好機とばかりに
許昌に向かっていた曹昂軍であったが、進軍途中で許昌からの使者が参った。
使者は直ぐに、曹昂の下に案内されると、来た理由を述べた。
「張猛が反乱を起こした為、南征は中止だと?」
「はっ。曹兗州牧様は陳留に戻り次の命を待てとの事です」
「そうか。では、仕方が無いな」
てっきり、劉表を討ち取るだろうと思っていた曹昂は残念そうな顔をしていた。
(悪運が強いのかな? まぁ、後数年で病死はするだろうから。問題ないか)
使者を帰らせると、家臣を全員呼び南征が延期になった事を告げ、陳留に帰還すると告げた。
武闘派の者達は不満そうであったが、最終的には仕方が無いと割り切った。
そして、曹昂軍は来た道を引き返していった。
数日後。
曹昂軍が陳留に帰還した。
軍を解散させ、家臣達を自由にさせた。
曹昂は自室に入り、席に着くと、卓に置かれている報告書を手に取った。
一読すると、目を剥いた。
「はぁっ⁉ 冀州河間郡で反乱だと⁈」
報告書を読んで、驚きつつ続きを読み進める曹昂。
「・・・・・・反乱を起こした田銀と蘇伯の二人は、元袁紹に仕えていた豪族であったか。袁紹亡き後は袁譚、袁尚の間を趨勢に応じて、両名に附いて戦ったが、袁譚が敗れ、袁尚と袁煕が討たれた後、丞相に降伏した。だが、降伏した時期があまりに遅いので、領地の半分を削り取られた事で憤激し、反乱を起こした模様。なお、この時期に反乱を起こした事については、今だ調査中ではあるが、田銀と蘇伯の両名は張猛とは何の繋がりもないので、張猛の反乱と重なったのは偶然と思われるか・・・」
報告書を読み終えると、曹昂は息を吐いた。
「これは張猛の反乱の前に、田銀と蘇伯の二人を討ち取るのが先だな。後回しにすると、冀州と幽州で父上の支配に反対する者達が続くかもしれないからな」
張猛の方は、長安にいる夏侯淵に任せるしかないなと思う曹昂は、援軍でも送ろうかと考えた。
誰を送ろうか考えながら、側にいる哮天の背を撫でるのであった。
曹昂が陳留で考え事をしている同時期。
雍州漢陽郡成紀県。
その県には異民族の氐族が暮らしていた。
「ほぅ、武威郡で反乱が起きたのか」
部族が暮らしている所に、一人だけ部族の者ではない男がいた。
「ああ、今も勢力を拡大しているとの事だ」
「そうか。ならば、今が立つときか」
男はそういって立ち上がった。
「急ぎ、阿貴殿と楊千万殿にお会いしたいと伝えてくれ」
「分かった」
氐族の者が、その場を離れると、男は空を見上げた。
「これで曹操に復讐する事が出来る。父上、一族の皆。見ていてくれ。必ずや、仇を取ってくれる」
男は拳を握り突き上げた。
「この馬孟起が必ずや、天下に名を轟かせてくれる!!」
男こと馬超は、決意を込めて叫んだ。
関羽の追撃から辛くも逃げ出した馬超は河に流されて、そのまま成紀県に辿り着いた。
最初は身分を隠していたが、幼い頃から父馬騰の下で活躍しいていた為、異民族にも顔が知られていた。
氐族の酋長達は、馬超を保護する事にした。
羌族と交流がある事に加えて、優れた武勇を持っているので、何かに使えると思い保護する事にしたのだ。
その後、馬超は氐族の酋長である阿貴殿と楊千万と会い、手を貸して欲しいと頼んだ。
阿貴達二人は了承した。
数日ほどすると、馬超は二万の兵と共に蜂起した。




