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久しぶりに会った

 董卓が相国に就任してから数日が経った。

 相国になった事でもっと自分の威厳を示す為なのか、以前よりも各地に居る朝廷に出仕していない名士達を招聘する様になった。

「此処が洛陽か……」

 董卓の招聘に応じて洛陽に来たと思われる者が城門を見上げながら呟いた。

 巷の噂では何処かしこに血の匂いがするとか罪人の死体を縄で吊るしているとか言われていたが、そんな物はなかった。

 その代わりに城壁や城門を守っている兵達の数が尋常ではない数であった。

 その厳重さには鼠の子一匹も逃さないのではと思われた。 

「厳重な警備だな。さて、久しぶりに会うがあいつは元気にしているだろうか」

 そう呟いた後、その者は城門を潜った。


 その頃、曹昂は。

「う~ん…………」

 朝議が終わり今日は珍しく董白も屋敷に来ないので自室で考え事をしていた。

 内容はどうやって洛陽を脱出するかであった。

(前々から頼んでいた事はあの(・・)()の伝手で何とか出来たけど、問題はそれを持ってどうやって洛陽を出るかだよな)

 まさか此処まで董卓に気に入られると考えていなかった曹昂は此処まで長く洛陽に居るつもりはなかった。

 頃合いを見て袁術みたいに適当な理由を付けて抜け出そうとしていた。

 ちなみに、袁術は当初董卓の政権に尽力していたが董卓の暴虐に付いて行けなくなり病気になったので療養すると嘘を付いて洛陽を抜け出して南陽郡へと向かった。

 その際、曹昂にも一緒に洛陽を出ないかと声を掛けたのだが。曹昂は断った。

 一緒に洛陽を出る理由もないし、まだしたい事があったからだ。

 袁術は何をするのか訊いてきたが曹昂は「いずれ分かります」としか言わなかった。

(う~ん。あの時、一緒に出ても良かったかな? でもそうしたらあれ(・・)が貰えなかったからな)

 曹昂はあの時の判断を間違えたかなと考えていると。

『失礼します。若様。お客様です』

 部屋の戸から貂蝉が声を掛けて来た。

「客? 誰?」

 曹昂は董白が来たのかな?と思ったが違っていた。

『丁沖様です』

「伯父上が?」

 曹昂は驚いた。

 今は元気だが昔は病弱であったので、病弱を理由にして今まで朝廷に出仕しなかった丁沖が洛陽にやって来たというので驚くのも無理はなかった。

(さては董卓が脅して無理矢理出仕させたのかな?)

 そんな事を思いながらとりあえずやって来た丁沖に会いに行く事にした。


 部屋を出た曹昂は客間に向かう。

 其処では既に酒を引っ掛けている丁沖の姿があった。

「久しぶりだな。我が甥よ。元気そうで何よりだ」

「伯父上も元気そうで何よりです。てっきり譙県に居ると思いましたが」

「ははは、なに、相国殿に招聘されてな。黄門侍郎の職に就く事になった。断ればこれと言われてはな」

 丁沖は手で首を斬るジェスチャーをした。

 それを見て曹昂は頭を下げる。

「大変でしたね」

「うむ。ところで、吉利から手紙が届いたのだろう。どうして、洛陽を脱出しないんだ?」

 洛陽に行く事と親友という事で曹操は手紙の内容を話したようだ。

「色々と事情がありまして」

 曹昂は言葉を濁していると、丁沖は何かあったのかと考えているとふと何かに思い至った。

「成程。お前の婚約する子が可愛いから離れるのが惜しかったという事か?」

「ち、違いますっ」

 曹昂は丁沖の揶揄に否定した。

「ふむ。だが、可愛いと巷では評判らしいが?」

「可愛いのは認めますが、それで洛陽を脱出しない訳ではないのです」

「そうか。だが、早い内に洛陽を出た方がいいぞ。吉利の奴、準備を着々と済ませているぞ」

 何の準備と言わなくても分かると思い丁沖は言わなかったが、曹昂も何の準備なのか知っていたので頷くだけであった。

「実はそろそろ頼んでいた物が出来ると思うのです。それを持って父上の下に行こうと思いまして」

「頼んだ物?」

「はい。実は……」

 曹昂は隠しても仕方が無いと思い、話に出た頼んでいる物が何なのか丁沖に教えた。

「…………」

 それが何なのかを知った丁沖は口を閉ざしてしまった。

 流石に驚いているのかな?と思っていたが。

「ふ、ふはははっは……」

 丁沖は腹を抱えて笑い出した。

「まさか、この状況でその様な物を作るとはな。流石はあの曹操の息子だ。うん、流石だっ」

 丁沖は猶も笑い続けた。

 そんなに面白いかなと曹昂が思った。

 其処に使用人がやって来た。

「申し上げます。蔡邕殿が参りました。どうなさいますか?」

「ああ、此処にお通して」

「はい」

 使用人が一礼して下がり少しすると。

 使用人に連れられて蔡邕がやって来た。

「急にやって来て申し訳ない」

「いえ、頼んだのはこちらなので」

 曹昂は大事な話があるので使用人に下がる様に手で合図をすると使用人は一礼して下がって行った。

 曹昂は話をする前に蔡邕に丁沖を紹介する事にした。

「こちらは僕の母方の伯父にあたる丁沖様です」

「お初にお目に掛かります。私は名を丁沖。字を幼陽と申します」

「ご丁寧に。私は蔡邕。字を伯喈と申します」

 お互いに自己紹介する二人。

 そして、蔡邕は曹昂の方を見る。

「お主に頼まれていた物だが。何とか出来そうだぞ」

「本当ですか?」

「うむ。私と王允殿が方々に手を回したからな。数日後には渡せるそうだ」

「良し。これで後は洛陽を抜け出す方法だな」

 卞蓮と使用人を置いて出て行ったら、後でどんな事になるか分からないので一緒に連れて行くが、問題はその方法であった。

「すいません。何か良い方法は有りませんか。どれだけ考えても僕には思いつかなくて」

「ふ~む」

 丁沖は顎に手を当てて考えた。

「……私に考えがある」

「本当ですかっ」

 曹昂はやったと喜んだ。

「だが、一つ条件があるのだ。それを訊いてくれるか?」

「何でも聞きますっ」

「そうか。では…………」

 蔡邕は自分の考えを話しだした。

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