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衝撃が止まらない

 太尉兼領前将軍事となった董卓は暴虐の限りを尽くしつつも、自分の政権求心力になる者の抜擢も行った。

 名士と言われる伍瓊、周毖、鄭泰、何顒、許靖らに人事を委ねた。

 その推薦で荀爽を司空、韓馥を冀州刺史、劉岱を兗州刺史、孔伷を豫州刺史、張咨を南陽太守、張邈を陳留太守に任命した。

 更に蔡邕を侍中にし、曹操を驍騎校尉とした。

 曹操からしたら何で自分もなのか分からなかった。なので、董卓にその旨の事を訊ねると。

「君が用意してくれた鎧でこの前の狼藉者の剣を防ぐ事が出来た。いや、本当に衣の下に着ても変に思われない上に攻撃を防ぐとは凄い物を用意してくれたな」

 と董卓は笑顔で言う。

 しかし、曹操からしたらそんな話を初めて聞いたので、まさに寝耳に水の出来事であった。

(また、昂が何かしたな?)

 曹操はこれは息子が勝手にした事だと何となく察した。

 帰ったら、其処のところを問い詰める事にしようと決めた曹操。

 仕事を終えた曹操は曹昂にその事を問い詰めた。

 曹昂はあっさりと認めた。

「父上の助けになると思い鎧を渡したのです」

 と言われては怒る事も出来なかった。

 そのお蔭で驍騎校尉になれたのだから。

 仕方が無くそれ以上何も言わない事にしたが、これから何かする場合は事前か事後に報告する事を厳命された。


 数日後。

 曹操は親交があった蔡邕が侍中になった事を祝いにお祝いの品を持って蔡邕の屋敷へと向かった。

 ついでに息子の曹昂も紹介しようと思い連れて来た。

 馬車に揺られながら蔡邕の屋敷に向かう曹昂は曹操に訊ねた。

「父上。これから訊ねる蔡邕様とはどのような御方なのですか?」

「そうだな。博学で辞章・算術・天文を好み、音律に精通し琴の腕も素晴らしい上に見識も豊かな御仁だ。私が宦官の孫だと知っていても交友してくれるという奇特な御方だ」

「そうなのですか」

 曹操の話を聞いて、曹昂は感心していた。

 宦官の孫という立場で色々と言われている曹操に親しくなろうとする人物などそうは居ないからだ。

「こんな話がある。蔡邕殿が現役であった時は宦官共が朝廷を仕切っていてな。宦官と揉めて官職を退いて一族と共に揚州で隠棲したのだ」

「それは大変でしたでしょうね」

「手紙でも暮らしは大変であると書かれていた。その揚州に居る時に木こりが焚火にしようとした木が桐の木であってな。それを燃やしたら、桐が焼ける音を聞いて琴の良い材料になると分かり、木こりに金を払ってその燃えている桐の木を買ったのだ。少ししか焦げていなかったが良かったのか。その焦げた桐の木で見事な琴が出来たそうだ。焦げた事から『焦尾琴』と名付けたのだ」

「へぇ、そうなんだ」

 話を聞きながら内心で正確には端が焦げていたから焦尾琴だけどねと思う曹昂。

 そう話をしていると、馬車が蔡邕の屋敷の前に着いた。

 曹操達が馬車から降りて屋敷の門の所に行く。其処には既に行く事を言っていたからか、使用人が立っていた。

「これは孟徳様。旦那様は客間でお待ちです」

「うむ。では、参ろうか」

 使用人に案内されて曹操達は屋敷の中へと入って行った。

 

 使用人の後に付いて行くとある部屋の上座に人が座っていた。

 使用人が部屋に入ると、上座に座っている者に頭を下げる。

「ご主人様。孟徳様方をお連れしました」

「うむ」

 主人の返事を聞いて使用人は主人に一礼し、曹操達に一礼して部屋から出て行った。

 上座に座っている者が立ち上がり曹操に対して一礼する。

「良く来られた。曹操殿」

「蔡邕殿。侍中の就任のお祝いに参りました」

 曹操はそう言って頭を下げる。

「まぁ、掛けてくれ。うん? そちらの子は?」

「ああ、これは私の息子の曹昂と申します。曹昂。ご挨拶を」

 曹操に挨拶する様に言われた曹昂であったが。

「…………」

 曹昂は蔡邕の顔を見て目を見開かせて言葉が出ない程の衝撃を受けていた。

(お、伯父さん⁈)

 目の前に居る蔡邕が前世で死に別れた正彦伯父にそっくりの顔であった。

 温厚そうな顔立ち。白髪交じりの髪と口髭。大きな目。声も。

 どれをどう見ても前世の正彦伯父に瓜二つであった。

 転生して前世の記憶の中にある人が目の前に居れば誰でも驚くだろう。

 そう驚いていると、更に衝撃を受ける事が起こった。

「お父様。孟徳様が着たと聞きましたが? あら?」

 女性の声が聞こえて来た。

 その声も聞き覚えがあった。

 もしかしてと思い曹昂が振り返ると。其処には

(……れいあ姉さん……⁉⁈)

 曹昂よりも幼い可愛らしい子がいた。

 綺麗な顔立ち。優しい目。まだ幼いからか全体的に発育が未発達であった。

 だが、十分に美人になる素養を持っていた。

 目の前に居る子は曹昂は記憶の中にある従姉の麗亜の小さい頃にそっくりであった。

 突然、衝撃な事が起こって曹昂は眩暈がしてきた。

「どうした?」

「……ちょっと立ち眩みがして」

「うん? 良く分からんが。気をしっかり持て」

 何もしてないのにどうして立ち眩みをするんだと思いながら曹操はとりあえず曹昂の気を落ち着かせる。

「……ありがとうございます。父上」

「もう直ったか。ほれ、挨拶しろ」

 曹操に促されて曹昂は前に出て一礼する。

「お初に目にかかります。曹昂と申します」

「ご丁寧な挨拶痛み入る。儂は蔡邕と申す。こちらは娘の蔡琰だ」

「蔡琰と申します。以後お見知り置きを」

 優雅に一礼する蔡琰。

 曹昂は蔡琰に見蕩れていると、曹操が揶揄いだした。

「どうした息子よ。蔡琰が可愛らしいのは分かるが、そんなに血走った目で見ていると嫌われるぞ」

「父上。僕は別に」

「ははは、照れるな。照れるな」

 大笑いする曹操。

 その笑い声に釣られて蔡邕達も笑い出した。

 お蔭で曹昂が立ち眩みした事など気にされなくなった。

 その後も曹操達は談笑をしていた。

(……この世には自分と似た顔を持っている人が三人いるって聞いた事がある。それと同じと考えれば良いのか。うん。きっとそうだ)

 そう思う事にした曹昂。

 そのお蔭で話しかけられてもちゃんとした対応を取る事が出来た。

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― 新着の感想 ―
[一言] 歴史の流れは一般的な作品準拠だがしっかりハーレム要員のフラグを立てていく主人公。
[一言]  蔡琰か…将来拉致されるんだよね。それを考えると保護しないと
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