これは、嫌がらせだ
曹昂が許昌にある屋敷で蔡琰から琴を教わっていると、曹操が使者を送って来た。
曹昂は何事かと思いながら、使者と面談すると使者は文を取り出して、曹昂に渡した。
渡された文を広げ中を改める曹昂。
「・・・・・・羊羹餅も良いが、そろそろ新しい糧食を作っても良いと思うので、何か作れだって?」
文を読み終えた曹昂は唸った。
(そうかな? 意外に受けがいいと聞いているのだけど?)
曹昂は羊羹は兵に気に入られているのか気になり、一度調べた事があった。
調べてみた結果。好評だという事が分かった。
味も粒餡、漉し餡、塩に加えて栗と色々な味があるので、飽きる事も無いという事が分かった。
その分、家臣達の好みも分かれていた。
荀彧、郭嘉、程昱といった者達は粒餡を好み、曹操、曹純、夏侯淵は漉し餡を好み、夏候惇、楽進、曹仁は塩を好んでいた。
其処に曹洪、徐晃、荀攸といった者達は栗を好んでいた。
意外だったのは、粒餡にも漉し餡にも塩にも興味を持たなかった荀攸が栗を好む事であった。
一口食べるなり、目を見開かせてバクバクと食べだしたのだ。
皿に盛られていた栗羊羹を食べ終えると、皿を物悲しい目で見ていた。
誰が見ても一目で気に入ったのだと分かった。
新しい派閥が出来た事は如何なのかと思いつつも、好きな物が出来たのであれば良い事だと思う事にした曹昂。
そんな事があったので、別に新しい糧食を作らなくても良いのではと思った。
(これは何かあるのでは?)
何となくだがそう思った曹昂。
使者に「承知した。父上には出来次第お見せすると伝えてくれ」と言い、使者を下がらせた。
使者が部屋を出てくと、曹昂は気になったので、調べる事にした。
早速配下の三毒を呼び寄せて、此度の件を探らせてみた。
二日後。
調べた結果。ある事が分かり、曹昂は頭を痛めた。
「まさか、あの件が此処まで尾を引くとは・・・」
三毒から届けられた報告書を読みながら曹昂は呆れていた。
報告書には、曹操が何を考えて糧食を作るように命じた理由が書かれていた。
別段曹操は羊羹に飽きたとかいう事ではなく、少し困らせようと思い文に書いたのであった。
何故困らせるのかと言うと、曹操としては狙っていた袁煕の妻である甄洛を横から掻っ攫われた事を根に持っている様であった。
其処で嫌がらせをする事にしたのだと分かった。
「父上は、時々心が狭いな」
狙っていたのは知っていたが、こんな嫌がらせをしなくても良いだろうにと思う曹昂。
「・・・・・・これは新作の菓子でも作らないと駄目かもな」
そう思った曹昂は厨房に向かった。
何を作るか考えた結果。
「・・・・・・ああ、そうだ。良いのがあった」
暫し考えた曹昂は良い物が思いついたのか手を叩き作業に取り掛かった。
(それと容器が要るな。同時並行で作って置こう)
曹昂はそう思いながら部下に指示を送った。