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思っていたよりも、効果が大きかった

 曹昂が襄賁県に駐屯してから十数日が経った。

 張燕が広陵郡内の県を順調に支配下に治めているという報告を他の家臣と共に聞く曹昂。

 報告内容が満足な結果を出しているので、曹昂は顔を綻ばせていた。

 その曹昂の下に驚くべき報告が齎された。

「なんとっ、彭城で反乱が起きるとは……」

「かなりの兵が反乱に参加し討たれたようですが、多くの兵が逃亡しております」

 兵の報告を曹昂は内心で驚いていた。

(もう効果が出たのか? これから徐々に兵の士気を落としていく予定だったのに)

 曹昂としては、いずれは反乱又は兵が逃亡するだろうと思い矢文を放つ様に命じた。

 その後は、劉備軍に潜入した密偵に命じて軍内に兵の士気を下げる噂を流して厭戦気分に陥らせて、劉備達首脳部と兵隊の間に考え方の違いの溝を作り反乱を誘発させるつもりであった。

 まさか、矢文を送ったその日の夜に反乱が起こるとは思わなかった。

「多くの死傷者を出し、逃亡兵も出した事で劉備軍は五万となりました。また、関羽に一万の兵を与えて下邳国下邳県に駐屯させたそうです」

「へぇ……それは良い事を聞いた」

 報告を聞いた曹昂は良い事を聞いたとばかりに笑みを浮かべた。

「その情報は確かか?」

「はっ。間違いございません。関羽が下邳国に向かったのは確認しました。尚、劉備は四万の兵を二つに分けて、陳登に二万の兵と共に彭城に、劉備は張飛と共に呂県に二万の兵で駐屯いたしました」

「ふむ。どちらかの城が攻撃された場合、もう一つの城から兵を出して攻撃する。戦術としては間違っていませんな」

 劉巴は劉備の行動を聞くなり、軍を分けた理由を看破した。

 そして、劉備の行動が戦術的には間違っていないと称えた。

「確かに間違ってはいないけど、戦略的には駄目なんだよね」

 曹昂は残念そうに首を振った。

 それを聞いた趙雲が尋ねて来た。

「何故でしょうか? 先程劉巴殿が言っていた様に、劉備殿の判断は間違っていないと思いますが?」

「一見間違ってはいない様に見えるけど、戦力の分散という愚を犯している。もし、私が劉備と同じ立場ならば、下邳国を切り捨てて彭城国の守りを固めるね。そうすれば残りの兵で十分に守る事が出来る。そうして守っている間に何処かの諸侯と手を結び、攻撃して貰うようにするね」

 五万の兵もあれば、一郡を守るには十分と言えた。

 守りを固めている間に、同盟を結んだ諸侯が援軍を送る又は曹操の領地を攻撃すれば、曹昂の軍もそちらに意識を向けなればならなくなる。

 それで撤退する事になれば、追撃して奪われた領地を奪還する事が出来る。

「成程。ちなみにお尋ねしますが、殿。劉備が同盟を結ぶ諸侯とは誰ですか?」

「袁紹しかいないよ」

 趙雲が尋ねて来たので、曹昂は即答した。

「現状、父上の領地に接しており、且つ多くの領土を持ち対抗できる勢力を持ってるのは、袁紹しか居ない」

 曹昂は断言した。

「しかし、諸侯は他にも居るのでは?」

 刑螂が疑問を呈すと、曹昂は指折りしながら述べた。

「荊州の劉表は南陽郡の張繍と南部四郡を従えている張羨に挟まれた状態では軍を出す事は出来ない。張繍もこちらの領地に攻め込みたくても、背後に劉表が居るから無理。揚州の孫策も劉備を助けて兵を出すよりも、袁術の支配下に入っていた土地を領地にする方が良い。涼州の馬騰に文を送ったとしても、許昌に辿り着くまでに時間が掛る。だが、袁紹は目下幽州を手に入れて、周りに敵対する勢力は父上しか居ない。だから、劉備が同盟を結ぶとしたら袁紹しかいないのさ」

 曹昂の説明を聞いて、家臣達は納得した。

「さて、諸将に申し渡す。これより全軍を持って彭城国に向かい、劉備が籠もる呂県へと向かい、劉備を打ち倒すぞ!」

「「「はっ」」」

「高順」

「はっ」

「其方は我が軍と途中まで共に行軍する。そして、途中から一万の兵と共に彭城に向かい、陳登の軍を城から出さない様に包囲せよ」

「攻撃は?」

「状況に応じて仕掛けても良いが。基本的に向こうがしなかったら、こちらから仕掛けるな」

「はっ」

「劉巴は『免死』の旗を掲げ、鳴り物の用意をする様に」

「何故、それらの準備をするのです?」

「劉備の下から逃亡した兵達が彷徨っているかも知れない。その兵達を我が軍に加える為だ。鳴り物の音を聞けば、逃亡した兵達の耳にも届く筈だからだ」

「分かりました。直ちに準備します」

 劉巴は一礼し準備に取り掛かり、他の家臣達もその場を後にした。


 翌日。

 曹昂軍三万は襄賁県を出立し、南下した。

 途中、銅鑼と言った鳴り物を鳴らし続けていた。

 その音を聞いて劉備の下から脱走した兵達が続々と集って来た。

 兵達も劉備の下から脱走したのは良い物の、徐州の地理については無知であった。 

 何処をどう行けば兗州又は豫州に着けるのか分からず困っている所に、銅鑼などの音が聞こえて来て、その音に釣られる様に兵達は姿を見せた。

 最初、軍を見た時は見つかれば捕虜又は処刑されると思ったが、『免死』の旗を掲げているので安堵して軍に合流していった。

 そうして五千の兵が集まった。

 これだけあれば、彭城を包囲するのは十分と判断する曹昂。

 そして、道の途中で高順に一万五千の兵を与えて彭城へと向かわせて、曹昂は二万の兵と共に呂県へと進軍した。

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