どうするかを考えていると
劉表に呼び出された呉巨と頼恭の二人が、その下に赴いた。
赴いた二人は、会談の場で舌端火を吐く様に語りだした。
郡の治政、これからの方針、将兵の対応等々について述べたのだが、二人の方針があまりに違う為、真向にぶつかっていた。
呉巨は勇猛な武人の為か、苛政で税を絞るだけ取り、その税で軍備を増強と考えていた。
対して、頼恭は仁愛があり慎み深い性格の為、仁政で郡に暮らす者達の支持を得てから勢力を拡大すべきと考えていた。
劉表から交州刺史に任命された頼恭は名目上で言えば、呉巨に命令が出来る立場であるのだが、実質的に蒼梧郡を掌握しているのは呉巨であった。
話を聞いて、性格と考え方と立場の違いにより、二人は反目しているという事が分かった。
二人の話を聞き下がらせた後、劉表は蒯越と蔡瑁にどうするか相談した。
「此処まで考え方が違うのでは、どちらかを処罰するしかありませんな」
「ですな」
「処罰と言うが、どうするのだ?」
まさか、処刑をする訳ではないだろうなと思いつつ、劉表は訊ねた。
「二人の内どちらかの官職を取り上げて、別の地に赴任させるのです。そうすれば、残りの者が蒼梧郡を治めるでしょう」
「それが良いですな。さすれば、二人は争う事は無くなるでしょう」
官職を取り上げるだけと聞いて、安堵する劉表であったが、直ぐに悩みだした。
呉巨は勇猛な武人の為、異民族や蒼梧郡を除いた交州を治めている士燮がいつ兵を挙げて攻め込んでくるか分からないので、その武勇が頼みであった。
頼恭の方は名目上は交州刺史だが、州治を行う為には交阯郡に赴く必要があるのだが、士燮が兵を郡境に配備している為に赴く事が出来ず、何の役にも立っていなかった。
だが、頼恭の家は荊州で有名な名族であった。
荊州でも強い影響力を持っており、劉表もおいそれと従わせる事が出来なかった。
もし、頼恭の官職を取り上げて、別の地に赴任させる事をすれば、頼恭と実家が激怒する事も考えられた。
そんな事をすれば、劉表は荊州の影響力を失う事になりかねなかった。
「・・・・・・二人の仲違いを仲裁するというのはどうだ?」
二人を処罰できないと思った劉表はそう提案するが、蒯越達は顔を曇らせた。
「此処まで仲がこじれては難しいと思います」
「考え方が違うのです。殿、此処はどちらかを処罰せねば、この問題は解決しません」
バッサリと言われた劉表は頭を抱えた。
それから数日が経ったが、劉表はどうするべきか頭を悩ませていた。
どうしたものかと考えていると、部屋の外に控えている護衛が部屋に入り一礼した。
「申し上げます。蒼梧郡から使者が来ております」
「なに? 通せ」
蒼梧郡から使者が来たと聞いた劉表は嫌な予感を感じつつ、その使者を通すように命じた。
護衛が部屋を出て行くと、使者と共に戻って来た。
「蒼梧郡から来たと聞いたが、何かあったのか?」
「はっ。呉太守と頼刺史が蒼梧郡を離れた数日後に、蒼梧郡の各地で反乱が勃発しました!」
「んなっ⁉」
使者の報告を聞いて、劉表は喫驚していた。