表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
600/1005

相手の思惑を外せ

 時を少し遡り、孫権の使者が程普に命を伝え、韓当が殿に志願していた頃。


 曹昂軍は堂邑県に入っていた。

 城内にある広間にて軍議を行っていた。

「密偵の報告によりますと、孫権軍は既に撤退をしているそうです」

 床に広げられている徐州の地図を見つつ司馬懿がそう述べた。

「撤退? 我が軍が来たと言う報告を訊いて撤退したという事か?」

 上座に座る曹昂は気になって訊ねると、司馬懿は首を振った。

「いえ、どうも黄祖の息子の黄射が侵攻して領地の県を攻撃しているので、撃退する為に退いたそうです」

「そうか。という事は殿はいるのか?」

「はっ。先陣を務めていた張燕の軍から偵察を出した所、阜陵県を攻撃している程普軍がまだ居る事が分かりました。数は二万五千。恐らくこの軍が殿を務めるのだと思います」

 報告を訊き終えると、殿が二万五千も居ると聞いて呂布を含めた武闘派の家臣達は腕が鳴るという顔をしていた。

「しかし、敵将の程普は孫家に長年仕えている歴戦の宿将と聞いております。二万の兵を殿にする事はないでしょう。恐らく軍の一部で三千から五千ほどが殿を務めているでしょう」

「そうだな。二万も殿にするのは無理がある」

 殿は敵の追撃を阻止し、本隊の後退を掩護する事が目的である。そのため本隊から支援や援軍を受ける事は出来ない。限られた戦力で敵の追撃を食い止めなければならない最も危険な役割であった。

 だから、犠牲が出る事が前提である為、二万の兵を殿にするなど被害が大きかった。

 また兵の数が多ければ、その分兵糧も多く消費する。殿を任されたが兵糧が尽きて飢えて、敵の追撃を阻止できない事になるなど本末転倒と言えた。

「将は誰なのか分からないが、五千ぐらいの兵で殿をするという所か。さて、敵の考えは分かった。どうするべきだと思う?」

 何か案がないかと訊ねると、龐統が口を開いた。

「敵の考えが分かったのであれば、それに乗る事はありません。我らは軍を二手に分けましょう」

「分ける?」

 曹昂は分ける理由が分からないので聞き返すと、龐統が話し出した。

「張燕の軍五千と呂範の軍五千の両軍を敵の殿が居ると思われる阜陵県近くに進ませて、殿の部隊を見つければ交戦せず敵の動きを引き付けて下され。その間に本隊は南下して、撤退している敵軍を強襲します。そうすれば、敵は大打撃を受けるでしょう。何せ、敵は追撃は殿の部隊が防いでると思っている筈ですから」

「言えてるな。だが、仮に敵軍が全軍で殿をしていたらどうする?」

「その場合は無いと思いますが、もしそうであれば、張燕と呂範の両軍で敵の目を引き付けさせて、本隊が背後から奇襲するだけの事です」

「良し。策は決まったな。張燕、呂範」

「「はっ」」

「話は聞いたな。二人の役目は重大だ。敵に囮だと気づかれない様にするのだぞ」

「「承知しました」」

「では、皆、出撃の準備を」

 曹昂が号令を下すと、家臣達は行動した。

 その日の内に曹昂軍は二手に別れて進軍した。


 そして、今に至る。

 呂布を先頭に趙雲。陳到の三人の猛攻の前に程普の軍は獣の群れに襲われる羊の群れの様に倒れて行った。

 程普は撤退を命ずる事しか出来なかった。

 追撃から逃れる事が出来る頃には、率いていた半数の兵が討たれるか捕まった。

 残りの半数は殆ど負傷者ばかりであった。

 追撃が終わると、曹昂は戦利品と捕虜と共に野営をして勝利を祝う宴を開いた。

 将兵共に勝利に喜びおおいに酒を飲んでいた。

 曹昂も静かに酒を飲んでいると、其処に司馬懿が近づいて来た。

「殿。此度の勝利は素晴らしき限りです」

「なに、お主と龐統の献策を聞いて従っただけの事だ」

「如何に策を献じようと受け入れるかどうかは君主の器量しだいです。殿は器量に優れている言えるでしょう」

「はっはっはっ、お主に褒められると背中がかゆくなるな」

 司馬懿のお世辞を聞いて笑う曹昂。

 一頻り笑うと真顔で訊ねた。

「それで、何か話したい事があるのではないのか?」

「・・・はい。その通りです」

 読まれていたかと思いつつ司馬懿は頭を下げた。

「敵の捕虜を尋問した所、殿を指揮しているのは韓当という将だそうです」

「韓当か。程普と同じ宿将と言える者だな」

 兵を少し休ませたら、張燕達が注意を引き付けている間に攻撃するかと思っていたが。

「背後を攻めて攻撃すれば大勝利間違いないでしょうが。もっと良い策があります」

「ほぅ、それはどんな策だ?」

 司馬懿は誰にも訊かれたくないのか、一度周りを見た後、近くに聞き耳を立てている者が居ないと分かると、曹昂の側により話し出した。

「・・・・・・そう上手くいくか?」

「失敗した所で特にこちらは困りません。それに、韓当は以前、殿に仕えていた事があると聞いております」

「正確に言うと、孫策が仕えていたから家臣である韓当も仕えていたようなものだぞ」

「その関係でも十分に役に立ちます。策を実行しても良いですか?」

「・・・では、任せた」

「はっ」

 曹昂の許可をえた司馬懿は策を実行する為、その場を離れて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] バァカめ!凡愚が!+さぁて、あっしがちょっくら… 贅沢すぎる幕僚w龐統さんも曹昂の下なら鳳凰まで行けそう。そして黒軍師、腹黒策をまた韓当さんに仕掛けようと。次回期待w
[一言] 600話おめでとうございます! 更新楽しみにしてます!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ