表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
817/954

ご命令通りに

 荊州武陵郡漢寿県。


 城内にある一室で蔡瑁が文に目を通していた。

「ふんっ、この商人め。小癪な事をする」

 送り主は耿文と言う商人で、文の内容は要約すると、劉備が来年の出兵に向けて準備を整えている。詳しく調べる為に人を遣わしたいが、元手が足りず満足な情報は手に入れらないと書かれていた。

 これは、劉備軍の内情を調べるという名目の、金の無心であった。

 何故、蔡瑁が劉表宛ての文を読んでいるのかというと、劉表宛ての文を管理する者は蔡瑁の部下で、文が届けられると蔡瑁にも見せているのからだ

(もし、詳しく調べられて劉備が城を失う様な事になれば、今度は襄陽が狙われるではないか。そうなれば、曹操殿の心証を悪くなってしまうかもしれん) 

 そんな事になれば、甥の劉琮は荊州州牧になる事も出来ない上に、自分の身も危うくなるかも知れないと思う蔡瑁。

「・・・・・・これは見なかった事にするのが良いな」

 蔡瑁はそう言って、文を細かく破り捨てた後、部屋を後にした。


 同じ頃。


 兗州陳留郡陳留県。


 曹昂の下にも耿文の文が届けられていた。

「劉備は来年にも兵を出すかも知れないか・・・本当か?」

 曹昂は頭の中で現状の孫権軍と劉備軍の実情を考えたが、兵を出せる余裕はないのではと思えた。

 その呟きに反応する様に部屋に居た司馬懿が答えた。

「孫権軍は太史慈を含めた多くの将兵を失いましたが、劉備軍は奇襲により黄祖軍を撃退し、多くの兵糧と武具を手に入れたと報告が上がっております。援軍の対価で幾らか渡したとしても、少しは残るでしょう。それを使い、軍備を増強しているのでしょう」

「・・・・・・それ程多くの兵糧武具を手に入れたと思うか?」

「それは分かりません。ですが、来年には兵を出すかも知れないと書かれているのです。有り得ないとは言い切れません」

 司馬懿の意見を聞き、一理あると思ったのか、曹昂は唸った。

 其処に龐統も意見を述べた。

「更に言えば、先頃孫権は山越討伐し、多くの兵を得たそうです。其処から考えても、来年には兵を出す余裕が出来ると思います」

「劉磐という脅威が近くに居るのにか?」

 曹昂は指摘するが、龐統は更に言葉を続けた。

「其処は太史慈の代わりになる者を派遣し守らせるのでしょう。守りを固めれば、劉磐もそうそうに落とす事は出来ないと思います」

「確かにそうだな。もう少し、劉表の力を削ぎたいな」

 このままでは、孫権の勢力だけ削られるかも知れないと思い、曹昂は呟く。

 呟きはしたが、特に何も思い浮かばなかった。

「その様なお考えであれば、わたしに一つ案がございます」

 曹昂の呟きに、龐統が答えた。

「なにっ。だが、兵を動かさずに出来るか?」

「ええ、出来ますとも」

 龐統が自信ありげに答えた。

「そうか。では、手段は任せる。金はどれだけ使っても構わない。劉表の力を削げ」

「はっ。細工を致しますので、仕上げをお楽しみ下され」

「分かった。楽しみにしているぞ」

 龐統が一礼し部屋を出て行くのを曹昂は見送ると、司馬懿を見る。

「耿文の文には、返事の代わりに金を送れ。そうすれば、あの男も何をするか分かるだろう」

「はっ、直ちに」

 司馬懿が一礼し部屋を出て行った。

 部屋に一人だけになった曹昂は頷いた。

「さて、龐統はどんな事を行うのやら」

 少しだけ楽しみと思い、笑みを浮かべるのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 長安には夏侯淵、襄陽には曹仁、徐州には陳登 合肥には劉馥、汝南には李通。 穴があるのかと言いたくなるような布陣。 対抗していた関羽は既に降っている。 甘寧も曹昂のスカウトで水軍総督だし。 …
[一言] しばらくは猛将陣じゃなくて謀略家たちのお祭りかw 曹昂の幕僚だけでこの厚さwパッパ曹操のところにも郭嘉始め鬼才天才が。 やっぱり情報の扱い方は蔡瑁と曹昂、比べるまでもなく
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ