表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

424/1003

目に物をみせてくれる

 顏良が討たれた事で逃げる顔良軍を追い駆ける曹操軍騎兵部隊。

 背を向けて居る為、その背に得物を振るうだけで容易く討ち取る事が出来た。

 ある程度追い駆けた所で騎兵部隊は追撃を中止し、呂範軍と合流する為来た道を戻って行った。

 その道すがら、袁紹軍の兵の死体を見つけると騎兵部隊の者達は死体に群がり戦利品として、鎧か武器などを奪い取って行った。

 騎兵部隊が追撃を止めた事で、何とか生き残る事が出来た顔良軍の兵達は長垣侯国を攻め込む為に城攻めの準備をしている呂威璜の下へ駆け込んだ。

「なにぃ⁉ 顏良将軍が討たれただと⁉」

「はい。敵は恐ろしい兵器を使い、我等を攻撃しました。その兵器の威力に我が軍が壊滅状態に陥りそうでしたが、将軍が懸命に指揮を取り何とか耐えていたのですが、其処に敵が放った矢が当たり討死されました。将軍が討たれた事で軍は瓦解しましたので、我等は逃げました」

 生き残った兵が呂威璜に自分が見た事を報告した。

 その報告を聞いた呂威璜は暫し考えた。

(どんな兵器なのか分からんが、顔良将軍は三千の兵を率いていたのだから、少なくとも倍の六千は居ると見た方が良いな)

 顏良軍を壊滅させたのだから、それだけの戦力差はあるだろうと見る呂威璜。

 呂威璜の予測は当たっていた。呂範軍は竜騎兵団と騎兵を合せて七千であった。

「……そんな軍が何時攻め込んで来るか分からぬ状況で城攻めなど出来る訳がないっ。此処は撤退しかないなっ」

 呂威璜はそう決めると直ぐに城攻めを中止し、黎陽へ撤退する事に決めた。

 陣地を片付ける手間すら惜しみ、呂威璜軍は撤退を始めた。

 呂威璜軍が撤退するのを城壁から見た衛臻は勝鬨を挙げた。

 暫くすると、呂範軍がやって来たが、既に呂威璜軍が撤退したと衛臻から聞くと呂範は援軍が来るまで城に留まる事に決めた。


 呂範軍が城に入り数日程すると、許昌より出陣した曹操軍が城まで来た。

 呂範は城の外に出て曹操を出迎え今までの状況を掻い摘んで説明した。

 話を聞き終えた曹操は呂範の戦功を称えた。

 そして、曹操は北上し濮陽城に入り河を挟んで袁紹軍の動向を窺う事にした。

 数日後。程昱が近隣から集めた兵数千を率いて濮陽に到着した。

 程昱が来たと聞くなり曹操は直ぐに通すように命じた。

 兵に案内された程昱は部屋に通されるなり、曹操に一礼する。

「程仲徳。ただいま参りました」

「おお、よく来た。お主の機転で兵を集める事に集中できたぞ。感謝する」

「お褒めの言葉、恐縮にございます」

 曹操が褒めると程昱は深く頭を下げた。

「そうだ。会った時に聞こうと思っていた。何故顔良はお主が守っていた城を落とさずに通過したのだ?」

 曹操は顔良が攻撃もしないで通過したという報告を聞いてから気になっていた事を訊ねた。

 頭を上げた程昱は大した理由ではないと言いたげな笑みを浮かべた。

「顔良は袁紹配下の中でも勇将と謳われる者でした。勇将である以上己の武勇に自信があるでしょう。その様な者が数百の兵しか居ない城を攻め落とした所で、何の自慢にもならないと思いまして、殿から援軍を送るという文が届いても援軍不要という文を送ったのです」

「成程。もし、増援の兵を送れば黙って通過しなかったという事か?」

「その通りにございます」

 程昱は正解とばかりに頷くと曹操は笑った。

「まぁ、その武勇に自信があったが故に深く切り込み過ぎて、こちらの計略に嵌まったのだから所詮は匹夫か」

「でしょうな。そう言えば報告で聞いたのですが、子脩様の家臣の呂範が討ち取ったとか」

「そうだ。向こうからしたら、先鋒の部将を討ち取れば良いと思いおびき寄せたつもりであったが、まさか顔良を討ち取れると思いもしなかったと本人も驚いていたわ」

 兵に比べると立派な鎧を着ていたので討ち取れば、功績になると思ったがそれが顔良とは流石の呂範も予想できなかった。

「まぁ兎も角、我等はこの地で袁紹の動きを窺う。お主も知恵を貸してくれ」

「承知しました」

 

 曹操が濮陽の地に布陣し一か月が経った。

 十月に入り、このままいけば戦は冬になることだろうと予想できた。

 河を挟んで布陣している袁紹軍は一向に動く気配を見せなかった。

 密偵からの報告では袁紹は鄴に居る事が確認されていた。

 兵を募っているのかと思われたが、その様子も無かった。

 詳しく調べた所、どうも四男の袁買が病に倒れて危篤であった。

 末の子供という事で可愛がっていた息子が危篤だと知り、袁紹は戦をするよりも息子の治療に専念しだした。

 その報告を聞いた曹操は呆れ半分蔑み半分という顔をしていた。

「愚かな。戦をすると決めたと言うのに、息子が病に罹っただけで戦う気を無くすとは」

 これならば、袁紹が動く事は無いなと思う曹操。

 次に黎陽はどうなっているのか調べた。

「なに、審配と逢紀が大将になっているが、二人は仲が悪く指揮系統が乱れていたが、そんな所で逢紀が病に倒れて審配が統括する事となったが、日頃から仲が悪い沮授が命令を聞かず、その沮授と仲が良い田豊も命に従わないので軍が機能していないだと?」

「はっ。その為、袁紹軍の士気は目に見えて落ちていました」

「そうか。報告ご苦労」

 曹操は報告をした兵を労い下がらせると、側にいる程昱に話し掛けた。

「袁紹は子供の病気の治療で鄴に居り、黎陽に居る軍は大将と部下の仲が悪く軍として機能していないか」

 其処まで言って曹操はニヤリと笑った。

「丞相。いかに軍として機能をしていなくても、攻める為には河を渡る必要があります。流石に河を渡れば、敵も攻撃してくるでしょう」

「ふふふ、心配するな。私に考えがある。誰かいるかっ」

「此処に」

 曹操が声を上げると、部屋の外に居た護衛の兵が部屋に入り跪いた。

「今すぐに甘寧を呼んで来い。重要な任務を言い渡す」

「承知しました」

 兵が下がるのを見送ると、曹操は喉の奥で笑っていた。

 もう策が成功したと言いたげであった。

本作では袁買は袁紹の四男という設定にします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ