無事に帰って来ますように
初めてレビューを書かれて驚きを隠せません!
この場を借りて、ふおと様ありがとうございます!
数日後。
ようやく、遠征の準備が整った。
騎兵、歩兵だけではなく兵糧、武具を運搬する輜重隊だけでもかなりの数であった。
全ての兵合わせて十五万となった。
輜重隊が使う車の他に戦車もあった。
その中で弩が設置された戦車が数十台ほどあった。
設置された台は軸が動くようになっているのか、三百六十度回転できる様に出来ていた。
加えて矢を乗せる台座の部分には矢以外の物を乗せる事も出来ている物もあった。
その他に、輜重隊の車の中には大量の箱が積まれていた。
箱の中には紐で繋がった竹筒が大量に入っていた。
その箱が次々に車に運ばれて行った。
箱が運ばれている様子を見た曹昂は息を漏らしていた。
(何とか、遠征に行く前に作る事が出来たな・・・)
曹昂は曹彰と曹植を遠征に連れて行くと聞いて、大急ぎで遠征に使える兵器を作る事にした。
(まぁ、バリスタ・クアドリロティスと爆竹を作る事が出来たから良しとしよう)
もう少し時間があればまだ何か出来たのであろうが、流石に時間が無かったので二つだけしか作れなかった。
曹昂が箱が運搬されて行くのを見ていると、後ろから声を掛けられた。
「子脩。何を見ている?」
「ああ、子廉殿」
曹洪が話しかけて来たので、曹昂は曹洪を見た。
「いえ、遠征の準備がようやく終わったので、これから父上は大変だろうなと思いながら見ていたのです」
「そうだな。わたしが最後まで反対しても孟徳の奴は頑として聞かなかったがな」
曹洪は重い溜め息を吐いた。
曹洪は夏候惇と共に遠征を反対していたが、曹操は考えを変える事をしなかった事に嘆いている様であった。
「父上は一度決めると、そう簡単に考えを変える事はしませんから」
「確かにな。だが、冀州にも遠征で来たというのに、其処から遼西まで遠征に行くなど、正気の沙汰ではないがな」
曹洪は有り得んだろうという思いで呟いていた。
(まぁ、そう思うのも無理ないよな)
これも、袁煕を逃亡させた自分の手際の悪さだなと思う曹昂。
(降伏を促す手紙に、降伏すれば妻を返すという事を書けばよかったかな?)
今更ながらそう思う曹昂。
だが、こうなった以上はきっちりと始末をしなければならないとも思っていた。
曹昂と曹洪が話をしていると、田豊がやって来てた。
「若君。曹厲鋒将軍」
「これは、田豊殿」
挨拶してくる田豊に頭を下げる曹昂達。
「此度の遠征にはお主が丞相と共に行くそうだな」
「はい。郭嘉殿の代わりという事で。わたしも幽州には行った事がありますので、少しは土地勘がありますので」
「成程な」
田豊が付いて行く理由が分かり曹洪は納得した。
「どうか、御無理はせぬように」
「お気遣い頂きありがとうございます」
頭を下げる田豊を見て年齢的に大丈夫かなという思いはあるが、田豊と沮授の二人の智謀は、張良と陳平に匹敵すると言われているので智謀の面で言えば、郭嘉に引けは取らないと言えたので、大丈夫だろうと判断する曹昂。
「後は蒸留器を積めば完了か」
「蒸留器?」
「何に使うので?」
「まぁ、遠征に行けば分かりますよ」
曹昂は蒸留器を何に使うのかは教えなかった。