劉表の悪あがき
関羽が鄴に帰還している頃。
荊州武陵郡漢寿県。
襄陽を追われた劉表達は、この地を拠点としていた。
劉表はまだ床上げしていないので、蔡瑁が劉表の代理として意見を聞き答える。
そして、評議を終えると劉表に報告するのであった。
この日も評議があり、終わると蔡瑁は劉表の部屋を訪ねた。
「以上となります」
「そうか。ご苦労だったな」
蔡瑁の報告を聞き終えると、劉表は労いの言葉を掛けた。
「はっ。殿の御加減は如何でしょうか?」
「もう少しすれば、床上げ出来ると薬師が言っていた。だから、もう少し評議は任せたぞ」
「はっ。畏まりました」
それで、話は終わりだろうと思い、蔡瑁は部屋を出て行こうとしたが。
「時に黄祖はどうしているのだ?」
劉表にそう訊かれた蔡瑁は足を止めて、黄祖で聞いていた事を思い出した。
「確か、今は戦力の立て直しをしていると聞いております」
「そうか。孫権め。父親の仇だと言って、事あるごとに攻め込んできおって。曹操の対応だけでも手に余るというのに、忌々しい事よ」
「はい。ですが、孫権も県を落とす事しか出来ないのです。父親に比べて戦下手なのでしょう。恐るるに足りません」
劉表は苦い顔をしながら言うと、蔡瑁は問題ないとばかりに述べた。
「・・・ふむ。確かにな。そう言えば、拠点を移したそうだな」
「はい。柴桑に移ったそうです」
「そうか。では、暫く戦に出る事は無いな」
劉表は笑みを浮かべた。
「ええ、そうですね。拠点を動かすとしても金は掛かりますし、新しく選んだ県を拠点にする為にも金は掛かりますからな」
劉表が笑みを浮かべている意味が分からず、蔡瑁は予想をのべた。
その予想を聞いて、頷く劉表。
「そうであろうな。ご苦労であった。下がって良いぞ」
劉表にそう言われ、蔡瑁は部屋を出た。
廊下を歩きながら、劉表の笑みが気になっていた。
数日後。
蔡瑁は評議に向かおうとした所で、劉表の遣いの者が来た。
遣いの者は劉磐をこの地に呼ぶ様にと命じられた事を伝えた。
「なっ、劉磐様を⁉」
話を聞いて驚く蔡瑁。
劉表の甥で長沙郡を長らく守っていた武将であった。
文治派である劉表と違い、武断派であまりに武勇が優れている為、今は亡き孫策も一目置いていた。
だから、信頼に厚く勇猛である太史慈を建昌に赴任させて侵攻させない様にしていた。
「・・・ふむ、成程な。孫権が暫く動かないのを見て、劉磐様を使って攻め込むという事か。さて、何処に攻め込むのやら」
その辺りは、劉磐が来たら分かるだろうと思い考えず、蔡瑁は遣いの者を下がらせた。
「一応、曹操殿に報告をしておくか」
大した結果にはならないだろうがなと思いつつ、文を認めて人を呼んで遣わせた。
遣いの者が出て行くと、蔡瑁は評議の場に向かった。




