表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
845/946

言う事を聞くと

 顕親県で、縄を打たれた閻温はそのまま馬超の下に連れて行かれた。

 捕縛される際に暴れた所為か、服はボロボロで顔中は殴られた跡があり、唇も切れていた。

 それでも、馬超を前にしても毅然としていた。

「お前が不審者か。何者だ?」

 兵達の報告では、人目につかない様に駆けているので、声を掛けると逃げ出したので捕まえたと聞いていた。

 だから、馬超はまだ目の前にいる者が、閻温だと分かっていなかった。

「・・・・・・」

 馬超が訊ねても、閻温は答えなかった。

「将軍が訊ねているだろうが。答えよ!」

 連れて来た兵が槍の棒の部分で殴打した。

 強く打ち付けても、閻温は声をあげなかった。

 殴打されても声をあげない閻温を見て、馬超は目の前の者が只者ではないと思った。

 其処に側にいた酋長の阿貴が近づいて話しかけた。

「わたしの記憶が正しければ、あの者は上邽県令の閻温だ」

「なにっ? 何故その者が此処に居るのだ?」

「人伝に聞いた話だが、馬超殿が蜂起した時、閻温は馬超殿に与しないつもりであったのだが、上邽県にいる任養が馬超殿に従う事に決めた為、追い出したそうだ。恐らく、その後冀県に流れ着いたのだろう」

「成程な。その者が外に出たという事は、援軍を乞いに来たと思えばいいのだな?」

「断言は出来ぬが。恐らく」

 阿貴の話を聞いて、馬超は頷き、殴打する兵を止めた。

「閻温。まさか、冀県にいると思っていたが、こうして会えるとはなっ」

「っ⁉ 何故、わたしを知っている⁉」

 馬超の問いを、閻温は思わず答えてしまった。

 カマかけであったのだが、返事を聞いて馬超は笑みを浮かべた。

「冀県にいる筈のお前が外に居るという事は、援軍を乞いに行ったのだろう。どうだ? 得る事が出来たのか?」

 馬超は隠しても、拷問してでも吐かせると思いながら訊ねた。

 問いかけられた閻温は少しの間無言であったが、突然笑みを浮かべた。

「ふ、ふふふ、援軍が来るのが怖いか? まぁ、援軍を乞う為に出たのだが、途中で見つかりこの様だがな」

 笑いながら告げる閻温。

 それを聞いて、馬超達は援軍は来ないと思った。

(だが、何時援軍が来るかどうか分からん。一刻も早く、冀県を落さねば。しかし、どうやって・・・・・・そうだっ)

 馬超はどう対処するべきか考えていると、閻温を見て思い付いた。

「・・・ふっ、閻温よ。役目を果たす事が出来なかったのだ。このまま死んでは、犬死だな」

「何を」

 閻温が話そうとしたが、馬超は遮るように述べた。

「だが、わたしもこれ以上血が流れる事は好まん。どうだ、お主が城に行き援軍が来ないから、降伏しろと言うのだ。そうすれば、お主を重く用いてやるぞ」

「・・・・・・二言はないか?」

「無論だ。だが、城に援軍が来ない事を告げるのだぞ」

「・・・・・・分かった」

 閻温が頷くのを見て、馬超は笑みを浮かべた。


 翌日。

 その日も冀県は包囲されていた。

 すると、突然包囲の一部が開いた。

 其処から閻温が出て来た。

「あれは、閻温殿⁉」

「どうやら、敵に捕らわれた様ですね」

 驚く趙昂達をよそに、閻温は近付く。

 そして、息を深く吸った。

「城内にいる者達よ。聞いてくれ!」

 声を大にする閻温。

 城内に居る者達は、次の言葉を聞こうと静かになった。

「援軍を乞う為に城を出たが、敵の捕虜となった!」

 大声で、敵に捕まった事を告げられ趙昂達は援軍は来ないのか?という思いが頭を掠めた。

「援軍は」

 閻温は一度言葉を区切り、息を吸った。

 そして、その場にいる敵味方問わず、閻温が次は何を言うのかと、傾聴していた。

「援軍は・・・援軍は来る! 援軍を率いていた方が来ると申していた⁉ 三日の内に救援が来るぞ! それまで耐えるのだ!」

 大声でハッキリとそう告げた。

 少しの間、静まり返ったが、直ぐに冀県城内から歓声が聞こえて来た。

 逆に馬超軍の士気が下がって行った。

「わ、わたしを騙したな! 許さん! 見せしめだ。殺せ!」

 謀られた馬超は怒りのまま、閻温を殺すように命じた。

 兵達は閻温に近付き、手に持つ槍で突き刺した。

「ぶふっ⁉」

 幾つもの槍で貫かれ、口から血を吐きながら閻温は倒れ、そのまま事切れた。

 馬超は殺しても怒りが収まらなかった様で、死んだ閻温の首を斬りさらし首にした。

 だが、それにより城内に居る兵達の士気が下がる事は無かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おぉ~三河武士のようだ
死なない方が良かったような
このパターンは他小説でも使われまくりだけど、歓待して逃した方が城内の不協和音になるのに、殺して城内の士気を高めるオチが多いよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ