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無駄に驚かせたな

 呂布軍が下邳城に籠もる様になり、かなりの時が経った。

 後数日で年が明けるという程の長期の対陣であった。

 曹操軍の兵士達は長期の布陣となり、兵達の士気が落ちていた。

 曹操軍の陣地の天幕の一つ。

 天幕の中には、曹操が椅子に座りながら部下からの報告を聞いていた。

「申し上げます。兵達の士気が落ちております」

「むぅ、曹昂が作った氷の城のお蔭で凍死者が出ないが、長く布陣した事で兵の士気が落ちているか」

 城は未だに落ちる気配は無いので曹操はどうしたものかと考えているところに、兵が駆け込んで来た。

「許昌より荀彧様の命で参りました!」

「許昌から、何があったか?」

「はっ。河内郡の張楊が呂布の危機を知り、兵を動かしました!」

「何とっ⁉」

 報告した兵は告げると同時に、懐から文を出して護衛の典韋に渡した。

 文を渡された典韋は文に何も無い事を確認した後、曹操に手渡した。

 曹操はその文を広げると、文の内容に目を通した。

「っち、最近何かしたという話を聞いた事が無かったから、すっかり忘れておったわ。さて、どうしたものか」

 曹操はどうするか考えていると、荀攸が述べた。

「放っておけば、我等の領土が侵略されます。軍の一部を割いて撃退に当てるべきだと思います」

「うむ。そうだな。さて、誰を大将にするか」

 曹操は考えていたら、天幕の中に居た史渙が前に出た。

「殿。此処は私にお任せを」

「おお、史渙。行ってくれるか?」

「はっ」

「良し。では、副将に曹仁と徐晃を付ける。一軍を率いて、張楊を討ち取って参れ!」

「はっ」

 曹操の命令に従い、史渙は副将に曹仁と徐晃と二万の兵と共に河内郡へと向かわせた。

 一応、用心として後詰に于禁と楽進、参謀として董昭を付けて一万の兵を与え後を追わせた。

 

 史渙達が進発してから数十日が経った。

 年が明け、建安三年(西暦198年)となった。

 年が明けても曹操は城の囲みを解く事はしなかった。

 兵達は年が明けての対陣に戦意が落ちていたので、曹操はどうしたものかと頭を捻っていた。

 其処に驚くべき報告が齎された。

「なにっ、兵を出そうとした張楊を部下の楊醜が謀反を起こし殺して、配下の兵達を取り込んで私に降ろうとしたが、それに反発した眭固という者が楊醜を殺害して主君の仇を討っただとっ⁉」

「はっ。その為、勢力の立て直しをしているところを史渙様が後詰の軍と共に、眭固が拠点にしている河内郡野王県に進撃しました。進撃して来た史渙軍を見た眭固は野戦を仕掛けて、両軍はぶつかりましたが、まだ軍を完全に掌握しきれなかった眭固は曹仁殿に斬られました」

「ふん。人騒がせな事だ」

 一転したと思ったら、二転三転したので曹操は溜め息をついた。

「それで、眭固が率いていた軍はどうした?」

「現在、参謀として付いた董昭殿が一時期張楊に仕えていた縁を使い、我が軍に取り込んでいる最中だそうです」

「そうか。河内郡の事は鍾繇に任せれば良いか。史渙には残軍を全て我が軍に組み込んだ後、徐州へ戻る様に伝えよ」

「承知しました」

 曹操の命を聞いた兵は天幕から出て行った。

「さて、危機は去ったが。これからどうするべきか」

 城を包囲してかなりの日数が経っていると言うに、未だに落ちる気配を見せない下邳城。

 このまま長く対陣してもこちらの士気が落ちるだけではと思う曹操。

「荀攸。郭嘉よ。何か策は無いか?」

 自分が考えても何の策も出ないので、曹操は軍師として連れて来た二人に訊ねた。

「殿。私に策があります」

 郭嘉が前に出て来た。

「ほぅ、何か策があるのか?」

「はい。この城は泗水と沂水に挟まれているので攻め辛くしているのです。其処でこの二つの河の流れを変えて、敵の城を水攻めにするのです」

「水攻めか。悪くないな。それでいこう」

 曹操は郭嘉の策を直ぐに実行に移した。


 曹操が水攻めの策を実行しようとしている頃。

 曹昂の下にも張楊の一件が耳に届いていた。

「・・・・・・まぁ、結果良ければ良しだな」

 報告を聞いた曹昂は頷いていた。

 父曹操にも内緒で密かに張楊の部下の楊醜を買収していた。

 張楊は呂布と親しくしていて兵を挙げる可能性があったので、兵を挙げた場合、反乱を起こし討ち取らせるつもりであった。

 父曹操に秘密にしていたのは、呂布の事に専念して貰う為であった。

 当初の予定ではそのまま曹操軍に降らせるつもりだったが、そこを同僚の眭固が反発して楊醜を殺害したというのは想定外であった。

 尤も、反乱に次ぐ反乱により兵力は落ちていた為、史渙軍により難なく撃破されたのは嬉しい誤算であった。

 なので、曹昂はこの結果で良しと思う事にした。

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