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412/1005

此処は穏便に

 曹昂が黙り込んでいる所為か、大広間には重苦しい空気が漂っていた。

「…………では、趙雲の処罰を下す」

 黙っていた曹昂がそう言うと、誰ともなく唾を飲み込んでいた。

 どんな処罰を下すのか分からないからだ。

「棒叩き三十回とする」

 曹昂が下した処罰を聞いて、皆は思った。

(((かなり、甘い処分だな)))

 敵を逃がした処分にしてはかなり甘いと言えた。

 皆の中では、棒叩き五十回以上かもしくは斬首にするだろうと思っていた。

 曹昂が下した処罰を聞いて、劉巴などは不満そうな顔をしていた。

「誰か、趙雲を外に連れ出し棒叩きにせよ」

「はっ」

 誰か何か言う前に、曹昂は兵に命じた。

 兵はその命に従い趙雲を外に連れ出そうとした。

「……寛大な温情に感謝します」

 趙雲は深く頭を下げた後、兵の後に付いて行った。

 趙雲達が部屋を出て行った後、曹昂は劉巴に尋ねた。

「兵の再編成は後どのくらいかかる?」

「どんなに早くしても一日掛かります」

「一日か……。仕方がない。朱霊、路招」

「「はっ」」

 曹昂が声を掛けると朱霊達は家臣の列から前に出た。

「両将軍は五千の騎兵を連れて、劉備を追撃せよ‼」

「はっ。承知しました」

「必ずや劉備とその一党の首を取って参ります!」

 朱霊達は命令に承諾すると、出立の準備の為にその場を離れた。

 二人が出て行くと、曹昂は残った者達に告げる。

「方針を変更する。兵の再編成が終わり次第、彭城に向かう。彭城を陥落させた後に下邳を落とす」

 方針を変えると聞いて呂布が訊ねた。

「下邳は張燕が包囲しているとは言え、相手は関羽。何時まで保つか分からぬぞ。此処はまずは下邳を落とした後で彭城へ向かっても問題無いと思われるが?」

 張燕と関羽の二人の実力を知っている呂布の見立てでは、張燕も名将ではあるのだが関羽はその張燕に勝る名将と見ていた。

 なので、何時までも包囲を維持できるか分からないと思い述べた。

「いや、彭城には二万の兵が居る。下邳攻略中に背後を取られる方がまずい。劉備が居た時は、劉備を使って開城させる事が出来たが居ない以上はまずは彭城を落とすしかない。張燕には悪いがもう少し包囲を続けて欲しい」

「承知しました」

 曹昂の説明を聞いて、呂布も納得した。

 これで、話は終わったので呂布達は部屋を後にした。

 だが、高順だけ部屋に残っていた。

「……何か言いたい事があるのか? 高順」

「直言のお許しを」

 曹昂は何か話があるのだろうと思い訊ねると、話す前に高順は一言断りを入れた。

「構わない。言いたい事があるのなら言うと言い」

「……趙雲の処罰、少々甘いかと」

 部屋に残ってまで言いたい事はそれかと思い曹昂は尋ねてみた。

「では、処刑した方が良いと思うのかな?」

 曹昂がそう訊ねると、高順は首を振る。

「……今は戦の最中。罪を犯したとは言え、将を処刑しては兵の士気に関わります。ですので棒叩きは妥当。しかし回数が少ないかと」

「五十回ぐらいしろと? 幾ら武将でもそれだけ叩かれたら、戦に出るのは難しいだろう」

「ですが、他の者達に少々甘いと思われます。此処は棒叩きの後、兵卒に降格すると通達するのが良いと思います」

「……そこまでしたら、誰も文句は言わないか?」

「はい」

 高順の進言に曹昂は黙った。

「分かった。趙雲にそう伝える」

「お聞き届け下さり感謝します」

 高順はそう頭を下げると、曹昂は手を振る。

「いや、そう進言してくれて嬉しく思う。これから、至らないところがあったら言って欲しい」

「はっ」

 高順はそう返事をするなり、一礼し部屋を出て行った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 高順は武勇や忠誠心だけではなく諫言も行えるってところが本当にありがたいですな
[一言] 作者的にも難しいところなんだとうなぁと勝手に思ってます。 劉備達を処刑するほうがスッキリするし厄介ごとは片付くけど、三国志後半の流れ的にも劉備は重要な役割をもつ人物。 それを今の時点で舞台か…
[一言] 殺さなかったかぁ。
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