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とりあえず、周りを制圧するか

 急いで戻って来たが、鄴に着くと既に戦闘が終わっていたので肩透かしを食らった気分になった曹昂は戦後報告を訊く為、城内に入って行った。

 城内にある大広間の上座に座る曹昂は報告を訊き終えると、荀衍を見た。

「よくぞ、鄴を守って下された。見事ですな」

「はっ。有り難きお言葉にございます。これも、曹子脩様が教えてくれた事で出来た事にございます」

 荀衍は深く頭を下げた。

(流石は荀彧のお兄さんか。兵を指揮する事に関しては荀彧よりも上かも知れないな)

 その内、一軍を預けて率いる事も考慮していたが、その前に何か褒美を渡すのが良いなと思った。

「此度の功績は父が戻り次第報告するが。何か褒美を与えたいと思うのだが、何か欲しい物はあるのかな?」

「褒美ですか。しかし、私は職務を行っただけですので、褒美など」

 荀衍は別段褒美は断ろうとしたが、曹昂は手を振った。

「功を立てたのは確かなのだから、褒美を貰っても問題ないでしょう」

「さようですか・・・・・・」

 そう言われた荀衍は暫し考えていた。

「では、褒美とは言いませんが。お願いしたき事があります」

「お願い。何か?」

 出来る限りの事であれば叶えようと思いながら曹昂は訊ねた。

「我が甥の荀閎を何かの職に就けさせて頂けないでしょうか?」

「じゅんこう?」

 誰だっけ?という顔をしていると、側にいた趙儼がそっと近づいて話してくれた。

「袁紹に仕えていた荀尚書令の兄君の荀諶の子にございます。荀諶は既に亡くなっております」

 趙儼の説明を聞いて、曹昂は思い出したのか顔を頷かせていた。

「して、その甥御はどちらに?」

「今、わたしの屋敷におります。弟の子という事で、少々問題はあるかと思いますが。才はあります。ですので、どうか」

 荀諶は袁紹に仕えていたので、その子供が曹操に仕える事に支障があると思っている顔をする荀衍。

(父上はそんな事は気にしないと思うけどな。まぁ、それで良いというなら叶えてあげるか)

「・・・承知した。父上に荀衍の功績と共に申し出を伝えておこう」

「有り難き幸せっ」

 曹昂が曹操に伝えると言うと荀衍は頭を下げて感謝を述べた。

 

 報告が終わると、評議が終わりとなった。

 曹昂は側近の趙儼、劉巴と曹丕を連れて城内の一室に入った。

「わたしが居ない間、よく鄴を守ってくれた。頑張ったな、丕」

「いえ、休若殿が頑張ってくれたお陰です」

 曹昂が褒めると、曹丕は荀衍のお陰だと述べた。

「そうか・・・・・・」

 謙遜しているなと思い曹丕を頭を撫でると、嬉しいのか顔を赤くしていた。

 一頻り撫でた後、曹昂は椅子に座ると口を開いた。

「高幹は司隷にも兵を差し向けたと聞くが、援兵を出すべきだと思うか?」

 援軍を出すべきかという問いに、劉巴が答えた。

「いえ、送るかどうか、鍾繇殿が送る文を読んでからでも遅くありません。それよりも、并州をどうするべきかが先です」

「兵を再編して攻め込むだけでは?」

 劉巴の提議を聞くと曹丕がそうするべきだろうと思い答えた。

 その答えを聞いて劉巴は首を振った。

「今、鄴に居る兵を出しますと。高幹がこれ幸いとばかりに冀州に居る知人に反乱を起こすように指示を送るかもしれません。そうなれば、鄴がまた危うい事になるかも知れません」

 その指摘を聞いて、その場に居た者達は確かにと思い頷いていた。

「此処は許昌に援軍を乞うては? その軍で并州に進軍させて、高幹の壺関県以外の郡県を制圧させた後に包囲させて、我らが攻め込むは如何ですか?」

 趙儼の進言を聞いて、それは良いと思ったのか曹昂は頷いた。

「では、許昌に援軍を乞う使者を送ろう。兵が少なければ、鄴に居る兵を与えて向かわせてもいいだろうからな」

「それは良いと思います」

 援軍を乞うと決めると、直ぐに許昌へと使者が駆けた。

 暫くすると、青州経由で楽進と李典率いる二万の軍が鄴に到着した。

「荀尚書令の命により、楽文謙。援軍として参りました」

「従兄の李整の代わりに李曼成。同じく参りました」

 楽進達が大広間に揃って来ると、上座に座る曹昂に頭を下げながらそう述べた。

「両将軍。よく来てくれた。率いて来た兵は二万だそうだな」

「はっ。その通りです」

 兵数を聞いた曹昂はこれだけあれば十分かと思い頷いた。

「では、両将軍に命じる。率いて来た二万の兵を率いて并州へ進軍し、各郡を制圧せよっ」

「「はっ」」

 楽進達は異論なくその命を受けた。

 楽進は直ぐに準備に取り掛かろうとしたが、李典が訊ねて来た。

「南匈奴はどうすればよいでしょうか?」

「ああ、そっちは文を送ってあるから、兵を差し向けなければ何もしない様に」

「承知しました」

 気になっていた事を聞けた李典はその答えを聞くなり問題ないとばかりに頷いた。

「そうだ。青州はどうなっている?」

「未だに治安は安定しておりませんが、州治で手が一杯で従兄が援軍の将として来られない程に」

 青州経由で来たと聞いたので、曹昂は青州はどうなっているのか訊ねると李典は溜め息交じりで教えてくれた。

「それで李整の代わりに貴殿が来たのか」

「はい。その通りです」

 それで、援軍の将として来たのだと納得したのであった。

 

 二日後。楽進と李典率いる二万の兵は并州へと進軍した。

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