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514/1004

北からの

 交渉を終えた曹昂が許昌に着いたが、まだ父曹操は徐州から帰還していなかった。

 仕方がないので、曹昂は留守を預かっている荀彧に事の顛末を話す事にした。

「左様ですか。劉表は同盟を受け入れると」

「後はこちらが使者を送れば、同盟は成ったという事になります」

「そうですな。丞相には人を遣って、この事をお知らせいたします」

「お願いします。先生」

 荀彧に伝えるべき事を伝え終えた曹昂は一礼しその場を後にした。


 荀彧との話を終えた曹昂は自分の屋敷へと戻った。

 屋敷に入ると、使用人達が出迎えた。

 少しすると、貂蝉も慌てて曹昂を出迎えに来た。

「お帰りなさいませ。旦那様」

「ああ、他の皆はどうしている?」

「皆、御子の相手をしているか。部屋に居るかのどちらかです」

「そうか」

 話を聞いた曹昂は子供達の相手をするか、もしくはそれぞれの部屋に居る妻の下に行くか考えた。

(・・・・・・蔡琰の所に顔を出すか)

 別段嫌っている訳ではないのだが、曹昂はどうにも蔡琰の所に足を運ぶのに躊躇していた。

 これを機に少しは通うようにしなければと思い、曹昂は蔡琰の部屋へと向かった。

 廊下を歩き、蔡琰の部屋の近くまで来ると琴の音が聞こえて来た。

 その音色に導かれる様に、曹昂は音が聞こえる方に足を向けた。

 琴の音色は蔡琰の部屋から聞こえて来た。

 曹昂が顔を覗かせると、室内では蔡琰が琴を奏でていた。

 曲名は分からなかったが聞いていると、気分が落ち着く曲調であった。

 曹昂が部屋に入ると、蔡琰は手を止めた。

 そして、その場から立ち上がり曹昂に一礼する。

「お帰りなさいませ。旦那様」

「ああ」

 曲をもっと聞きたかったなと思いながら、曹昂は蔡琰に座るように手で促した。

 蔡琰が座ると、曹昂も腰を下ろした。

「今日お戻りになるとは聞いておりませんでしたが、どうかなさったのですか?」

「いや、与えられた任務が早くに終わったので早く戻れただけの事だ」

 蔡琰は曹昂が都に帰還するのであれば、屋敷にも一報が入る筈なのだが、そんな話は聞いていないので不思議に思い訊ねると、曹昂は任務が早くに片付いたので戻って来ただけだと教えた。

「そうでしたか。董夫人が拗ねるかもしれませんよ」

「ははは、確かに」

 曹昂が忙しい事に加えて、董白も子育てに忙しくゆっくりと会う時間が取れなかった。

 その事に拗ねているのか、よく貂蝉や練師に不満を零していると使用人達から聞いていた。

「まぁ、後で部屋を訪ねれば文句は無いだろう」

「そうですね。董夫人でしたら許して下さると思いますよ。あの方はあれで、竹を割った様な性格ですから」

 蔡琰の董白の性格評を聞いて、確かにと思う曹昂。

(まぁ、一度決めたことは途中にどんなトラブルが起きようとも諦める事のない行動力を持ち、素直でさっぱりとした性格ではあるな。思えば、洛陽を脱出する時も、卞蓮の手を借りてとは言え、一緒に付いて来るとは思いもしなかったな)

 あの時の事を思い返しても、本当に驚いたとしか言えなかったなと思う曹昂。

 と同時に、其処まで好かれていると思うと悪くないと思っていた。

 思い返していたので、少し顏がにやけていたからか、蔡琰は不思議そうに見ていた。

 その視線を受けて曹昂は咳払いした。

「今日部屋を訪ねたのは、他でもない。蔡琰に頼みたい事があったんだ」

「何でしょうか?」

「私は父や弟と違って詩の才能が無いので、他に何かできる事を探していてな」

「はぁ、そうですか」

 曹昂が詩の才能が無いと言うのを聞いたが、蔡琰からしたらその詩を読んだ事も聞いた事も無いので、上手いのか下手なのかも分からなかった。なので、曖昧にしか返事できなかった。

「其処で蔡琰に琴を教えて貰えるだろうか?」

 この時代の楽器は(しょう)、笛、鼓、編鐘(複数鐘を吊した打楽器)、鐘、琴、琵琶、(しつ)箜篌(くご)と色々とある。

 この時代、音楽は娯楽・芸術的要素よりも政治・道徳・倫理的観点が重要視されていた。

 これを礼楽と言い、(おこな)いを慎ませる礼儀と、心を和ませる音楽。世の秩序を保ち人心を感化する働きを持つものとして、尊重していた。

 なので、曹昂は楽器を習う事とした。

「琴であれば、人に教える事は出来ますので構いませんよ」

「それは助かる。今日からお願いできるかな?」

 曹昂が頭を下げると、蔡琰は構わないのか先程まで自分が弾いていた琴を曹昂の前に置いて、弾き方を教えた。

 その後、曹昂は蔡琰から琴を教わるという名目で部屋に訪れ仲が一層良くなるのであった。

 

 数日後。

 曹操が許昌に帰還すると、河北より沮授の一族と田豊も辿り着いた。

 沮授と田豊は許昌に着くなり、曹操に面会を求めるのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 荊州・劉表と正式に同盟結んで耳長一派を入れなければ史実よりもすんなり、もめずに荊州は曹操陣に帰属しそうな?w孫権が暴走したおかげで曹操陣は荊州に兵を割かなくてもいい方向へ
[一言] 沮授、田豊は、何を言うのかな。。。
[気になる点] そろそろ嫁さんの相手が間に合わなくなって来そうで 蔡琰への「他」がメインのところ、「他でもない」は照れ隠しでしょうか。
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