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謎であった事が分かった

本作に出て来る尺は古代中国の漢代の尺で計算しています。

 一尺約23センチ。

 場所を移し、屋敷の中にある部屋。

 曹昂と丁兄妹は茶会をしていた。

「しかし、昂は大きくなったな。少し前までは、これぐらいではなかったか?」

 丁沖は手で少し大きな犬ぐらいの大きさを示した。

「まぁ、兄上。それではあまりに小さすぎますよ」

 兄である丁沖が示した大きさがあまりに小さいので笑いながら訂正する丁薔。

「そうだったか。はっはは」

 丁沖は笑いだした。

 曹昂は茶と共に供されている菓子を食べていた。

 その菓子を食べながら改めて義理の伯父である丁沖を見た。

 髭を生やしていない上に、端正な顔立ちの上に日頃から日に当たっていない為か白い顔をしていた。髪を纏めていないで後ろに流していた。

 細身で身長は七尺七寸(約百七十七センチ)はある。

 男物の服を纏っているが、女装すれば女性としても見えるのではというぐらいに細かった。

(この人に初めて会った時に、前々から不思議に思っていた事を理解できたな)

 前世の記憶を持っている曹昂には前々から謎だと思っていた事があった。

 それは曹昂の育ての母である丁薔の扱いであった。

 正室で曹昂達を生んだ劉夫人の後に、側室の丁薔が正室になるのは普通なので問題なかった。

 だが、曹昂が死んだ後の扱いが不思議だった。

 史実では曹昂が死んだ後離縁した。

 暫くして曹操自ずから丁薔の家まで行き、謝して宥め共に帰るように促したというが、此処が不思議であった。

 この時代、離縁した妻にそんな事をする人など居ない。

 更に加えて言えば、この時丁薔は機織りの仕事をしていて、曹操が何度話しかけても返事すらしなかったが曹操は怒らなかった。

 曹操の母が丁薔と同じ丁氏だったので、母親の親戚である事を考慮して怒らなかったのかとも思われた。

 更に不思議な事に、丁薔が死んだ後、現在側室である卞夫人が丁薔の遺骸埋葬を願い出て許可した事だ。

 離縁した妻の遺骸を埋葬するなど、この時代ではまずしない。

 それらの事を考えて推測したが答えは出なかったが、丁沖と会った事で全ての謎が解けた。

 曹昂と丁沖が話していて分かったが、丁薔は曹操の母親と同じ丁氏で丁沖の妹であると分かったからだ。

 だから、丁薔が返事しなくても愛している事と親友の妹と言う事で許し、死んだ後も遺骸埋葬を許可したのだと。

 こういう昔の事が分かると、逆行転生して良かったと思う曹昂。

「あっ、口が汚れているわよ。昂」

 丁薔はそう言って懐から手帕(ハンカチ)を出して口を拭う。

「ふふふ、妹よ。少し過保護じゃないか?」

「そんな事はありません。ちゃんと勉強も厳しく教えています。この子は曹家の次期当主なのですから」

「まぁ、吉利が何も言わないのであれば、私は何も言う事は無いな」

 吉利とは曹操の二つある幼名の一つだ。もう一つは阿瞞という。

 幼馴染であるからか、幼名を言う事が出来る。

 丁沖は茶を啜りながら、ふと思い出したのか丁薔に訊ねる。

「そう言えば吉利は元気にしているのか? 文の一つぐらいは届くのであろう」

「・・・・・ええ、まぁ」

 曹操の事を訊ねられて、不満そうな顔をする丁薔。

 その顔を見て、丁沖はどうしてそんな顔をするのか分かり苦笑した。

「何だ。まだ連れて行ってもらえなかった事を根に持っているのか?」

「別に、そんな事は」

 と言いながら丁薔は顔を背けた。

 そんな態度を取ったら明らかに根に持っていると言っているようなものだ。

 それが分かっているのか丁沖は揶揄う様に話しかける。

「仕方が無いだろう。丁度、曹昂達が産まれてまだ間もない時であったのだから」

「……意地が悪いですよ。兄上」

「何の事だ?」

 丁薔が言わんとしている事を分かっていて、敢えて分からないフリをする丁沖。

「……」

 丁薔が無言で睨むと、その迫力に負けたのか揶揄い過ぎたと思ったのか丁沖は謝罪した。

「すまん。揶揄い過ぎた。それに、私はお前が吉利の下に嫁ぐ前に言っただろう。『あれは、稀代の女誑しだ。故に女を誑し込むのが上手い。だから、妾を沢山作るぞ』と」

「それに関しては兄上の言う通りでしたね」

「ふふ、そんなにお前の代わりに妾の一人を連れて行ったのが気に入らないか?」

「当然です。しかも、その妾は元は歌妓だったとか。そんな何処の家の者か分からない者を妾になんてっ」

 話していて思い出して怒り出す丁薔。

 ちなみに、その話に出た妾とは卞氏の事だ。

「怒るな怒るな。吉利の女好きは不治の病だから諦めろ」

「・・・・・・ふん」

 宥める丁沖。

 丁薔は頬を膨らませて顔を背けた。


 少しすると、丁沖は帰る時間になったので、茶会はお開きとなった。

 門の外まで見送る丁薔と曹昂。

 丁沖は馬に跨り「ではな、又来る」と言って離れて行った。

 曹昂は丁沖の背を見送りながら丁薔に訊ねた。

「母上。聞いても良いですか?」

「何かしら?」

「どうして、伯父上は父上と同じように何処かの職に就かないのですか?」

 そう尋ねると丁薔は少し言い淀んだ後、口を開いた。

「兄上は孝廉に推挙されるぐらいに才能はあるのだけど、その才能に比例して身体は強くないの。だから、病弱を理由に仕官しないのよ」

「そうなんだ」

 確かに身体は細かったが、そんなに病弱には見えないけどなと思う曹昂。

「さぁ、そろそろ屋敷に戻りましょう」

「はい。母上」

 丁薔に促されて曹昂は屋敷へと戻った。

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