表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
570/1004

運が悪いよな

 時を遡り郭援軍が河東郡に侵攻している頃。


 高幹は郭援が率いる軍とは別に一軍を組織していた。

 一軍を率いる将にはある土地を攻める様に命じた。

 その土地とは鄴であった。

 鄴は亡き袁紹が本拠地にしていた事に加えて、冀州を支配するのに絶好な所でもあった。

 更に言えば、其処は曹操が冀州を支配下に抑える為の拠点にしていた。

 仮に鄴が落とされれば、曹昂が遠征で立てた功績も吹き飛ぶ程の失態であった。

 その為、鄴は要所中の要所と言えた。

 其処を攻め落とそうと考えた高幹には優れた戦略眼を持っていると言えた。

 だが、彼には運が無かった。


 鄴奇襲軍は街道を通らず渓谷など人目につかない道で進み続けていた。

 その頃の鄴はと言うと。

 城壁の上に居る兵は敵が攻め込んでくると思っていないのか気を抜いた顔で職務を行っていた。

 欠伸を掻いていると、其処に怒鳴り声が響いた。

「馬鹿者! 丞相は逆賊を討伐する為に遠征に出ているというのに、貴様らが気を抜くとは何事か⁉」

 その怒鳴り声を聞いて気が抜けていた兵達は背筋をピッと伸ばした。

 そして、畏まりながら怒鳴り声をあげた者を見た。

「も、申し訳ありません! 荀校尉っ」

 兵が目の前にいる者に謝る。

 それを聞いた荀校尉と呼ばれた者は頷いた。

「分かれば良い。引き続きを警戒を続ける様に」

 そう言い終えた後、荀校尉はその場を後にした。

 荀校尉の姿が見えなくなると、叱責された兵達は周りを見た後、話しだした。

「ああ、吃驚した」

「確か、あの人だよな。荀尚書令の兄君って言うのは」

「らしいぜ。特に功績を立てていないが、弟の推挙で監軍校尉になったって話だぜ」

「はぁ、大した功績も無いのに良い所の家と親族の伝手で校尉様になれるとか。良い身分だぜ」

 兵達は愚痴を零していた。


 兵達が愚痴を零していた時。

 先程兵達を叱責をしていた者は何か不審な事が無いかと辺りを見回していた。

 年齢は四十代後半であった。

 細い顔に切れ長の釣りあがった目を持ち、ピシッと整った口髭を生やしていた。

 身の丈は八尺寸(約百八十センチ)ほどあった。

 その身長に見合うかのように、細いがかなり鍛えられた身体を持っていた。

 この者の本来の名前は荀衍。字を休若と言い、荀彧の兄であった。

 兵達が話していた通り荀彧の推挙で曹操に仕えたのは本当であったが、その才は陳羣から高く評価されていた。

 その話を聞いたのか、曹操は鄴を守る監軍校尉の職に就かせていた。

 余談だが、荀彧の兄はもう一人おりそちらは荀諶と言い、その者は袁紹に仕えていたのだが、官渡の戦いが起こる前年に病死してしまった。

(わたしの行い一つで弟の顔に泥を塗る事になる。励まねば)

 兄弟仲は悪くない様で、弟の推挙で職に就いたとは言え荀衍は不貞腐れる事無く職務に励んでいた。

 真面目に職務に励んでいると、城壁に居る兵が荀衍の下に走って来た。

「荀校尉。伝令が参りました」

「誰が送って来たのだ」

「曹子脩様が送って来たとの事です」

「何とっ、若君がっ」

 兵の報告を訊くなり、荀衍はその伝令の下に案内する様に命じた。

 兵の案内で伝令の下に来ると、荀衍は何を伝えに来たのか訊ねた。

「并州を預かっていた高幹は反乱を起こし、壺関県を占拠。また、ほぼ同時に司隷の各郡にて反乱が起こりましたっ」

「何と⁉」

 伝令の報告を訊いて驚く荀衍。

「曹子脩様はこの反乱に乗じて、高幹は鄴に兵を送り自分の物にするかも知れないので、自分が戻るまで守りを厚くせよとの事です」

「承知した。曹丕様には直ぐにお伝えする」

 曹昂が居ない間は曹丕に全ての事を一任させていた。

 その為、籠城するにしても出陣するにしても曹丕の許可が必要であった。

「お主は曹子脩様にお早いお戻りをと伝えよ」

「はっ」

 荀衍は伝令に命じた後、後ろに振り返った。

「曹丕様の下に向かう。お主らは周囲の警戒を厳にせよっ」

 荀衍が兵達に命じた後、曹丕の下に向かった。

 曹丕に報告すると、直ぐに籠城の準備をするようにと命じられたので、荀衍がその指揮を執った。

 その指揮を執っている最中に荀衍の実家と付き合いがあり并州で暮らしている名士が荀衍に文を送って来た。

 文には高幹が鄴に兵を向けた模様、注意されたしと書かれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ