中々の人物とみた
数日後。
曹操は献帝に袁家討伐を上奏した。
特に問題なく上奏は通り、そのまま軍を動かす事となった。
予てからの決め事通りに総大将は曹昂。参軍に程昱。曹昂配下の他に鮑信、史渙、張郃、高覧が付けられていた。
騎兵歩兵合わせて十万の兵を与えられ、曹昂は総勢十万の兵を率いて北上した。
許昌を出て数日程すると、兗州に入り陳留に到達した。
曹昂は陳留に入り、軍務の傍ら県内の政務を行っていた。
全ての仕事を終えて一息ついていると、護衛の趙雲が部屋に入って来た。
「申し上げます。鮑信様がお会いしたいと申しております」
「鮑信殿が?」
何の用だろうか?と思いつつ、部屋に通すように命じる曹昂。
趙雲が部屋から出て行くと、鮑信と男性を一人連れて戻って来た。
年齢は二十代後半で凛々しい目を持ち、整った口髭と顎髭を生やしており、逞しげにはっきりした目鼻立ちした顔立ちしていた。
身の丈は八尺約百八十センチはあった。
「お忙しい中、お時間を頂き感謝します」
鮑信の方が歳上なのだが、此度の軍の総大将という事で敬語で挨拶を交わした。
「いえ、丁度仕事が終えた所でしたのでお気になさらずに」
「はっ。ありがとうございます」
鮑信は頭を下げた後、部屋に入ってから黙っている男性に目を向けた。
「此度の戦には、愚息を連れて参りましたので、ご紹介しようと思い連れて参りました」
「成程。そちらがご子息か?」
曹昂が鮑信の後ろに控えている男性を見ると、鮑信は頷いた。
(確か鮑信には子供が二人いたな。名前は鮑卲と鮑勛だったな。確か鮑卲が鮑勛の兄だったから、連れて来たのは鮑勛かな?)
戦に連れて来るという事なので、命の危機に晒せる事がある可能性もあった。
そんな所に跡継ぎの長男を連れてくる事はないだろう。だから、次男の鮑勛だなと思う曹昂。
「叔業。ご挨拶せよ」
「はい」
鮑信に促されて、男性は前に出た頭を下げた。
「お初にお目に掛かります。鮑信の次男の鮑勛。字を叔業と申します」
頭を下げながら名乗り上げる鮑勛。
予想通りだなと思いつつ頷く曹昂。
「鮑勛と申すのか。今後ともよろしくお願いする」
「はっ。持てる才を持ってお仕えいたします」
鮑勛は頭を下げながら、そう言うのを聞いた曹昂は鮑信を見た。
「見所があるご子息のようですな」
「まだ未熟者にございます。教える事が多すぎるくらいです」
「歳はわたしと同じぐらいですか?」
「はい。丁度、同い年にございます」
「そうか。それは凄い偶然だな。これからもよろしく」
「「はっ」」
鮑親子が話は終わったのか、一礼し部屋を出て行った。
(まさか、鮑勛が同い年だったとはな。これは良い)
見た所使える人材だと思った曹昂はこの戦が終わった時は配下にならないかと声を掛けようと思った。
そう考えていると、趙雲が部屋に入って来た。
「申し上げます。趙儼殿が参りました」
「来たか。通せ」
趙雲が一礼し部屋を出ると、趙儼を連れて来た。
「ただいま、戻りました」
「ご苦労。頼んでいた件はどうなった?」
「はっ。兗州内の食糧をかき集めました。百万の兵が居ても百日は食わせる程集めました」
「良くやってくれた。下がって休め」
曹昂は労いの言葉を掛けられた趙儼は一礼し部屋を出て行った。
(これで準備が整った。後は攻め込むだけだ)
曹昂はニヤリと笑った。
二日後。
曹昂は全軍を率いて鄴へと北上した。
本作では鮑勛は175年生まれとします。