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まずは、動く

蹴鞠の観戦を終えた翌日から曹操は侵攻を開始した。

 進路上にある内黄と繁陽の二つの城を陥落。

 そして、陰安県の攻略に掛かろうとした所に、曹操の下に驚くべき報告が齎された。

「この度は誠に申し訳ございません」

 軍議を行う天幕の中で上座に座る曹操に跪いて額に地面を突かんばかりに深く頭を下げる男がいた。

 この男は蘇由と言い、審配と共に鄴を守っている部将であった。

 少し前から曹操と通じており、折りを見て裏切るつもりであったのだが、審配が計画を察知し、城内で戦闘になった。

 蘇由は敗れ城から逃走して、曹操の下に来ていた。

「計画が露見したのであれば仕方がない。お主を咎めはせん」

「ご厚情に感謝します」

 曹操は処罰しないと言うと、蘇由は頭を下げた。

「お主はこのまま我が下に居るが良い。鄴の内情を聞きたいからな」

「はっ。それと、私が城を出る前に袁尚からの文が届きました」

「文には何と書かれていたのだ?」

「内容は袁譚が籠もる南皮の攻略は部下に任せて、曹操を撃退する為に向かっていると書かれておりました」

 蘇由の報告を訊いて、家臣達はひそひそと話し出した。

「袁尚がこちらに向かっているという事は、我等と一戦交えるつもりか」

「敵の数がどのくらいか分からない以上、対処に困るな」

「このまま陰安を攻めるか。それとも、袁尚の来襲に備えるか」

 家臣達はどちらを優先するか考えていると、郭嘉が意見を述べた。

「袁尚がどれ程の兵を率いて来ようと、袁譚の包囲の為にそれなりの数を割いているだろう。加えて、移動に次ぐ移動で人馬共に疲れ果てている筈です。その様な兵など数程の働きはしません。ですので、此処は急ぎ陰安県を落とし、その後で袁尚の軍勢と戦うのが良いかと思います」

 郭嘉の推察を聞いて、曹操を含めた家臣達はそれもそうだと思い頷いた。

 そのまま、陰安県を落とすという事で軍議は終わると思われたが、其処に曹昂が口を挟んだ。

「城を落とすと言っても、そう簡単に落ちるかどうか分かりません。ですので、軍の一部を袁尚軍に当たらせては如何でしょうか。敵の数が少なければ、そのまま撃退すれば良し。多ければ、城を落とすまでの時間を稼がせれば良いでしょう」

「ふむ。それも悪くないな。子脩。そう申すという事は、お前がその別動隊を率いたいのだな?」

「父上の判断にお任せします」

「良かろう。子脩。お前に別動隊の指揮を任せる。兵はどの程度欲しい?」

「三万程あれば十分にございます」

「良かろうっ。精兵三万を与える。袁尚の襲来に備えよっ」

「承知しました」

 曹操の命に従い、曹昂は家臣と三万の兵と共に魏県へと侵攻した。


 数日後。


 曹昂率いる軍勢が魏県を陥落させて間もない頃。

 袁尚軍内に居る密偵から魏郡清淵県に入ったという報告が齎された。

 その報告を訊いた曹昂は直ぐに軍議を開いた。

 曹昂が上座に座る頃には、家臣達が全員軍議を行っている部屋に居た。

「皆も知っていると思うが、既に袁尚軍がここ魏郡に入ったそうだ」

 曹昂がそう言うと、それが呼び水となり家臣達が騒ぎ出した。

「おお、いよいよですな」

「腕が鳴るな」

 陳到と呂布は早く暴れたいのか、うずうずしていた。

「……して、兵の数は?」

 高順が曹昂に訊ねると、曹昴の代わりに趙儼が答えた。

「密偵の報告によりますと、騎兵歩兵合わせて五万との事です。内訳は総大将は袁尚。参謀に逢紀。部将は張顗、馬延、梁岐の三名となっております」

「逢紀という者は聞いた事がありますが、他の三名は聞いた事はありませんね」

 嘗て劉虞に仕えていた趙雲がそう言うと、張燕も同意する様に答えた。

「今の袁家には目ぼしい勇将猛将は居ないからな。そういう奴しかいないのだろう」

「兵の数が多くとも、その程度の部将しか居ないのでは負ける事は無いだろう」

 呂布は既に勝つ気満々であった。

 曹昂は気が早いなと思いつつ、側近の劉巴を見た。

「劉巴。お主はどう見る?」

「はっ。兵の数は多いのは確かです。なので、此処は我等に有利な地に誘い込んで戦うというのが良いと思います」

「成程。それはつまり、相手を誘導させる必要があるが、其処はどうするのだ?」

 曹昂は名案ではあるが、どうやって誘導するのかと訊ねた。

「以前、徐州で劉備を討つ時に使った誘き出して反撃するというのは如何でしょうか?」

「あれは、劉備軍の数が少なかったから上手くいったからな。……いや、それで良いかも知れないな」

 劉巴の献策を聞いた曹昂は無理かもと思ったが、直ぐに考え直した。

「兵を出して付近の土地の探索を命じよ」

「はっ・・・」

 曹昂の命令を聞いて、劉巴は何の為にするのか分からなかったが、とりあえず命令に従う事にした。

「他の者達は出陣の準備を進めよ」

「「「はっ」」」

 曹昂の命が下り、各々行動した。

 

 三日後。

 曹昂軍は全軍で鄴へ出陣した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 挑発→誘引→包囲殲滅→袁尚、逢紀捕殺という流れかな
[一言] 曹昂が大将やっている回は久々な気がする 袁紹パッパのような油断もなさそうな上に、すでに袁家でめぼしい武将・参謀、名士は引き抜かれて後詰に曹操本体…先陣には趙雲、呂布、陳到。ここから入れる保険…
[一言] 呂布と趙雲を相手にする敵が哀れですな
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