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冬が訪れても

 曹操は自軍の陣地を囲う様に建てられている防壁の上に居た。

「まさか、本当に出来るとは……」

 曹操は自分の目に映る物を見ながら呟いていた。

 最初、土を固めて水を掛けて防壁を作ると曹昂が言い出した時、許可はしたが出来るかどうかは半信半疑であった。

 しかし、こうして出来た。

 土だけで作れば、風雪により崩されたであろう。

 だが、水を掛けて凍らせた事で、如何に強い風雪に晒されても崩れる事は無かった。

 現に兵士達が数百人ほど防壁の上に居るが崩れる様子は無かった。

「如何です? 陣地を囲うように防壁を作りましたので、雪交じりの風を防ぐ事が出来ますよ」

「確かにな」

 曹昂が言う通り、前日強い風雪が吹き曝したが、曹操軍の兵達は凍死する事は無かった。

 曹操も壁があるだけで、寒さが此処まで軽減されるとは思わなかった。

「加えて、あれか」

 曹操は自軍の陣地を見た。

 陣地に一角では、鼎の中に白い液体が入っていた。

 火が焚かれているので、湯気が立っていた。

 兵士の一人が鼎の底が焦げ付かない様に時折混ぜていた。

 其処に数人の兵士が器を持ってやって来た。

「一杯くれ」

「俺も」

「了解」

 兵士から器を貰った兵はその器に白い液体を注いだ。

 湯気立つ白い液体を兵士達は喉に流し込んでいく。

「……は~、温まるな~」

「しかも甘え。こんな飲み物が飲めるなんて良いな」

 兵達はその白い液体を美味しそうに味わっていた。

「兵達が飲んでいるのは、酒醸か? それとも一夜酒か?」

「まだ夜ではないので酒醸ですね。一夜酒には酒精がありますので、任務に支障が出ては困りますので」

「そうか。風雪に晒されない上に温かく甘い飲み物が飲めるのだ。これで兵達も寒さを凌げるな」

「はい。後は相手が音を上げるまで兵糧攻めするだけですね」

「そうだな」

 後は根競べかと思いつつ、曹操は防壁から下邳城を見た。


 曹操軍の陣地に氷の城が建てられてから数日が経った。

 雪は本格的に降り始め、雪が積もり始めた。

 呂布も城内の一室から外を見ていた。

「やっと、冬が来たか」

 望んでいた冬が来たと言うのに呂布は嬉しいという思いは無かった。

 どれだけ、雪が積もろうと強い風が吹こうと、曹操軍の陣地を囲うように建てられている氷の城によって、風雪の威力は激減していた。

 このままでは、長期戦になるなと思う呂布。

(何か、この状況を打開できる策は無いものか?)

 頼みの陳宮も良い手が思いつかないのか献策してこない。

 呂布はどうしたものかと思いながら溜め息を吐いた。

 物思いに耽っている呂布に部屋の外に居る兵が入って来た。

「申し上げます。王階殿と許汜殿が面会したいと参りました」

「うん? 何かあったのか? 通せ」

 呂布は二人が訪ねて来た理由が分からないので、取り敢えず話を聞く為、二人を部屋に通した。

 兵は一礼しその場を離れると、直ぐに王階と許汜の二人を連れて入って来た。

 兵は「では、失礼します」と言って部屋を出て行った。

 部屋に呂布達だけになると、呂布が話し掛けた。

「二人は何用で参ったのだ?」

 張邈の要請に従って兗州で反乱を起こした時、張超に付き従っていたが、その張超が敗死した際、逃亡し呂布の下に転がり込んで来た。

 新参と言っても部下が何を言うのか気になる呂布。

 なので、先に話し掛けたのであった。

「はっ。このまま城に籠ったところで、今の我が軍の力だけでは敵を撤退させる事は無理だと思います」

「其処で考えたのですが。此処は何処かの有力者に援軍を乞うのはどうでしょうか?」

「援軍か。しかし、この近隣で援軍を送る事が出来る者と言えば……」

 呂布は近隣で曹操と敵対し、且つ援軍を送る余裕がある者を考えた。

 そして、一人の人物が頭の中に浮かんだ。

「袁術か。しかし、あいつとは何度も戦を交えているから、援軍を出してくれるかどうか」

 呂布は無理だろうと思ったが、二人は違った。

「いえ、今我等は曹操に攻められているという状況です。袁術も曹操と戦い敗れております。ですので、曹操は敵という事です」

「我等と袁術の共通の敵は曹操です。曹操を討つ好機があると聞けば、袁術も援軍を出すでしょう」

「そう上手くいくのか?」

「其処は我等にお任せを!」

「必ずや説き伏せます!」

 王階達が強く進言して来た。

 呂布も現状では出来る事はそれぐらいしか無いかと考えた。

「……良し。では、準備ができ次第出立せよ」

「「はっ」」

 呂布から許可を得た王階達は直ぐに行動した。

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