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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第十七章

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このままでは

 困惑している阿貴軍の兵達に、司馬懿軍の先鋒が声を大にして叫んだ。

「あんた~、武器を捨てて頂戴っ」

「とうちゃん~~」

「せがれよ。こっちにこい~!」

「息子っ、こっちにおいで!」

 先鋒の者達が叫ぶのを聞いて、兵達は動揺していた。

 声を聞いて、兵達はあれは我が子、我が妻、我が親ではと思い始めたからだ。

 このままでは、自分の家族を殺す事になると思えば、動揺するのも無理ないと言えた。

「・・・・・・(かかあ)っ」

 兵の一人が、手に持っている得物を捨てて、先鋒に駆け出した。

 そして、自分の妻を探して見つけると、お互いに涙を流しながら抱き合い無事を喜んでいた。

 その光景を見た他の兵達も、得物を捨てて自分の家族が居るかどうかを探した。

 続々と兵が逃げ出すのを見た阿貴は怒声をあげた。

「何をしている! 敵の先鋒と逃げた者達を殺せ!」

「で、ですが。あそこには我らの家族が」

「良く似せた偽物に決まっているだろうっ。これは、敵の罠だ! 早く攻撃せんか‼」

 兵が窘めても阿貴は怒りを抑えず、攻撃する様に命じた。

 その命を聞いた部将達は兵に攻撃を命じたが、兵達は頭を下げて懇願した。

「ど、どうかどうか、お許しを」

「あそこには、オラたちの家族がおりますので」

「ならん! 命に叛くと言うのであれば、お前達から斬る‼」

 部将は手に持つ剣を見せながら告げた。

 それを聞いた兵達は、もう我慢できないとばかりに手に持つ得物を突き付けた。

「き、きさまらっ」

「もう、おまえらの命はきけねえっ」

「オラたちは部族の為だけじゃなくて、家族の為に戦ってるんだっ。その家族を殺す事はできる訳がねえ」

「そんなことを命じるんだったら、あんたを殺すだけだっ」

「ま、まっ」

 部将は言葉を続けようとしたが、兵達の得物に貫かれ断末魔をあげながら事切れた。

 部将が殺されるのを見て、兵達は頷き、声をあげた。

「もう、こんな奴らに従えるかっ⁉」

「オラたちは朝廷に寝返るぞ‼」

 兵達が声をあげると、他の兵達も同調した。

 兵達が反乱を起こすと、阿貴軍の兵の殆どが反乱に従った。

 兵の大多数が反乱を起こした事で、阿貴はこれ以上は戦えぬと思い、馬超の下に逃げようとしたが、反乱を起こした兵達に囲まれてしまい、捕縛されるのであった。


 先鋒の声掛けで阿貴軍が混乱し、しまいには反乱が起きるのを見て、司馬懿は笑っていた。

「上手くいったな。これで、あの軍は問題が無くなったな」

 反乱が起きている阿貴軍は、法正に任せる事にした司馬懿は龐徳を呼んだ。

 程なく、兵に連れられ龐徳が来た。

「お呼びで」

「龐将軍。騎兵五千を率いて、城を攻撃している馬超軍の背後を攻めて貰いたい」

「承った」

 龐徳が一礼し、直ぐに行動した。

「我らも続くぞ。太鼓を鳴らせ‼」

「はっ」

 司馬懿の命により、兵が太鼓を叩いた。

 戦場に重低音が響き渡り、司馬懿軍は進軍する。


 同じ頃、冀県を攻撃している馬超は城が落ちない事に焦っていた。

「何をしているっ。早く城を攻略せぬかっ」

 馬超がどれだけ声を荒げながら命じても、兵達の動きが悪く城の攻略は進まなかった。

 其処に阿貴軍に属していた兵が駆け込んで来た。

「ご注進‼ 敵軍の先鋒と戦った阿貴酋長が捕縛されました‼」

「なにっ、何があった⁈」

 報告した兵に詳しく訊ねる馬超。

 兵はどの様な事があったのか、馬超に教えた。

「ぬううっ、敵が成紀県を落したのは、それを行う為であったかっ」

 馬超は歯噛みしている所に、別の兵が駆け込んで来た。

「将軍。敵軍の騎兵部隊が突撃してきました。数は五千」

「誰が率いている⁉」

「龐の字の旗を掲げているので、恐らく龐徳と思われますっ」

「龐徳だと⁉ 何故あやつが⁉」

 父馬騰の部下であった男に攻められていると聞いて、馬超は何故そうなったのか分からなかった。

「馬超殿。最早、この戦は負けだ。此処は、撤退し再起を図るべきだ」

「・・・・・・そうだな。此処は逃げるしかないな」

「うむ。殿(しんがり)はわたしが務める。無事に逃げるのだ」

 楊千万が殿(しんがり)を務めると聞いた馬超は、任せたと一言だけ言って、護衛の兵だけ連れて戦場から離脱していった。

 馬超が離れて行くのを見送ると、楊千万は兵に命じた。

「残っている兵を全て集めろ。負けるにしても、敵に一矢報いてやろうぞっ」

「はっ」

 楊千万の命により兵は集まり、攻撃してくる龐徳軍と激しい干戈を交えた。

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― 新着の感想 ―
また、しぶとく馬超は逃げ回るかと。 南には米賊→曹昂の手紙一つで首になるが、しぶとく逃げ回って荊州や益州に逃れそう
二度とこの地でヴァモーキが再起できることはなくなったねw地元も失い、後は己の首だけ
荊州を落とした呉軍が関羽軍に使ったのと同じ計ですね。 この後、この地の統治でどういう手を打っていくのか?
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