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考え方の相違

 袁紹軍十万が黎陽に到達した。

 これから南下するという所で首脳部が揉めていた。

「河を渡り、兗州の郡県を攻撃すべきだ!」

「いや、此処は守りを固め相手の動きを見るべきだ!」

 袁紹軍十万の大将である審配と逢紀の意見が反対であった。

「このまま、この地に留まれば曹操が大軍を率いてくる。その前に相手の領地に攻め込み橋頭保を確保すべきだ!」

 審配は曹操軍が来る前に河を渡り、何処かの県を占領し其処を橋頭保にするべきだと言う。

「いや、今は九月だ。季節は冬に近付いている。県を占領した所で我等が撤退すれば敵の手に落ちるだろう。それならば、此処は春になってから侵攻しても良いであろう」

 逢紀は冬が近付いて来るので、春を待つべきだと言う。

「曹操と戦う事を決めたと言うのに、一戦もしないで退くなど、何の為に出兵したのだ!」

「冬になれば、寒さで戦どころではない。もっと方針を考えよ!」

 互いの意見を言い合いながら睨む二人。

 若い頃より忠烈なる慷慨の士との評判高く、犯し難い節義を持っていた審配。

 聡明で計略に長じ、許攸と共に袁紹の旗揚げを助けてきた逢紀。

 日頃から仲が悪く、考え方が違う為に意見がぶつかっていた。

「この愚か者が⁉ 先の事も考えない独りよがりの事しか考えられんのか!」

「貴様こそ、撤退する可能性も考えて行動すべきだろう。自分の考えが正しいと思うな!」

 お互い歩み寄る気配を見せない二人。

 余談だが、袁紹の下に一時期いた荀彧は審配と逢紀の事をこう評していた。

『審配は独り善がりで無策。逢紀は、向こう見ずで自分のことしか考えない』

 二人の意見を聞いていると荀彧の批評は的を射ていると言えた。

 大将が揉めている場合、参軍の誰かが止めるべきなのだが。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 参軍の田豊と許攸と沮授は互いの目を見ながら、お前が諫めろと目で言っていた。

 田豊と沮授は冀州出身という事と日頃から意見が合い仲が良い。

 反面、許攸と此処には居ない郭図とは意見が合わず仲が悪かった。

 その為か三人は面倒な事は相手にさせようと牽制していた。

 大将と参軍が仲違いしている時点で、最早軍としての機能を果たしているとは言い難かった。

 意見が合わない軍議を何日も行っていた。

 そんなある日。逢紀が病に倒れた。

 病自体は重くはないが、暫くは軍務を行う事は出来なかった。

 それにより、審配が実質的な大将となった。

 大将となった審配は直ぐに先鋒の顔良を呼んで、一万の兵を率いて兗州に攻め込むように命じた。

「出来るだけ深く切り込むのだ。そして、これ以上の侵攻が無理だと思ったら近くの県を攻めて占領するのだ。私が軍を率いるまで守れ」

「はっ。承知しました!」

 審配の命を聞いた顔良は一礼するなり、その命令に従うべくその場を離れた。

 顏良を見送ると、沮授が審配に意見した。

「顔良は勇猛ですが、思慮が偏狭なので誰か智謀に長けた者を補佐にすべきだと思います」

「何を言う! 顏良の勇猛を持ってすれば曹操軍など簡単に蹴散らしてくれるわ! 貴様は意見を尋ねられた時だけ口を開けば良いのだ!」

 いらざる口を叩くなと暗に言われた沮授は顔を顰めた。

 それ以来、沮授は何も言わなくなった。

 仲が良い田豊もそれに倣い意見を述べる事をしなかった。

 

 審配に命じられ、河を渡り南下する顔良軍。

 河を渡り終えると、東郡の県を攻撃せず更に南下した。

『出来るだけ深く切り込むのだ。そして、これ以上の侵攻が無理だと思ったら近くの県を攻めて占領するのだ。私が軍を率いるまで守れ』

 と命じられたので、顔良は曹操軍がまだ来ていないのでもっと斬り込む事に決めた。

 そして、南下していくと済陰郡に入った。

 郡に入り進んでいくと鄄城県が見える所まで来た。

(そろそろ、何処かの県を攻撃して占領すべきか)

 そう思っていた所に県を見つけた顔良。

 此処を攻め落とし橋頭保にすべきだなと思いつつ、間者を送り城にどれだけの兵が居るか調べた。

 暫くすると、間者が戻って来た。

「申し上げます。あの城には七百程度の兵しかおりません。それと城を守っているのは程昱だそうです」

「ふむ。程昱か。確か、曹操の謀臣の一人だったな」

 そんな者が城を守っているのであれば攻撃し攻め落とすべきなのかも知れないが、守っている兵が七百と聞いて戦意が上がらなかった。

(一万の兵であれば容易に落ちるだろうが、それだけの兵しか居ないのでは、城も多くの兵が入れるか分からんな)

 兵が少ないので其処まで大きくない城なのではと思う顔良。

 仮に攻め落としても、橋頭保以前に城に詰める事が出来るのか分からなかった。

「ふん。如何に敵の重臣が守っている城であろうと、七百程度しか居ない城など何時でも落とせる。別の所に向かうぞ」

 顏良は落としても意味が無いと思い陳留郡へと向かう事にした。

 その先に何が待っているのか知らずに。

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