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大金を得た

 翌月。


 屋敷に衛大人の使いの者が屋敷にやって来た。

「主人より、これを届ける様にと言われお届けに参りました」

 その者が屋敷の庭に入るなりそう言って、一緒に来た者達に箱を持って来させた。

 凄い事に一つではなく幾つも箱が運ばれたのだ。

 曹昂はこの箱一つにどれだけの大金が入っているのだろうか興味津々であったが、曹騰は眉一つ動かす事無く箱を見ていた。その様子を見るとこれだけの大金を見ても、全く心が揺れる様子はなかった。

 大金を大量に自分の元に運ばれるのを何度も見た事があるからだろう。

(まぁ、この時代では官位を金で売り買いしていたからな。自分に親しい者を望む官職に就ける時に、これぐらいの大金を払いもしたし貰いもしたのだろうな)

 何となくだがその理由を察した曹昂。

 そして、箱を運び終えると使いの者が曹騰達に一礼する。

「確かにお届けいたしました。それとこれは我が主人からです」

 使いの者は袖から手紙を出して、曹騰に渡して再び一礼して屋敷の庭から出て行った。

 使いの者達が見えなくなると、曹昂はワクワクしながら箱を開けた。

 箱を開けると、金色に輝く塊が幾つも入っていた。それらの塊が日の光に浴びて更に輝きを増した。

 その輝きに声を失う曹昂。

「これは金?」

「そうじゃな。手紙によると、箱には金千両が入っているそうじゃ」

「そうなんだ。これ全部の箱を合わせて千両なんだ」

 これは思ったよりも売れているなと思う曹昂。

 曹昂はまだ技術を提供して一ヶ月しか経っていないので、精々百貫から千貫銭が入れば良いと思っていた。

 この時代の貨幣は五銖銭であり、一銭約三百円ぐらいなので現代価格に換算すると約三十万だ。

 それなりの大金を手に入れられると思ったが、予想を上回る大金に驚いていた。

 だが、驚くべき事は更に続いた。

「違う。箱一つに金千両じゃ。箱は全部で六つあるから六千両という所じゃな」

「六千⁉」

 想像を超えた大金に眩暈を覚える曹昂。

(まさか、こんなに売れるとは思わなかった)

 しかも驚くべき事にこれだけの大金が毎月手に入るのだ。

 正に濡れ手に粟と言っていいだろう。

「ほほほ、まぁこれだけ売れるのも訳ないのう」

 金六千両と聞いても何とも思わない顔をする曹騰。

 馬車に乗っているから、これだけ売れて当然と思っているようだ。

「さて、お前達。一つほど蔵に運ぶのじゃ」

「はい。大旦那様」

 曹騰が手を叩いて、使用人達に運ぶように指示した。

 しかし、箱は六つあるのに何故か一つだけ蔵に運ばせた。

「曾祖父様。まだ箱が五つあるのですが、どうするのですか?」

「それはお主の金じゃ。好きに使え」

 と言って曹騰は奥へと引っ込んで行った。

 それを訊いた曹昂は目を丸くした。

 こんな大金を使う予定など無いのだから。

(どうしよう・・・・・・?)

 途方に暮れる曹昂。

 其処に丁薔がやって来た。

「昂。どうしたの?」

「ああ、母上」

 生みの母である劉夫人は早くに亡くなったので、母親と言う実感が無い。

 なので、育ての母である丁薔の事を普段から『母上』と呼んでいる曹昂。

「蔵に箱が運ばれていったけど、どうかしたの?」

「はい。実は」

 曹昂は馬車の技術で権利で手に入れた金の事を話し、曾祖父である曹騰が箱の五つを曹昂の金と言って渡してきて困っている事を話した。

「そんなに大金なの?」

 丁薔が訊ねると、曹昂は返事の代わりに箱を開けた。

 大量の金が入っているのが見て丁薔は目をパチクリさせる。

「・・・・・・これは大金ね」

「はい。でも、使い道が無いので困っていて」

 丁薔に管理してもらおうかなと思ったが。

「なら、貯めておきなさい。使いたい時に使えばいいのだから」

「・・・・・・あの、母上に管理して貰えませんか?」

「それは駄目よ」

 曹昂の提案を即答で断る丁薔。

「貴方が自分の知識で手に入れた金よ。自分で管理しなくてどうします。貴方は御父様の後を継ぐ曹家の長子。ならば、自分の力で稼いだお金ぐらいは自分で管理するのが道理。例え、それで無くしたとしても自分の責任よ。それを自覚しなさい」

 精神年齢は兎も角まだ六つでしかない曹昂に厳しいが正論を言う丁薔。

 それを言われて、無言で頷く曹昂。

(この時代の長子って、子供の時でもこんなに責任ある対応を求められるのかな? それとも母上が厳し過ぎるだけか?)

 まだ友達が居ない曹昂には分からない事であったが、少なくとも丁薔は今後の曹昂の事を慮り言うのだと理解する。

 丁薔は曹昂の態度から、自分が言っている事を理解してくれたと思い頭を撫でる。

「さぁ、とりあえずこの箱全てを部屋に運ばせましょう。誰か、誰か」

 丁薔が使用人を呼んで文字通り大金が入った箱を曹昂の部屋に運ぶように指示した。

 その指示が終わると、丁薔は曹昂を見る。

「私はこれから(しゃく)の面倒を見るから、貴方は今日の分の勉強を終えたら好きにして良いわよ」

 と言って屋敷の奥へと行く丁薔。

 鑠とは本名は曹鑠で曹昂の同母弟だ。

 生まれつき病弱で曹昂もあまり会っていない。

 病気を移す可能性があるからという理由だ。

 その為、丁薔が面倒を見ている。

(一つ下だから、今年で五つか。全く顔を合わせていないから。もうそんな歳なのか)

 その内、元気になるだろうと思い曹昂は部屋に戻り勉強をする事にした。

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