手の宗教なのかと思っていた。

 話を聞くと『帝虎』と『竜皇』が凄い事を聞かされたが、話になっている事を見ていないので信じていなかった。

 其処にこれらが動くのを見て驚きもひとしおであった。

「・・・・・・孟徳殿。お聞きしてもよろしいか?」

「何をですかな?」

「言い辛いのであれば答えなくてもよいが。出来れば答えてくれると嬉しい」

「ははは、そう言われますと、どう答えれば良いのか分からなくなりますが。とりあえずどのような事を聞きたいのですかな?」

「あの『帝虎』と『竜皇』は貴殿の息子の曹昂が作ったのか?」

 孫堅の口から出た言葉にその場に居た者達が皆、驚きの顔を浮かべながら孫堅を見る。

 曹昂は『帝虎』と『竜皇』を指揮するのでこの場には居ない。

「何故、そう思ったのですかな?」

「黄巾の乱の時に貴殿の故郷の譙県に行った時に曹昂が籠城の際に作った塞門刀車の一種で虎車という物があったのだが、その虎車の顔の形が今の『帝虎』の顔とそっくりでな。もしやと思ってな」

 孫堅がそう言う理由が分かり、曹操は隠す事が出来ないと思い話す事にした。

「如何にも。あれらは我が息子が作った物です」

 曹操がそう言うので、孫堅以外は驚愕していた。

「黄巾の乱の折り、突然、あのような物を作りましてな。正直に言ってあのような凄い物を作った時は衝撃を受けました」

「九歳の子供があのような物を作れるのですから驚くのも無理はありませんな」

 曹操が本音を話すと、孫堅も同意した。


 曹操達が話をしている頃。


 華雄から孫堅追撃を命じられていた李粛は驚愕していた。

 孫堅と思われる者達を見つけたと部下から報告が来たので追わせた。

 このまま追い駆ければ捕まえるのも討ち取る事も出来るだろうと思った。

(これで、私も出世できるっ)

 李粛は呂布に丁原を裏切らせた後、功を立てる機会が無かった。

 其処に反董卓連合軍が結成された。戦に出て勝てば出世できると思った。

 華雄の副将に選ばれた時は大層喜んでいた。

 緒戦こそ負けたが、孫堅軍が弱っていると分かると華雄と共に夜襲に出た。

 これで功を立てる事が出来た。其処に孫堅を討ち取るか捕まえれば更なる功績となる。

 そう思うと、李粛は懸命に孫堅達を追い駆けた。

 後少しで孫堅達を捕まえる事が出来るというところで、敵の援軍と思われる者達がやって来た。

 敵の援軍を先に叩くべきだと思い李粛は敵軍への攻撃を命じたが、目に映っている物を見て言葉を失った。

 今、自分の目の前には『帝虎』と『竜皇』が居たからだ。

 しかも、四機も居た。

「ば、ばば、ばかなっ。あれらは、いま、らくようの、くらにあるはず……っ⁉」

 李粛は驚きのあまり声を震わせる。

 洛陽にある物が此処にある事と四機いる事に理解が出来なかった。

「ま、まさか、まさか、てきは、あれらをりょうさんしたと、いうのかあああああっ⁉」

 そんな信じられない事を思いつく李粛。

 そうでなければ、今目の前にある事が説明できなかった。

「あ、あんなものが、りょうさんされれば、わがぐんなど、またたくまにほろぼされるではないか……」

 これはまずいと思い李粛は華雄の下に戻ってこの事を報告しないと駄目だと思い撤退と言おうとしたが。

 ピュン。

 風切る音と共に放たれた矢が李粛の首に当たる。

「ぐっ」

 短い悲鳴を上げて李粛は馬から落ちた。

「ああ、李粛様」

「李粛様が討たれたぞっ」

 部隊を率いて来た李粛が討たれた事で部隊は混乱した。

 其処に『帝虎』と『竜皇』を有する曹操軍が攻撃する。

 風切る音と共に放たれる雨の様な矢。

 その矢に当たる事も構わず進む『帝虎』と『竜皇』は火を吹いて敵兵を焼いて行く。

 矢と火炎攻撃によりただでさえ混乱している敵軍が更に混乱した。

「敵は混乱しているぞ。お前等、突撃だっ」

 其処に曹仁率いる騎兵部隊の突撃で敵部隊は支離滅裂となった。

 敵部隊は逃亡を始めた。

「追撃は曹仁の部隊に任せて、僕達は父上の下に戻ろう」

 曹昂がそう指示すると夏候惇達も文句は無いのか指示に従った。

 そして、曹昂は自分の傍の董白を見た。

「どう? 当たった?」

「たりめえだろう。あたしの弓の腕は百発百中だぜ。何か立派な鎧を着た奴に当てたぞ。それで部隊が混乱したから、多分部隊長だろうぜ」

「流石。凄いね」

「へへ、あたしは夜でも昼でも狙いを外した事はねえよ」

「それは良いけど。良いの?」

「何が?」

「董卓軍の将兵に矢を放って」

「ああ、仕方ねえだろう。このご時世だし。それに」

 董白はちらりと曹昂を見る。

「お前を守る為には、こうでもしないとだめ、だろう?」

 顔を赤らめてチラチラ曹昂を見ながら言う董白。

 可愛いと思う曹昂。

「・・・・・・とりあえず、戻ろうか?」

「ああ」

 曹昂は董白と一緒に曹操の下に戻った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 様々な発想や展開が面白く毎日の更新を楽しみにしています。 [気になる点] >「馬鹿を言え。息子を置いて逃げる親が居るかっ」 追い詰められた孫堅と孫策とのやり取りのこの部分、この時代の一般常…
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