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悲しいけど、これ戦争なんだ

翌日。

「「「おおおおおっっっ」」」

 鎧も纏わず粗末な服を着た男達が鄴へと進軍する。

 手には剣、槍、鍬、鋤、鎌、梯子といった物を持っていた。

 その集団の後ろには衝車が続いた。

 城壁に梯子が掛けられ、男達は喊声と共に梯子を上がっていく。

 その男達に城壁に居る袁尚軍の兵達は槍を繰り出す事も、矢を放つ事も躊躇していた。

 何故ならば、梯子を上がっていく者達も衝車で城門を攻撃する者達も、皆審配の命令で鄴から追い出された男達であった。

 袁尚軍の兵達も鄴で暮らしている。

 兵達は今城を攻撃している者達の中には顔見知りや知人がいる事が分かった。

 同郷で知人を殺す事に躊躇している袁尚軍の兵達。

「何をしている‼ 早く敵を殺さんか!」

 兵達を指揮している部将は怒りながら命じた。

 粗末な服を着ている男達が攻め込んできているというのに、一向に何もしない兵達に怒っている様であった。

「で、ですが・・・」

「口答えするな! さもなければ、お前から殺すぞ!」

 部将が腰に下げている剣を抜いて切っ先を兵に突き付けた。

 刃の切っ先を突き付けられ兵は慌てて矢を放った。

 放たれた矢は梯子を上がっている男に命中し、男は痛みで梯子から落ちてしまい地面に落ちてそのまま動かなくなった。

 仲間がそう行動するのを見て兵達も男達に攻撃を加えだした。


 本陣から攻城の様子を伺う曹昂。

 側には劉巴と趙儼だけではなく、張郃の姿もあった。

「城の守りも固そうだな」

「攻城させている者達も、兵ではない者達ですから攻めに手間取ってるのもあるでしょうが」

「その内、慣れていくと思います」

 攻城を見ながら攻める自軍の兵の様子を見ながら評する曹昂達。

 今、城を攻めている者達は義勇兵として自軍に組み込んだ者達であった。

 その後方には義勇兵達の城攻めを見ている曹昂軍の兵達が居た。

 その評を聞いた張郃は恐ろしい物を見る目で曹昂達を見ていた。

(同郷の者達を戦わせるとは、何と惨い策だ)

 こんな策を思いつく曹昂の智謀には、張郃は恐ろしいと思っていた。

「曹昂様。このまま義勇兵だけで攻城させるのですか?」

「いや、数日ほどした後、内応させた将達に城門を開かせる。其処を包囲している部隊に攻撃させれば城は落せるだろう」

「そうでしたか。しかし・・・」

 張郃は攻城している義勇兵達を不思議そうに見ていた。

「どうされた?」

「いえ、義勇兵達はどうして戦に参加してるのか不思議に思いまして」

 少し前まで人も殺した事が無い義勇兵達が攻城している様子を見て張郃は疑問に思っていた。

「ああ、それは簡単な事だ」

 張郃の呟きが聞こえた曹昂が教えた。

「故郷を出て、行く宛てがある者などそうそう居ない。当てもなく彷徨い生活するのも大変だ。そんな生活するよりも、命がけで戦うとは言え食事に困る事がなくなるんだ。それだったら兵士になった方が良いに決まっている」

「しかし、自分が死ぬかも知れないのに、良く加わりますね」

 説明を聞いても張郃は訝しんでいた。

(まぁ、そう扇動したのもあるけどね)

「加えて食べるのに困らない上に功を立てれば恩賞を渡すと言っているんだ。そうすれば、頑張るに決まっている」

「・・・そうですね。追い出された者達は行く宛てが無いのですから、そうなってもおかしくないですね」

 張郃はようやく納得はした様子であった。

 その後、曹昂達は攻城の様子を黙って見ていた。

 義勇兵の攻撃は長く続いたが、正午になると銅鑼が叩かれた。

 その音を聞いて攻撃していた義勇兵達は攻撃を止めて後退を始めた。

 これで攻撃は終わりかと思い一息つけると思っていたが、後退する義勇兵の代わりに別の義勇兵の部隊が城壁に攻め込んで来た。

 袁尚軍の兵達は一息つく暇もなく防衛に走った。

 その正午から始まった攻撃も夜になると、銅鑼が鳴り攻撃が止まった。

 ようやく、一息つけると思ったが、また別の義勇兵の部隊が攻撃してきた。

 それから数日間。昼夜分かたず義勇兵の攻撃が続いた。

 袁尚軍の兵達は疲労が溜まり、碌に食事を取る事も出来なかった。

 死傷者は日増しに増えて行った。

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