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荒れる河北

 明けましておめでとうございます。

 今年も拙作を御笑読してください。

 健安六年(西暦二百一年)十二月。


 許昌に居る曹操の下に河北にいる間者からの報告書が齎された。

「ほぅ、袁煕が袁尚が居る鄴に攻め込んでいるか」

 報告書を読みながら曹操は面白そうに呟いていた。

「はっ。袁煕は妻を曹操に奪われたと思い込み、天を焦がしそうな程の怒りに燃えながら鄴に攻め込んでおります」

 報告書を持って来た間者がそう報告した。

「ふむ。袁煕と袁尚との仲は最早、修復する事も不可能か。まぁ、袁尚の母親と妻子は此処に居るのだからな」

 報告書を読みながら曹操はある事を思い出したのか、突然苦虫を噛んだ顔をしだした。

(っち、まさか狙っていた者が、子脩の目に留まるとは)

 曹昂が袁尚の母親と妻子を許昌に連れて来た際、甄洛を一目見た。

 噂以上の美貌だなと思い、直ぐに自分の屋敷に連れて行こうと思ったが、曹昂が。

『父上。此度、袁尚と袁煕との仲を裂く事が出来ましたので、褒美を頂けますか?』

 曹操はどんな褒美だと言うと、曹昂は甄洛が欲しいと告げた。

 その言葉を聞いた瞬間、曹操は細い目がカッと開いた。

 自分が狙っている者を息子に奪われるという事に、曹操は怒りが沸いた。

 だが、同時に功績を立てたので褒美として何か与えねばならなければ、自分の公平さに疑問に思う者達が出てもおかしくなかった。

 それにより、家臣達がこのまま仕えても不安に思う者達が出て来るかも知れなかった。

 私情と公平性の間に揺れる曹操。

 其処に屋敷に居る丁薔から文が届けられた。

 文には『屋敷には既に多くの妻妾がおり、これ以上囲うのは無理にございます。どうしても囲いたい者が居るのであれば、屋敷を広くするか、今いる妻妾の者達を追い出して下さい』と書かれていた。

 曹操は文を読みながら、甄洛が許昌に来たと同時に届けられたので、直ぐに悟った。

(こいつ、もう根回ししておったのかっ)

 今迄、どんな妾を連れて来ても丁薔は特に何も言わなかったが、甄洛が来た時だけ文が届いた。

 どう考えても時期が合い過ぎた。

 なので、曹操は直ぐに悟る事が出来た。

(これで無理矢理連れて行けば、丁薔が何を言うか分からんな)

 曹操としても、以前の様に家を出ていかれる様な事はしてほしくなかった。

 此処は非常に惜しいが我慢する事にした曹操。

『・・・・・・好きにせよ。お前の手柄なのだから』

 曹操はとても不満そうな顔をしながらも、曹昂にそう告げた。

 曹昂は感謝すると言っていたが、本心ではどう思っているのか分からなかった。

 その事を思い出した曹操は苦虫を噛んだ顔をしていた。

 曹操が突然、そんな顔をするので間者はギョッとし、何かおかしなことを言ったかなと思い出した。

「何かありましたか?」

「何でもない。それよりも、袁尚は兵を出さないのだ?」

「はっ。それにつきましては、先の鄴を奪還する際に兵を挙げた事で、家中の統制が取れず兵を集めるのがままならないそうです。その為、鄴で籠城しているそうです」

「そうか。報告ご苦労。下がれ」

「はっ」

 間者を下がらせると、曹操は横に居る程昱に訊ねた。

「袁兄弟の仲を裂く事が出来たが、これからどうするべきだろうか?」

「此処は敵を疲弊させて、我等は内政に力を入れて攻め込むのが良いと思います」

 程昱は兵を出さない方が良いと述べた。

「では、何時頃出すのが良い?」

「来年で良いと思います。その頃には兵糧は潤沢にあります。対して、相手は愚かな争いで兵糧と武具を多く消費しているでしょう。其処を攻め込めば、鄴を手にする事も容易でしょうな」

 程昱が静かに断言した。

「であれば、年が明けるまでは動かない方が良いな」

 曹操がそう訊ねると、程昱は頷いた。

「ならば、少し時間はあるな。良し」

 曹操は何か思いついたように手を叩いた後、あくどい笑みを浮かべながら笑っていた。

 その笑みを見た程昱は何か良からぬ事を考えているなと思いつつも、何も言わなかった。

 

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