対応を考えていたが
蒼梧郡で反乱が起きたという報告を聞くなり、劉表は直ぐに軍議を開いた。
軍議には、蒼梧郡の太守である呉巨と頼恭の姿があった。
家臣が全員集まったのを見て、劉表は上座に座りながら、周りを見る。
「既に皆は聞いていると思うが、蒼梧郡にて反乱が起きた」
その言葉を聞いて、家臣達はざわつきだす。
劉表が手を掲げると、ざわつきがピタリと止まる。
「報告した者の話では、蒼梧郡の殆どの県が反乱に同調し反乱に協力しているそうだ。呉巨よ」
「は、はっ」
「お主が蒼梧郡に居た時は、反乱が起きる気配は無かったのか?」
「・・・全くありませんでした。わたしが蒼梧郡を出る時は、信頼している部下の区景に任せてきました」
呉巨は青い顔をしながら言うが、それを聞いた頼恭は鼻で笑っていた。
「はっ、あの蒼梧郡出身で武勇は優れていたが卑しい男か。わたしは常々言っていただろう。あの男を重用するのは止めた方が良いと」
「ぬうっ、この反乱は区景が起こしたと言いたいので?」
「まだ分からないので、そうとは言い切れんが。あやつは嘗ての主である張津を殺し、その首を持ってお主に降伏したのだぞ。誰かに唆されで反乱を起こしたのかも知れんぞ」
頼恭の話を聞いて、ざわつきだした。
「張津だと。前の交州の刺史では無かったか?」
「州牧では無かったか? まぁ、どちらでも良いか」
「部下に斬られたと聞いたが、それが区景だったとはな」
話を聞いて、家臣達は思い思いに話していた。
呉巨はその話を聞いて、奥歯を噛んでいた。
其処に蒼梧郡から兵が参り、新しい報告が齎された。
反乱を起こしたのは区景で蒼梧郡は完全に掌握された事と、区景は勝手に蒼梧郡太守と称したと分かった。
その報告を聞くなり呉巨は青い顔から、土気色の顔になっていた。
日頃から鬱憤が溜まっていたのか頼恭はここぞとばかりに、日頃の行いを責めるのであった。
頼恭が責めるのが治まると、劉表は兵を出すべきかそれとも様子見をするか話し合った。
劉表としては、兵を出して蒼梧郡を奪還したかったが、先の戦で失った武具と兵の補充がすんでいないので、家臣達は出兵は無理と言うのであった。
同じ頃。
交州交阯郡龍編県の城内の一室。
「ははは、これは上手くいったな」
士燮は手に持つ文を読むなり笑っていた。
文には区景が蒼梧郡で反乱を起こし掌握した事、そして蒼梧郡太守と称した事が書かれていた。
「間者からの報告で呉巨が苛政をしている為、蒼梧郡の民達は不満と怒りを抱いていると聞いていたが、此処まで早く掌握するとはな」
士燮は予想以上に早く区景が蒼梧郡が支配したが、これも想定していたのか驚く様子も無かった。
「さて、あやつはこの後どうするのであろうな。独立するか? それとも、文に書いたとおりにするであろうか?」
笑みを浮かべる士燮。
まるで、この後、何が起こるのか分かっているかのようであった。
その数日後。
蒼梧郡太守と称している区景は、士燮に降伏を申し出てきた。
家臣が驚く中、士燮はその降伏を受け入れた後、改めて区景を蒼梧郡太守に任命した。




