続々と合流
廖化の手勢と共に穣県へと向かう劉備達。
その道すがら、廖化は劉備にある事を話していた。
「実は私の仲間で杜遠という者が居たのですが、その者にも声を掛けようとしたのですが、住処にはおらず何処に行ったのやら・・・・・・」
廖化は首を振りながら残念そうに言う。
その話を聞いた劉備は何となくだが自分達が捕まりそうになった時に、蔡陽を襲ったのはその杜遠なる者達が率いていた山賊だったのではと思った。
その戦いを最後まで見ていなかったので、その山賊達がどうなったのかは分からないので劉備はその事を話さない事にした。
数日後。
劉備達はようやく穣県が見える所まで辿り着いた。
「殿。穣県に着きましたな」
「うむ・・・・・・」
簡雍がそう言うのを聞きながら、劉備は城壁に翻っている旗を見た。
旗には張の字が書かれた旗が幾つも掲げられており、風であおられている。
「此処に張飛が・・・」
「そうだと聞いております。殿は此処でお待ち下さい。私が城に赴いて、殿を出迎える様に言ってまいります」
「頼むぞ。孫乾」
孫乾が城に向かうと言うので、劉備は頷いた。
馬を走らせて、城の門前まで来る孫乾。
「開門せよ‼ 私は劉備玄徳の家臣の孫乾だ。此処に居る張飛に会わせてほしいっ」
孫乾が大声でそう告げると、城壁に居た兵が張飛の元に走った。
暫くすると、城壁に張飛が姿を見せた。
「おおっ、孫乾っ。本当に孫乾ではないか!」
「お久しぶりですな。張飛殿」
姿を見せた張飛に一礼する孫乾。
「待っていろ。今城門を開けて中に入れてやる」
「いや、それは結構。少し離れた所に殿が奥方様方と共におられるのだ。私が道案内する故、お主は出迎えに来てもらいたい」
「何っ‼ 兄者が此処に来ているのか⁉」
「うむ。早く来られよ」
孫乾が早く来るように促してきたので、張飛は慌てて出迎えの準備をし、そして数百の兵を連れて門の傍まで来た。
そして、門が開けられると、張飛は久しぶりにあった孫乾の挨拶もそこそこにして、早く劉備の下に向かおうと急かしだした。
孫乾は仕方が無いなと思いつつ、劉備の所まで案内する事にした。
そして、少しすると、張飛は劉備達の元に来た。
「お、おおおっ、あにじゃあああっ⁉」
「張飛!」
劉備の姿を見るなり、張飛は馬から転げ落ちるように降りながら、地面に下りると目には涙を浮かべながら駆け出した。
劉備も張飛の元に向かった。
二人は互いを抱き締めあうと、声を上げて喜んでいた。
「あにじゃあああっ、ぶじで、ぶじで、ほんとうによかったあああぁぁぁぁ」
「張飛、お前も無事で本当に良かったぞ・・・」
二人は久しぶりの再会を喜ぶ様に抱き合ったまま泣いていた。
少しすると、二人は泣き止んだ。
「兄者。兄者の為に城を奪ったのだ。この地を拠点にして、曹操だろうと劉表だろうと誰だろうと相手にしてやろうぞっ」
「そうか。お前の心意気には本当に感謝するぞ。張飛」
張飛が褒めて貰いたいのか、劉備の為に城を奪ったというと、劉備は大層喜んでいた。
其処で話が終わったと思ったのか、馬車から夏侯淑姫が降りて来た。
「旦那様っ」
「お、お前っ、どうして此処に?」
「旦那様に会いに劉備様と共に参りました」
「お、おお、そうか。でも良いのか? 許昌にいたら、不自由の無い生活を送る事が出来たんだぞ。そんな生活を捨てて、俺の所にまで来て?」
「一度夫婦の契りを結んだのです。何処までお供いたします」
淑姫がそう言って張飛に近付き抱き付いた。
張飛は反射的に抱き締め返した。
仲が良い二人に劉備達は微笑ましそうに見ていた。
そして、劉備達は城へと向かい、城内に入ると直ぐに大広間に向かった。
其処で再会を祝って宴が開かれるかと思われたが、そうでは無く軍議が開かれていた。
上座に座る劉備に張飛が語りだした。
「現在、この城には数ヶ月分の兵糧と騎兵歩兵合わせて四千の兵が居るぞ。近隣の村々から更に募って鍛えれば、数万にはなるだろう」
張飛が城の内情を教えると、孫乾と簡雍も兵糧の量が記されている帳簿を見ていた。
「殿。これだけの兵糧があれば暫くは安泰です」
「後は兵を募るだけですが、将はどれくらいいるのですか?」
「俺以外だと龔都という奴しかいないな」
「其奴はどういう奴なのだ?」
「元は黄巾賊の将だったが、ある戦で曹操に降伏したんだが、あまり良い扱いがされない事に嫌気がさして山賊になって、俺が此処に居るという話を聞いて味方になりに来たんだと」
「信用できるのか?」
「大丈夫だ。兄者。俺の言う事には素直に従っているし、兵糧の管理とかキッチリしてくれるから。俺が管理するよりも龔都の奴が管理した方が良い位だからな」
張飛は笑っていた。
帳簿を見た孫乾と簡雍は、それでこんなに整っているのかと納得した。
「そうか。お前がそう言うのであれば大丈夫だろう。今は兵よりも部隊を指揮できる者が一人でも欲しいから、その龔都という者にも頑張ってもらうとしよう」
話すべき事は話したので、もう宴を開いても良いかと思う劉備。
張飛の顔には、久しぶりに気持ち良く酒で酔い潰れたいと書いてあった。
劉備は宴を開こうと言おうとした所で、城壁に居る兵が駆け込んで来た。
「申し上げます。糜の旗を掲げた一団がこの城の門前まで来て、誰か偉い人に会わせろと叫んでおります」
「糜の旗? もしや」
「糜竺と糜芳の兄弟か?」
「分からんが。取り敢えず、俺が会いに行って来る」
張飛が部屋を後にした。
少しすると、張飛が糜竺と糜芳を連れて戻って来た。
「おお、殿」
「御無事で何よりです。徐州で別れてから、ずっと探しておりましたぞっ」
糜竺と糜芳の二人は劉備の側に駆け寄り劉備が無事だったことを喜んでいた。
劉備も義兄弟に当たる糜兄弟に会えて嬉しいのか、嬉しそうな顔をしていた。
糜竺と糜芳の二人を迎え、劉備達は宴を開いた。
皆、顔見知りばかりなので楽しそうに盃を交わしていた。
そんな中、劉備は一人盃を口付けながら、内心で。
(ここに関羽が居れば、もっと楽しかったであろうな・・・)
孫乾と夫人達から話を聞いた所、止むを得ず曹操に降った様なので、劉備は咎めるつもりはなかった。
(恐らく関羽は文を読んでいるだろう。早く来い、義弟よ)
劉備はそう思いつつ酒を飲んでいた。