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あまりに違い過ぎる兄弟

 年が明けて、建安六年春のとある日。


 その日、丞相府ではある人物が曹操と面会していた。

 歳は三十代で身長も大きく八尺五寸(約百九十五センチ)あった。

 少し垂れた目をしており、整った顔立ちで口髭と顎髭を立派に生やしていた。

「良く来たな。司馬朗よ」

「はっ。丞相にお声を掛けられた事、この司馬朗伯達。身に余る名誉にございます」

 曹操に挨拶をする者は名は司馬朗。字は伯達と言い曹操を洛陽北部都尉に起用した司馬防の嫡男であった。

 曹操の近くには、家臣数名がおりその中には曹昂の姿もあった。

(この人が司馬防の息子か。何か、父親と全然違うな)

 曹昂はまだ、董卓が生きており洛陽で後漢の実権を握っていた頃に何度か会った事があった。

 鷹の様に鋭い目で威厳に溢れる雰囲気を出していた。

 そんな司馬防を見ていると、会った事は無かったが息子の司馬懿は司馬防みたいな男なのだろうと思っていた。

 だが、目の前にいる司馬朗を見ていると、父親に似ていないなと思う曹昂。

(まぁ、顔立ちは産んだ母親に似ていると言われているから、恐らく司馬朗は母親似なのだろう)

 曹昂が司馬朗を見ている間、曹操と司馬朗の話は続いていた。

「この度は私を主簿に任じて頂き感謝申し上げます」

「お主の父には世話になったからな。その恩を少しでも返す事ができれば幸いだ」

 司馬朗が丞相府の主簿に任じられた事に礼を述べると、曹操は大した事はしていないと言い手を振る。

「時にお主の弟である司馬懿はどうした? 確か出仕をする様に求めた筈だが」

 曹操は司馬懿を上計掾の職に推挙して出仕する様に命を下していた。

 司馬懿は若年の頃から聡明で、博覧強記、才気煥発で最も優れた人物と父親の司馬防から聞いていたので、曹操は会える事を楽しみにしていた。

 曹操の問い掛けに、司馬朗は困った顔をしていた。

「・・・・・・大変申し上げ辛いのですが。丞相、弟は出仕を断るようです」

「なんと」

 司馬朗はとても言い辛い顔をしながら告げると、曹操は目を丸くしていた。

 そして、司馬朗は懐に手を入れると封に入った文を取り出した。

「弟から丞相宛ての文にございます。こちらに出仕できない理由が書かれております」

 司馬朗が文を掲げると、曹操は家臣に取りに行くように指示を出した。

 家臣は司馬朗から文を受け取ると、そのまま曹操の傍まで行き、文を渡した。

 曹操は渡された文の封を解き文を一読した。

「・・・・・・ふむ。持病の風痹(リューマチ)が酷いので出仕が出来ないので、推挙された上計掾の職も辞退すると書かれているな」

 一読した曹操はその場に居る者達に聞こえるように声に出した。

 それを聞いて、曹昂を除いた家臣達はざわつきだした。

「司馬朗よ。これは本当なのか?」

「はっ。弟は幼い頃から才気煥発でありましたが、生まれつき持病持ちでして」

「そうか。そうであるのであれば、無理に出仕させて病を重くさせては可哀想か。弟にはよく身体を自愛する様に伝えよ」

「丞相の寛大なお言葉には私も弟も感涙にむせびます」

 司馬朗は曹操が怒っていない事に安堵した表情をしていた。


 その後、司馬朗は部屋を退出し家臣達も部屋を出て行く中、曹昂だけ声を掛けられ部屋に残った。

「父上。何か御用で?」

「分かっているだろう。司馬懿の事だ」

 曹昂は訊ねつつも、何の用で声を掛けられたのかは分かっていた。

 恐らく司馬懿の事だろうと思っていたが、その通りであったので曹昂は内心でだろうなと思っていた。

「私はあやつの父親とは、私を洛陽北部都尉に起用した時から親しくしている。その司馬防から次男坊が持病持ちだと聞いた事が無い」

「左様ですか」

「これはどう考えても、何か裏があると見た方が良いであろうな」

「しかし、巷では名士が高官の招請を断る事が流行だという話を聞いております。司馬懿も名門司馬家の者ですから、その流行に乗って招請を断っただけなのでは?」

 曹昂は特に大した理由は無いだろうと思い述べるが、曹操はそれは違うとばかりに首を振った。

「あやつと司馬朗の父親である司馬防は厳格な性格でな。私の推挙を断るなど、家名に泥を塗るような事は許さん男だ。まして、流行に乗るなどという愚かな事をすれば、司馬懿を家から叩きだしてもおかしくないであろうな」

「それはまた厳しそうですね」

 曹操の話を聞いていると、会った時の雰囲気通りの人なのだと思う曹昂。

「まぁ、本当に持病持ちなのか知らんが。気になるのでな。曹昂。調べて来い」

「承知しました」

 司馬懿の話をした時点で、こうなるだろうなと思ってたので、曹昂はその話を受けた。

「仮に仮病であったのであれば、首に縄を引っ掛けてでも連れて来い。もし、本当に病気であれば、出仕はさせなくても良い」

「はっ。ところで、兄の司馬朗には何もしないのですか? 恐らく何か知っていると思いますが?」

 司馬懿の話をした時から、困った顔をしていたので曹昂は何か知っているのではと予想していた。

 曹昂は尋問でもして喋らせるかという意味を込めて訊ねたが、曹操は首を振る。

「司馬朗の内政手腕はかなり優れておる。弟が出仕しない程度で処罰を与えるなど愚かな事だ」

「失礼しました。では、司馬懿について調査を致します」

 曹昂は一礼して部屋を出て行った。

(さて、司馬懿という人物はどんな人物なのだろうか?)

 曹昂は少し会うのが楽しみだと思いながら、廊下を歩いた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 首が180度回ると噂の『奴』が来る!
[良い点] 三国志の真の勝利者、司馬懿(もうすぐ)登場!  いや本人は簒奪とかしてませんが……どんな風に描かれるのか楽しみですね
[一言] BAKAめ!この凡愚が!(黒羽扇からビーム とうとう登場(違 今回の章は忙しいw袁紹没後の袁家から栗羊羹、そして司馬一門登場。妖怪曹昂は司馬一門に対してどう丸め込んでいくのか期待
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