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其処まで焦る事ではない

 曹操軍の陣地にある天幕。


 武将用なのか兵士達が比べている物に比べると広い作りとなっていた。

 絨毯が敷かれた天幕の中央に曹昂は椅子に座りながら卓の中に入っていた。

 その卓には毛布が掛けられていた

「ふぅ、冬になると思ったから、これを用意して良かった」

「そうですね」

 曹昂は対面の椅子に座っている劉巴に話し掛けていた。

「良いですね。この暖卓と言うのは。この中から出て行く気を無くします。其処に」

 劉巴は持って来た酒醸を盃に注いで喉に流し込んだ。

「はぁ~、これは最高ですな。暖卓で足元は温まり、この酒醸のお蔭で身体も温まるのですから」

「確かにね」

 曹昂は同意しつつ、酒醸を喉に流し込んでいた。

 もう、夜と言っても良い時間なのだが、何かあるかも知れないと思い酒精がある一夜酒ではなく酒醸を飲んでいた。

「しかし、良いですな。卓の真ん中に火が付いた炭を入れた容器を設置し、その卓に毛布を掛ける事で温かい風を逃がさない様にするとは」

「試作品として作ったけど、問題無いね」

 職人に簡単な設計図を送ったが、思っていたよりも出来が良いので曹昂は喜んでいた。

(これなら、量産しても売れるかもな)

 冬限定だが、かなり売れると予想する曹昂。

 売り出す時期などを考えていると、天幕に誰かがやって来た。

『失礼します。子脩様にお伝え致したい事があり参りました』

「うん? 何かあったのかな?」

「さぁ?」

 兵の報告を聞いた曹昂は何事か思い、劉巴に尋ねたが、心当たりが無いのか劉巴も首を傾げていた。

 これは話を聞かねばならないと判断した曹昂は兵を部屋の中に通した。

「失礼します」

 兵が一言断って天幕の中に入ったが、中に入ると曹昂達が毛布を掛けられた卓に入っていた。

 暖を取っているのだと直ぐに分かったが、毛布の中が暖かいとは想像も出来なかった。

「それで、何かあったのかな?」

「はっ。先程、所属が不明の騎兵部隊が何処かに向かいましたので、一応報告に来ました」

「所属不明? 呂布軍が夜襲を仕掛けて来たのじゃないか?」

「それが、駆けるだけで矢を一本も放たなかったそうです」

「矢を放たないで駆けるだけだと?」

「はい」

 兵の報告を聞いた曹昂は暫し考えた。

「……報告ご苦労。足労ついでに、何処かの部隊が移動したのかどうかを調べてくれ」

「はっ」

 曹昂の命令に兵は答えると、一礼し天幕から出て行った。

「殿。所属不明の部隊は何処の者でしょうか?」

「まず間違いなく呂布軍だろう」

 曹昂は断言した。

「呂布軍ですか。しかし、呂布軍であれば攻撃すると思いますが?」

 劉巴の疑問に曹昂は簡単に答えた。

「攻撃すれば足を止められるかも知れない。だから、攻撃しないで駆け抜けて行ったのさ」

「駆け抜けるという事は、何処かに向かったのという事になりますな。一体、何処に行ったのでしょうか?」

「援軍の要請に行ったのだろう。呂布と接点があり、援軍を送る事が出来る諸侯と言えば、一人しかいないね」

「袁術ですね」

 劉巴の答えに曹昂は頷いた。

「まぁ、援軍要請したところで袁術は動かないだろうね」

「何故です? 袁術と呂布の共通の敵は殿の御父君ですよ。援軍を出す可能性が十分にあると思います」

「そうかも知れないけど。援軍を送るにしても、無償で送る事はない。で、今呂布が出せる代償と言えば・・・・・・何かあるかな?」

 袁術も今の呂布の勢力で財宝など無いと分かっていると予想する曹昂。

 普通であれば、娘を送るのだが、その娘達は曹昂の人質になっていた。

 なので、婚姻同盟を結ぶ事など出来なかった。

「しかし、そうなりますと。先程駆けて行った者達は何を交渉材料にするつもりなのでしょう」

「分からないけど、其処まで焦る事ではないよ」

「何故です?」

 呂布と袁術が手を組むかも知れないという状況に、曹昂は焦る様子を見せないので劉巴は驚きつつ訊ねた。

「何を交渉材料にするにしても、下邳県の道という道は封鎖されているんだ。袁術の下まで行くのは難しい。よしんば行けて、援軍を得る事が出来たとしても、今の季節は冬。雪深くなれば動きが取れなくなる。そんな中で兵を送る事はしないよ」

 援軍を送るにしても雪解けを待たなければならない。

 そう考えた曹昂は焦らなかったのだ。

「……言われてみればそうですな」

 曹昂の話を聞いた劉巴はその通りだなと思い直した。

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[一言] 婚姻か。。。
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