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閑話 その頃

 曹昂達が河北一帯を支配下に置いていた頃。


 陳留にある曹昂の屋敷。

 貂蝉、董白、練師、袁玉、程丹、蔡琰の六人が部屋にいた。

 劉吉は献帝に呼ばれ許昌に行っていた為、屋敷に居なかった。

 甄洛は屋敷には居るのだが、正式に妾にもなっていないので、この場には居なかった。

「うちの旦那は一つも文を寄越してこないが、どうしているんだろうな?」

「全くね」

 董白が曹昂の薄情さに愚痴ると、程丹が溜め息交じりで同意していた。

「旦那様は筆不精だから仕方がないです」

「確かに」

 袁玉は仕方が無いと笑うと、貂蝉は苦笑いしていた。

(昔から家族に当てて文を書くという事が少なかったわね・・・)

 幼い頃から侍女として仕えていた貂蝉は筆不精だったなと思い出していた。 

「え、えっと・・・活躍はしていると聞いていますよ」

「そうね。河北の殆どを手に入れたも同然と聞いているわね」

 練師と蔡琰の二人は曹昂が頑張っていると述べると、他の者達は肩を竦めていた。

「その活躍ぶりを文でもなく人伝に聞くというのがな・・・」

「せめて、近況の報告ぐらいしても良いと思うわね」

 拗ねたように言う董白に程丹。

 そんな、二人を見て四人は何も言えなかった。

「まぁ、向こうで妾を作ったと聞いていないから良いけどな」

「流石に出来たら報告すると思うわ」

 幾ら筆不精でも、それぐらいはするだろうと思われた。

 だが、貂蝉は首を振った。

「そうですね。旦那様の事ですから、もし妾が出来たら、流石に文で教えると思います」

 そう断言するので、他の者達はそうだなと思った。

「あいつの性格を考えると、義父上みたいに沢山増やすという事はないだろうな」

「ですね」

「今の所はあの甄洛だけね」

「一人というのも少ないと思いますけど。その内増えるのでしょうか?」

「恐らく。旦那様の地位が上がって行けば、有力者達が送って来るでしょうね」

「でしょうね」

 曹操の長子で有力な跡継ぎという事で、有力者達が関係を繋ぐ為に一族の女性を曹昂に送るという事は簡単に予想できた。

 その後、六人は退屈なので近頃している事や人伝に聞いた面白い話などを話していると、部屋に呂布の娘で侍女をしている綺羅が部屋に入って来た。

「失礼します。鄴から文が届きました」

「文? 誰から?」

「旦那様です」

 そう言うなり、董白は目にも止まらない速さで椅子から立ち上がり綺羅の下まで来て、手に持っている文を奪い取り広げた。

「なに一人で見ているの。わたしにも見せなさい」

「あの、せめて何と書かれているか教えてください」

 程丹が横から覗き、練師はお願いして来た。

「・・・・・・義父上が冀州州牧になったから、後任として兗州州牧に選ばれたと書かれているな」

 曹昂が兗州州牧に選ばれたと聞いて、皆目を丸くしていた。

「しかし、文を送ったのに、自分の近況しか送らないのか。あいつは、もっとこう、娘達はどうしているか? とか、あたし達は元気にしているか? とか聞く事はあるだろうに」

 曹昂が書いた文を読み終えて、近くにいた袁玉に渡すなり不満を述べていた董白。

「はいはい。貴女は変わらないね」

 昔と変わらない天邪鬼ぶりに貂蝉は呆れるべきなのか、変わらないのは良い事と褒めるべきなのか分からず息を吐いた。

 この話で十二章は終わりです。

 数日後に十三章を開始します。

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