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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第十七章

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土産話が出来た

数日後。


 帰還の準備を終えた司馬懿達は、後の事は漢陽郡の太守に託し冀県を後にした。

 軍と共に進みながら、司馬懿と法正は話していた。

「馬超を討つ事が出来なかっただけが、心残りよ」

「とは言え、馬超を支持する者達を討ちましたので、二度と協力する者は出てこないでしょう。羌族も此度の戦いの結果を知れば、協力する事は無いでしょう」

 司馬懿が馬超を討つ事が出来ない事を悔いていると、法正は成果としては上出来だから、悔しがる事は無いと元気づけた。

「しかし、馬超の事だ。その内勢力を立て直して、攻め込んでくるかもしれん」

「此度は反乱が起きた為、我らがこの地まで来ましたが、また馬超が反乱を起こしたのであれば、今度は夏侯淵殿が対処するでしょう」

「そうかも知れんな。だが、まだ韓遂がおる。容易に鎮圧できないのではないだろうか?」

「ですが、張猛の討伐をする様に促しているので、そろそろ動くでしょう」

「であれば良いが。まぁ、動かなければその時は勅命に叛く謀叛人として討ち取るだけだしな」

「それは良い手ですな」

 司馬懿と法正の二人はその後も、他愛の無い話をしていた。

 

 十数日後。


 司馬懿軍は長安に到達した。

 既に馬超を撃退した事は人を遣わして伝えているのだが、帰還の挨拶をする為に来たのだ。

 司馬懿達は軍を城外に置き、少数の護衛だけ連れて城内へ入り沿道にそって進んでいた。

 そうして進んでいると、道の側に乞食が座り込んでいた。

 着ている服は木綿を使っている様だが、裾もボロボロで、汚れていた。

 髭は整える事もせずに伸ばし放題で、髪もぼうぼうに伸ばし結う事もしていなかった。

 普通の乞食でも、もう少し身なりを気遣うと言うのに、この乞食は全く気にしていなかった。

 司馬懿がその乞食が気になったのは、普通の乞食と目付きが違っていたからだ。

 普通の乞食は、周囲に哀れみを乞うように媚びた目をしているのだが、この乞食の目は世の中を俯瞰している様な目であった。

 それが気になり、思わず乞食を見ていた。

「・・・・・・」

 司馬懿に見られていても、乞食は何の反応を見せなかった。

(乞食だというのに、何か恵んでほしいとも言わんとは。変わっているな)

 司馬懿は黙って乞食を見ていた。

「司馬将軍。如何しました?」

「・・・いや、何でもない」

 兵に尋ねられた司馬懿は首を振った。

 そして、乞食を見るのを止めて、夏侯淵がいる政庁へと向かった。

 夏侯淵に会いに、陳留に帰還する旨を告げた後、司馬懿は世間話がてら政庁に来る時に、変わった乞食に会った事を話した。

 その話を聞いた夏侯淵は直ぐに、その乞食が誰なのか分かった。

「そいつは石徳林と言ってな、名は誰も知らない男だ。高名な学者に師事したのだが、何時からか知らぬが、乞食みたいな生活をする様になったらしいぞ」

「成程。隠者ですか」

 道理で、乞食にしては変わっていると思う司馬懿。

 この隠者とは、最初から仕官を求めず山林や江海に隠れ住んだり、高名な人物になる事も、富貴な人になる事もしない知識人達の事だ。

「何を思って隠者になったのでしょうな」

「分からんし、知る気も無い。鍾繇殿の部下が仕官しようと声を掛けている様だが、応じていないそうだ」

「本当に分からない男ですな」

 司馬懿は変わっている事に同意した後、一礼しその場を後にした。

 帰り道に石徳林に会う事は無かったが、司馬懿は陳留に帰った時に、曹昂に石徳林の事を話そうと思っていた。

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― 新着の感想 ―
石徳林…すかんぴんの語源になった人なんて居たんですなぁ、知らなかった。
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