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難題を押し付けてきた

 彭城内に居た軍勢を編制し終え、下邳へ向かう為に兵糧の準備などを行っていると、城壁に居る兵士が『曹』の字の旗を掲げた軍勢が近付いて来ると曹昂に報告に来た。

「ふむ。曹の字の旗の他に旗はあったか?」

「はっ。劉、王の他に張の字の旗が掲げられていました」

 兵の報告を聞いた曹昂は誰が来たのか何となく察した。

(劉と王の旗という事は、劉岱と王忠かな? 張の方は誰だろう?)

 史実では劉備と戦ったのは、劉岱と王忠の二人であったので分かったが、張の方は分からなかった曹昂。

 とりあえず、会えば分かると思い、その軍勢を指揮する者達が来たら大広間に通すように兵に命じた。

 兵が一礼し離れると、曹昂は他の者を呼んで部将達を大広間に集まるように命じた。


 少しすると、朱霊達と張燕を除いた部将達が集まった大広間に三名の武将が姿を見せた。

 一人は四十代ぐらいで口の周りに整った髭を生やし、人が良さそうな顔で精悍と言うよりも少々腹に肉が付いた男性であった。

 もう一人も同じ位の年齢でぼさぼさした口髭を生やし卑屈そうな顔をした細身の男性であった。

 最後の一人は良く知っている者であった。

「張遼殿。まさか、貴殿が援軍にこられるとは」

 曹昂は張遼が援軍として来た事が意外そうな顔をしていた。

「はっ。丞相の命により参りました。騎兵歩兵合わせて千程ですが、お役に立てると思います」

 張遼は一礼し連れて来た兵数を教えた。

 曹昂は兵の数が少ないと思うよりも、張遼の後ろに控えている者達が気になっていた。

 曹昂の視線を察した張遼は肩越しで後ろに居る二人を見た。

「後ろの二人は右は劉岱。左は王忠にございます」

「劉岱。字を公山にございます。若君にお会いできてうれしく思います」

 四十代の男性が曹昂に一礼した。

 名乗りを上げた事で、四十代の方が劉岱と分かり曹昂は頷いた。

「おお、貴方が。母の親戚と聞いている。今まで会う事が無かったが、こうして会えるとは嬉しく思います」

「はっ。私の様な者にその様なお言葉を掛けて下さり嬉しく思います」

 親戚に会えたので嬉しいなと思いつつ述べる曹昂。

 劉岱も今をときめく曹昂に親戚だと思ってもらえる事が嬉しいのか、顔を綻ばせていた。

「……それで、援軍を要請していないのに父上は何故、援軍を送って来たのだ?」

「……それについてはこの文に詳しく書かれております」

 張遼は懐に手を入れると、其処から一枚の文を出した。

 その文を両手で持ち前に突き出すと、曹昂は趙雲を見ながら顎でしゃくる。

 趙雲は頷いて、張遼の文を受け取る。

 その受け取った文を持った趙雲は曹昂の下まで来ると、曹昂に文を渡した。

 渡された文を広げ、中を改める曹昂。

「…………なにっ、どんな条件でも良いから関羽を生け捕りにして許昌まで連れて来いだと⁉」

 文を一読した曹昂は読み終えるなり、大きな声を上げて驚いていた。

 曹昂は彭城に向かう前に、許昌へ徐州の攻略状況を人を遣って報告していた。

 その為、劉備を取り逃がし行方知れずという事と関羽が下邳に籠もっているという事を、曹操は知っていた。

「何故、父上は関羽を許昌に連れて行くように命じたのだ?」

「丞相は常々関羽殿を家臣に迎えたいと申しておりました。劉備が行方知れずになったので、これを機に家臣に迎えるつもりの様です」

「馬鹿なっ。関羽と劉備との絆は鉄の様に固いのだぞ。家臣になる筈が無いだろうに」

「そう簡単に家臣にならないからこそ、家臣に欲しいと丞相は思っているのでしょう」

 曹昂は無駄な事だと言うが、張遼は曹操の心情を考えて述べた。

(人材を集めるのが好きな人だからな~)

 人妻好きと同じ位に困った悪癖だなと思う曹昂。

「……家臣に迎えたいと言うのは分かったが、どうしろというのだ。関羽は下邳城内に居ると言うのに」

「其処は私にお任せを。関羽殿を我が軍の軍門に降る様に致します」

 曹昂が何か手段があるのかというと、張遼が胸を叩いた。

 それを聞いて皆は不審そうであった。

「お前に出来るのか? 私が徐州に居た時、お前と関羽が親しくしていたとは聞いていないが?」

 嘗ての主であった呂布が訝し気に言うと、張遼は違うとばかりに首を振る。

「いえ、呂布殿が徐州に来たばかりの時に、私は関羽殿と話す事がありました。馬が合いまして時折酒を酌み交わしていました。呂布殿が小沛に赴くまでの付き合いでしたので、呂布殿が知らぬも仕方がない事です」

「……そんな短い付き合いで説得が出来ると?」

 劉巴はとても疑わしいと言いたげな目で張遼に訊ねた。

「はい。関羽殿とは肝胆相照らす仲にございます。如何に短い付き合いであろうとも、互いに心の底まで打ち明け申しました。ですので、必ずや説得致します」

 張遼は自信満々に言うので、曹昂は感心していた。

「ほぅ、其処まで言えるとは余程自信あるようだな。では、関羽の説得を任せても良いか?」

「はっ。お任せを」

「ならば、張遼が説得できる様にすれば良いか。劉巴」

「はっ」

「全軍に出陣の準備をさせよ。下邳を包囲する張燕と合流した後に、下邳を包囲し威嚇する。然る後に張遼を送り、関羽へ降る様に説得させるとしよう」

「張遼殿を城へですか。それは流石に危険では? 此処は関羽を城から誘き出してから逃げられない様に包囲した後に、張遼殿に説得して貰うのが良いと思います」

 劉巴が意見を述べると、曹昂は首を振る。

「城が包囲されているとは言え、劉備が行方知れずという事が知られているかもしれない。そうなれば、打って出てくるか分からない。だから、城内で説得してもらうのだ」

 別に城から誘き出さなくても、張遼に説得して貰えればいいだろうと思う曹昂。

「成程。では、その様に致します」

 劉巴は一礼し出陣の準備に取り掛かった。

 他の部将達も一礼し部屋を後にし、出陣の準備に取り掛かった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自重しない親父に振り回される息子、かわいそうですw
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