好きにせい
数日後。関羽達が鄴へと辿り着いた。
その足で、関羽は曹操に謁見に向かった。
帰順するという事で周倉と裴元紹も連れて行く事にした。
「以上で、報告は終わりになります」
謁見した関羽は上座に座る曹操に、胡班の件を含めた全てを話した。
「ふむ。成程な」
話を聞き終えた曹操は、帰還が遅れた事が分かり納得していた。
「これは馬休の首にございます。命じられた馬超を討ち取る事はできませんでしたが、どうかお許しを」
関羽は後ろに控えている裴元紹から、馬休の首が入った壺を受け取り前に置いた。
「・・・・・・お主の見立てで良い。馬超は死んだと思うか?」
曹操の問いに、関羽は暫し考えた後、口を開いた。
「下流を探しましたが、死体は見つかりませんでした。生きているかもしれませんが、正直な所分からないとしか言えません」
「そうよな。ご苦労であった。馬超の事は夏侯淵に任せる。お主は休むが良い」
「はっ」
「それで、周倉とか言ったな?」
曹操は関羽の後ろに控えている周倉に目を向けた。
「ははぁっ」
「お主は関羽に仕えたいそうだな」
「はっ。畏れ多き事ですが。お願いしたいと思います。何卒、お願い致します」
周倉は頭を下げて願い出た。
その場が暫し静まり返った。
「・・・・・・良かろう。関羽の配下となるがよい」
「ありがとうございます!」
曹操が許可すると、周倉は再び頭を下げた。
「お主は裴元紹とか言ったな。お主はどうする?」
「わ、わたしは、関将軍の配下でなくとも構いません。丞相の麾下の末席に加えられるだけで十分にございます」
「そうか。では、部下共々、わたしに仕えるが良い」
「ありがとうございます。粉骨砕身の心でお仕えいたします!」
部下と共に帰順を認められて裴元紹は喜んでいた。
そして、関羽達が下がっていく。
曹操は残された壺をジッと見た後、人を呼んだ。
数日後。
鄴県内に数ある屋敷の一つ。
其処には馬岱と馬鉄の二人が暮らしていた。
処分を免れた二人は謹慎しているかのように、碌に外出をしていなかった。
その為、馬超達がどうなっているのか分からなかった。
其処に使用人が駆け込んで来た。
「今市で、馬休様の首が晒されているそうです!!」
「なにっ⁉」
「真か⁉」
使用人の話を聞いて、馬岱達は驚いていた。
だが、内心では討たれた事に納得もしていた。
「して、超兄者の首はあったか?」
「いえ、市に見に行った所、馬超様の首はありませんでした」
使用人がそう言うのを聞いて、二人は安堵するべきか悲しむべきか分からなかった。
それから数日後。
使用人が丞相が使者を送って来たと告げた。
使用人がそう言うのを聞いた馬岱達は直ぐに会うと言い、軽く身嗜みを整えた。
そして、使者が居る部屋へと向かう。
部屋に入ると、馬岱達は使者に一礼する。
「ご使者殿。今日はどの様な御用で参られたので?」
馬鉄が頭を上げるなり、そう訊ねた。
使者はその問いに答える前に、共に来た従者に手を振る。
その従者は手に持っている壺を馬岱達の前に置いた。
「これは?」
「壺の様だが?」
目の前に置かれた壺は何なのか分からず、馬岱達は首を傾げていた。
其処で使者が口を開いた。
「逆賊馬超と行動を共にしていた馬休の首である」
「なっ⁉」
「休兄者の⁉」
馬岱達は膝をついて、壺の蓋を取り覗き込んだ。
すると、壺の中に馬休の首が収められていた。
「あ、あにじゃっ‼」
「おお、休。何と言う姿に」
二人は首を見て、涙を流した。
「逆賊に従った罪で、数日程晒し首になり、そのまま葬られる所を、丞相が温情を下された。丁重に弔うべしとのお言葉である。各々、丞相の温情に感謝するが良い」
「は、ははぁっ」
「感謝申し上げます」
使者の口上を聞いて、二人は深く頭を下げた。
そして、使者が居なくなると、馬岱達は哭泣していた。




