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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第十七章

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月日が経ち

 建安十年(西暦二〇五年)一月。


 冀州魏郡鄴県。

 正月を迎え、屋敷にいる曹操は丁薔に酌をしてもらいながら、和やかに過ごしていた。

「こうして、お前に酌をして貰うのは久しぶりだな」

「そうですね」

 曹操は感慨深く語るが、丁薔は同意するだけで特に感慨深そうではなかった。

 まるで、自分と接する時間よりも、愛妾達と接する時間を非難している様に聞こえた。

 其処まで考えるのは、流石に邪推しすぎかと思い直し、曹操は盃を傾ける。

「儂もそろそろ良い歳だな。そろそろ、引退する事も考えなばならない歳だな」

 今年で五十歳になる曹操は、良い機会と思い自分の事を儂と呼ぶ事にした。

「まぁ、御冗談を」

 曹操の一言を聞いて、丁薔は面白い事言うとばかりに笑みを浮かべた。

「冗談ではない。儂も良い歳だからな。後の事は全て子脩に任せて、儂は故郷に帰り隠居生活をしても良いと思うぞ」

「そういう事は子供を作る気力がなくなってから申して下さい。去年で側室や妾達の間に、何人子が出来ました?」

「・・・・・・三、いや四人だ」

「五人です。それと、秦夫人が今年辺り子が産まれるそうです」

「ほぅ、そうか。それは良い事だ」

 曹操は喜ぶが丁薔は目を細めた。

「子を作る元気があるのに隠居など、まだまだ早いですよ」

「そうか?」

「ええ、子を作る元気が無くなった時に隠居すればよいですよ。その時は、わたしも一緒に故郷に帰りますね」

「お前も帰るのか。そうか・・・・・・」

 丁薔と一緒に居れば、女子を口説く事は出来ぬなと思う曹操。

 そんな、曹操の腹など読んでいるとばかりに、丁薔はジッと見て来た。

「何か、問題でも?」

「い、いや、無い。無いぞ! お前が一緒に居れば、何処であろうと楽しいであろうな。ははは」

 曹操が笑って誤魔化した。

 丁薔は溜め息を吐いた後、酌を続けた。


 同じ頃。


 兗州陳留郡陳留県。

 

 城内にある一室で曹昂は報告書を読んでいた。

「ふむ。軍用鳩の訓練も順調か」

 報告書には鳩の生還してくる数が増えて来たと書かれていた。

 それと同時に、軍用犬についての報告も書かれていた。

 其処に書かれているのは、犬の絵姿であった。

 犬の首には刃付きの首輪が付けられていた。

「襲われても、この刃付きの首輪で抵抗させるか。役に立つのか?」

 対して、役に立たないのではと思えた。

「・・・・・・いっその事、目立たせるか。もし、肉を食べる為に殺せば呪われるとか、犬が黄泉に行くのを妨害するという噂を流せば、襲われる可能性は無くなるかも知れないな」

 この時代は信心深い者達が多いので、いけるのではと思う曹昂。

「お前はどう思う?」

 曹昂は部屋の隅に伏せている者に声を掛けた。

 その者は 幅の広いがっしりとした頭部に骨太の身体を持ってた。

 深みがある黒毛で、毛量も多く長かった。首周りの毛がまるで獅子の様な鬣の様に生やしていた。

 よく見ると、曹昂が声を掛けたのは犬であった。

 一頭ぐらい飼っても良いかと思い、曹昂はこの西藏獒犬(チベタン・マスティフの異名)を法正から貰い受けた。

 名前はまだ思いつかないので、付けていなかった。

 だが、この西藏獒犬は頭が良いようで、曹昂が声を掛けると反応しくれた。

 その上、忠誠心が厚いのか、曹昂が何処かに行こうとすると、その後にピタリと付いて来るのであった。

「・・・・・・」

「ふむ。わたしの好きにしても良いという事か?」

 曹昂が訊ねると、西藏獒犬は頷くのであった。

「そうか。では、劉巴達と相談してから決めるか」

 曹昂は報告書を卓の上に置くと、西藏獒犬を手招きした。

 西藏獒犬は立ち上がると近付いた。

「良し良し。良い子だ」

 曹昂が西藏獒犬の頭を撫でると、嬉しそうに尻尾を振るのであった。

 

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― 新着の感想 ―
>犬の名前が思いつかないので、公募します。 玉子!
[一言] 中華すこしふしぎで犬というと某十二国なお話にも出てくる饕餮かなぁ
[一言]  そもそも曹操=サン、隠居していられる状況なのでしょうか? そして犬の名前ですか。  ジャーマンシェパードならアルフ(あさま山荘事件などで活躍。)というのもありなのでしょうが・・・  取り敢…
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