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どちらかと言えば、孫子の方が有名

 レビュー三つ目頂きました!

 見た時は目を何度も擦って、見間違いではないか確認してしまいました。

 この場を借りて、y-spo様ありがとうございます!

 曹昂が行動している頃。


 曹操率いる遠征軍は冀州の河間国易県に辿り着いた。

 幽州の州境にある県なので、其処を拠点にする為、曹操は兵達に拠点建設を命じた。

 その建設が終わるまでの間、曹操は諸々の実務をしていたが、それが終わると、郭嘉に言われた事を思い出した。

「忘れていた。幽州の近くまで来たら、この文をお読み下されと言っていたな」

 思い出した曹操は手を叩いて護衛の兵を呼び、郭嘉から渡された文を持ってくるように命じた。

 少しすると、兵は封に入った一枚の紙を持ってきて曹操に献じた。

 曹操は封を破り、中に入っている紙を取り出して中を改めた。

 紙には『兵貴神速』と書かれていた。

「うむ? どういう意味だ?」

 曹操は意味が分からなかった。

 これが『兵貴拙速』であれば、孫子の一節であるので分かった。 

 だが『兵貴神速』と書かれているので、それでは無いと分かった。

 ちなみに、この『兵貴拙速』とは兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきを睹ざるなりという言葉であった。

 意味は作戦を練るのに時間をかけるよりも、少々まずい作戦でもすばやく行動して勝利を得ることが大切であるという意味だ。

「・・・・・・誰か、田豊を呼んで参れ」

「はっ」

 曹操は手紙を持って来た兵に田豊を呼んで来る様に命じた。

 田豊の他にも荀攸もいるのだが、まず田豊を呼んだのは、田豊がこの手紙に書かれている言葉をどう解釈するのか聞きたかったからであった。

 少しすると、兵が田豊を連れて来た。

 田豊は曹操に一礼すると、兵は下がった。

「呼んだのは他でもない。この手紙の意味が分かるか?」

 曹操はそう言って、手に持っている郭嘉の手紙を渡した。

 手紙を渡された田豊は手紙を広げるて中を見た。

「・・・・・・成程。そういう意味ですか」

 手紙を読んだ田豊は直ぐに書かれている意味が分かったのか、成程と言いたげに頷いていた。

「意味が分かるのか?」

「はい。この兵貴神速とは兵は神速を貴ぶという意味ですな。つまり、郭嘉殿は此処から遠い淩西の地にいる敵と戦う為には、輜重などの足が遅い物があります。それらの足に合わせて進軍すれば、敵は守りを固めるだけです。ですので、輜重をこの地に残し騎馬と戦車で編制された大部隊を率いて、遼西へ向かうべきという意味にございます」

「成程な。そういう意味なのか」

 郭嘉の手紙を読んで直ぐに意図が分かった田豊の説明を聞いて、曹操は納得した。

「そうだな。確かに輜重の足に合わせて進めば、敵の守りは固くなるな。良し、直ぐに騎馬と戦車の部隊を編制するぞ」

「承知しました」

 曹操がそう命じると、直ぐに編成が行われた。

 易県の拠点は曹洪に任せて、曹操は精鋭騎兵部隊の虎豹騎を中心とした騎兵部隊と曹昂が作った戦車を中心とした戦車部隊を編制した。

「兵は神速を貴ぶ! わたしに続け‼」

 編成した大部隊の先頭に立った曹操が号令を下すと駆け出した。

 大部隊もその後に続いた。


 曹操率いる大部隊、雷挺隊と名付けられた部隊は幽州に入っても足を止める事はしなかった。

 そのまま東へ、東へと進み続けた。

 右北平郡の無終県まで辿り着く頃には、馬達は疲れ切っていた。

「丞相。馬が疲れ切っております。此処は馬を変えるか、休ませないと戦に出す事も出来ません」

 そう曹操に述べたのは趙雲であった。

「そうだな。では、近くの県で馬を休ませるか」

 曹操はその言葉に従い、無終県で一時休息をとる事にした。

 曹操率いる雷挺隊が城内に入っていく姿を城内に居た男が確認すると、城の外に出た。

 その足で城外に繋いでいる馬の下まで行くと、馬に跨ると駆けさせた。

 馬が駆けていった先には山があった。

 その山には(防砦)が出来ていた。

 男は土を盛って作った防壁で囲まれた塢の入り口に着くと、男が手を挙げると入り口の門が開かれた。

 男はそのまま塢に入り、馬から降りて手綱を近くにいた者に預けると、塢で一番大きな建物へと向かった。

 建物の扉を開けて中に入ると、薄暗い部屋の中で誰かが居た。

 年齢は三十代ぐらいで口髭を生やした鼻筋が通った丸い顔を男性が居た。

「子泰様。ご報告があります」

「何だ?」

「曹操率いる大部隊が無終県に入りました」

 男の報告を訊いて、子泰と呼ばれた男は驚いた顔をしていた。

「もう来たのか。予想よりも早いな」

「どうしますか?」

「・・・・・・向こうが接触してくるかもしれんが、とりあえず、挨拶に向かうとしよう。ああ、手土産を忘れずにな」

「はっ」

 子泰がそう男に命じた。

 男が出て行くと、部屋にある窓を開けて、其処から外を見た。

 そして、ある方向を見た。

「殿。ようやく、ようやくです。ようやく、仇を取る事ができます」

 そのある方向を見ながら男は呟いた。

 窓を開けた事で、部屋が明るくなりそう呟くのが誰なのか分かった。

 それは嘗て劉虞に仕えていた田疇であった。

 投稿が遅れましたが、ストックが尽きたので次話から二日または三日おきの投稿になります。

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