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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第十七章

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外に活路を見出す

 曹昂が鄴を出立し、陳留に帰還している頃。


 揚州豫章郡柴桑県。

 城内にある大広間では、文官と武官が激しく言い合っていた。

「建昌に赴任させるのは、この者が良いでしょう」

「いや、その者は問題が」

 武官が提言すると、文官が口を挟んできた。

 家臣達が何を話しているのかというと、太史慈の後に誰を建昌に赴任させるかであった。

 韓当の件以来、武官と文官の隔たりは縮めるどころか、広がるばかりであった。

 武官達は、韓当が自害したのは、文官達が忠義を疑う事を言ったからだと言い、文官は文官で、韓当の息子である韓綜が曹操に寝返ったのは、親子で内通していたからだ。それを隠す為に、韓当は自害したのだというのであった。

 周瑜と魯粛が家中が分裂しない様に、奔走していた。

 お蔭で、何とか家中分裂という事態には至らなかった。

 だが、評議の場は必要以上に空気が悪くなっていた。

 武官達と文官達の意見がぶつかり合い、皆頭に血が上り顔を赤くしていた。

「これ以上の論議は不要だ。後日、話し合い決めようぞ」

 孫権がそう告げると、魯粛を見た。

「今日の議題は、これで終わりか?」

「はい。その通りです」

「では、今日の評議は終わりとする。皆、下がれ」

 孫権がそう言い、上座から立ち上がり部屋を後にした。

 家臣達も頭を下げて、孫権を見送った。

 孫権が見えなくなると、家臣達は頭を上げる。

 そして、皆鼻を鳴らすか舌打ちするかして部屋を後にしていく。


 評議の場を後にした孫権は、部屋に入ると席に乱暴に座りこんだ。

「誰か、酒を持って来い⁉」

「は、はいっ。只今っ」

 孫権が声を荒げながら命じると、控えていた使用人が返事をするなり、慌てて酒の準備をしだした。

 孫権は酒が来ない事で、苛立ち始めた。

「お、お待たせいたしました」

「うむっ」

 そして、使用人が酒を持ってくると、孫権は酒が入っている水差しを奪い、盃に注いだ。

 なみなみと注がれた酒を、乱暴に呷る。

 喉を鳴らしながら、一気に飲み干すとまた盃に酒を注いだ。

 そうして、酒を飲んでいると、部屋の外にいる護衛が部屋に入って来て一礼する。

「申し上げます。周瑜様と魯粛様と周儀様がお会いしたいと申しております」

「周瑜達が? 構わん。通せ」

「はっ」

 護衛が一礼し、部屋を出て行く間も、孫権は酒を呷っていた。

 そして、護衛が周瑜達を連れて戻って来た。

 護衛が一礼し部屋を出て行くのを、周瑜が見送ると話しかけて来た。

「今日は御機嫌が悪いようですな」

「当然であろう。先程の評議を見て、気分が良くなる訳が無いであろうっ」

 孫権は酒を呷りながら話し出した。その所為で口の端から酒が零れたので、袖で拭っていた。

 孫権の気持ちが分かるからか、三人は何も言えなかった。

「あれは、何とも言えませんな」

「誰かが推薦したら、難癖をつけて却下するのだからな。どの様な者でも怒りを抑える事は出来ぬだろうな」

 魯粛も周儀も評議に参加していたので、その酷さが良く分かっていた。

「兄上、魯粛。殿の気持ちを汲んで下され」

 周瑜は孫権の前で言う事ではないと思い周瑜が述べると、孫権は手を振る。

「いや、二人の言う通りだ。何か家臣達の仲を縮める事は出来ぬか?」

 孫権がそう言うと、魯粛と周瑜は頭を悩ませていた。

「このままでは、家中が分裂してしまいます。此処は家中を団結させるのが良いでしょう」

 周儀が分かりきっている事を、言い出した。

 孫権はそんな事は分かっていると思いつつも、その言葉の真意を訊ねた。

「具体的には、何をどうするのだ?」

「山越を討伐するのです。ここ最近、彭虎という者が反乱を起こしていると聞きます。その者を討ち取り、降伏した者を我らの兵に組み込めば、家中も落ち着き、兵力の増強が出来るでしょう」

「成程。悪くないな」

 周儀の案を、孫権は盃を持ったまま真剣に聞いていた。

 そして、盃を前に突き出した。

「良い献策だ。周儀。褒美だ。この酒を飲むが良い」

「はぁ、有り難き幸せ」

 孫権の手から盃を受け取った周儀は、口を着けると飲み干した。

「・・・ぷはぁ、殿から賜った酒は格別ですな」

「そうかそうか。お主は良い飲みっぷりだから、見ていて気分が良いっ」

 孫権は使用人に盃を持って来いと命じると、三つの盃を持って来た。

 周瑜達は飲むつもりはなかったのだが、周儀が既に盃を受け取り飲んでいた。

 孫権も楽しそうに酒を呷るので、これは交らないのは失礼だと思い、二人は酒を飲んだ。

 此処の所、鬱屈する事が多かった為か、孫権は楽しそうに笑いながら酒を交わしていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 張昭や顧雍を登用出来なかったのが、かなりダメージを与えているようだ。 周瑜や魯粛が過労死、呂蒙や蒋欽の育成も無理そうだ。
[一言] 史実よりも早く酒カス化が進みそう…w後継者騒動の後継者ができる前に逝ってしまうんじゃないかという飲みかたw 呉お得意の異民族討伐か。曹昂が異民族支援して泥沼にどっぷりいかんかなw
[一言] やはり、孫軍が張昭を得られなかった穴は大きいですねぇ。 文官のまとめ役としても、孫権の抑え役としてもウエイト大きかったですし。
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