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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第十七章

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意外な交流

 十数日後。


 朝廷からの上奏の返事の使者が陳留に来たという報告を聞いた曹昂は、軽く身嗜みを整えた後、使者が居る部屋へと向かった。

 部屋に入ると、使者として来たのは荀彧であった。

「これは先生。尚書令である貴方が、何故こちらに?」

「天子の兄君であられる陳留侯に返事を送るのですから、それなりの地位を持った方が良いと思い、わたしが参りました」

「わざわざ申し訳ありません。それで、どの様な返事をもってきたのですか?」

 荀彧が来るとは予想していなかったので、少し泡を食った曹昂は直ぐに気を取り直して、上奏の返事を訊ねた。

「それなのですが。丞相にもこの事を報告しました所、出兵は暫く待つ様にという返事が届きました」

「何故ですか?」

 今攻めれば、江夏郡は手に入るのに兵を出すのを止める理由が分からず、曹昂は不審に思ってた。

 そんな曹昂の顔を見ると、荀彧は教えてくれた。

「どうやら、丞相は淑姫の返還を求める使者を送る事にした様です」

「そうでしたか。こちらの方でも、人を遣わして返還の使者を送ったのですけど、いりませんでしたね」

「いえいえ、劉備からすれば、陳留侯が送ったのか、丞相が送ったのか分からないでしょうし、気にする事はありません」

 荀彧は大した事では無いというのを聞いても、曹昂は事前に言っておくべきだったと悔やんだ。

(二度手間だからな。まぁ、兵を出す事は許可してくれた様だから、準備だけして何時でも出陣できる様にしよう)

 そう考えた曹昂は来てくれた感謝の宴を開くと言うと、荀彧はとても喜んでいた。

 其処に部屋の外に控えてた孫礼が入って来た。

「申し上げます。司馬懿殿が荀尚書令にお会いしたいと言い参っております」

 孫礼が述べるのを聞いて、曹昂と荀彧は顔を見合わせた。

「司馬懿と言うと、司馬京兆尹の次男でしたな」

「ええ、お会いになりますか?」

「はい。司馬京兆尹とは親しくしておりますので、ご子息の話は伺っております。どの様な者なのか会って話をしたいと思っておりましたので、丁度良いです」

 荀彧が話がしたいと言うので、曹昂は司馬懿を連れて来る様に命じた。

 孫礼が部屋を出て行くと、直ぐに司馬懿を連れて来た。

 部屋に入って来た司馬懿は曹昂達に一礼する。

「御話し中の所、突然参った無礼。平にお許しを」

「いえいえ、大した話はしていないのでお気になさらずに。貴殿が仲達殿で違いないな」

「はい。司馬防の二子である司馬懿仲達にございます。荀尚書令とは前々からお会いしたいと思っておりました」

「それは嬉しい限りですな」

「古今何処を探しても、荀尚書令の様な賢才はこの世にいません。こうして、会えて嬉しく思います」

「はは、司馬京兆尹の御子息に其処まで言われるとは、少々気恥ずかしいですな。貴殿の事は、父君から聞いております。息子達の中で一番才を持っていると」

「父がその様な事を。単なる子自慢ですので、聞き流しを」

 荀彧と司馬懿が和やかに話をする中で、曹昂は内心で、父が劉備に送った使者は誰なのか気になっていた。


 同じ頃。


 劉備の下に曹操が送った使者が来ていた。

 年齢は四十代半ばで、鋭く引き締まった顔をしていた。

 少し吊った目に、鍛えられた身体を持っていた。

「何と言われても、わたしは朝廷に降伏はせんし、淑姫を返す事はせんっ」

「皇叔・・・・・・」

 劉備が頑と言うのを聞いて、使者は困った顔をしていた。

 使者は牽招。字を子経と言い、軍謀掾の役職に就いていた。

 この牽招は昔、劉備と出会い意気投合し刎頸の交わりを交わした事があった。

「皇叔。どうかお聞き届けを、今降伏すれば、貴方の命だけでは無く一族と家臣郎党全員の命が助かるのです。どうか、降伏を」

「出来ん。如何にお主の頼みとは言え、漢王朝を己の欲望の為に操っている曹操に降る事をすれば、わたしの先祖に申し開きが出来ぬっ」

 劉備は絶対に降伏しないというのを聞き、牽招は冷静になろうと宥めた。

「しかし、皇叔。既に漢王朝に力は無く、命運は尽きたのです。此処は丞相に従い、一族を残すことだけ考えるべきです」

 牽招が漢王朝の天命は尽きたと言うの聞き、劉備は顔を赤くした

「無礼なっ。何故その様な事を言うのだ!」

「易姓革命という言葉がある。今この世が乱世なのは、天は漢王朝を見切りをつけた事で起きたのだ。故に天を(あらた)める必要があるのだ。その流れに乗らず、外れる事になれば、破滅を招くだけだ‼」

 牽招がほぼ天下は定まっているのだから、逆らう事はせずに生き残るべきだと暗に告げた。

 だが、劉備は頭を振った。

「天子自ら皇叔と認められたわたしが、漢王朝に見切りをつける事が出来る訳がないであろうっ。逆賊め、貴様の様な者と刎頸の交わりを交わすとは、我が身の不明であったわっ」

「・・・・・・どう言っても、降伏はしないと?」

「くどいっ」

「分かりました。では、これで失礼する」

 牽招はもう説得は不可能と分かり、頭を下げて一礼しその場を後にした。

本作では牽招の生年は161年とします

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― 新着の感想 ―
劉備の一族は幽州とその近隣州にいた様ですが、袁紹が支配して以降の記録が無い為、族滅に遭った可能性もありますね。
こんばんは。 牽招さん…また知らない人だなぁと思って調べてみたら、辺境の統治でかなりの功績を挙げてた人(ファンタジーものなら国から辺境伯に任命されるレベル?)なんですね。活躍の割には知名度低いみたい…
荀彧、ここで曹昂の参謀達を見たら多士済々ぶりを見て驚愕していると思う。 自身を凌ぐ存在もいるし。 劉備の説得、やるだけのことはやった。 夏侯淵に報告するのは、気が重いが。 徐福の切り崩しをやってもい…
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