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つかの間の

 寿春陥落。

 その報は下邳国に居た雷薄と陳蘭の下に届いた。

 援軍が見込めないと分かった二人は袁術を見限った。

 雷薄達は駐屯している城から逃げ出した。

 軍を預かる将が逃げたので、兵達の反応は分かれた。

 逃げるか、降伏するかのどちらかであった。

 袁術の為に最後まで戦おうと言う兵は一人も居なかった。

 こうして、呂布は下邳国と広陵郡を奪い返す事に成功した。

 ちなみに、逃げた雷薄と陳蘭はある山に籠もり山賊に成り下がった。

 劉備、劉虞の軍は豫洲を経由してそれぞれの領地に戻り、曹操軍も数日掛けて許昌へ帰還した。

 許昌城内に入ると、沿道に多くの民達が曹操軍の戦勝を祝う為に駆けつけていた。

 沿道に集まった者達は歓声を挙げて喜んでいた。

 曹操は献帝に討伐の経緯を報告し終えると、その足で自分の屋敷へと向かった。


「父上。御自分の立場と年齢を考えて下さい」

 屋敷に帰るなり、出迎えた曹昂にそう言われる曹操。

 曹昂の言葉が何を意味するのか直ぐに分かり、曹操は辟易していた。

「お前まで言うのか。全く、確かに総大将である私が最前線を駆けた事については問題はあるかもしれんが、其処まで言わなくてもいいだろうに」

 息子にまでそう言われ、曹操は内心腹が立っていたが、曹昂達の言う事の方が正しいので怒る事は無かった。

「御立場もありますし、何より歳を考えて下さい。もう、若くないのですから」

「人を年寄り扱いするなっ。私はまだ四十一だっ」

 年寄り扱いされた事に曹操は激怒した。

(この時代の四十代って、結構な年齢だと思うけどな……)

 そう思う曹昂。

 事実、この時代では六十まで生きたら十分に長生きと言われていた。

 天災、戦争、病気等により殆どの者達が四十を迎える前に亡くなるからだ。

「はぁ、そうですか。元気なのは結構な事ですね」

「お前と言う奴は、まぁ良い。私を老人扱いするのであれば、そろそろ孫の顔でも見せみろっ」

「いや、その……それについては、申し訳ありません」

 既に全員初夜を迎え、何度も夜を共に過ごしているのだが、未だに子供が出来たとの話は聞かなかった。

 曹昂が謝るので、曹操は不味い事を言った気分になった。

「あ~、おほん。そうだ。最近、やって来た荀彧の甥っ子は如何だ?」

 曹操は話を変える為に、荀彧の紹介で曹昂の補佐に付けた者について聞いて来た。

「ああ、公達殿ですね。とても、優秀ですよ」

 曹操がそう話し掛けてくれたので、曹昂はその者について話しだした。

 曹操が不在の間、許昌を曹昂にだけ任せるのは不安なので、荀彧に誰か居ないかと訊ねると、甥の荀攸を呼び寄せたのだ。

 公達は荀攸の字だ。

 呼び寄せられた荀攸は曹操の命令に従い、曹昂の補佐に徹した。

「大人しい人でしたが、助言などは的確で大いに参考になりました」

「そうか。私も会ってみると、素晴らしい人材だと分かり喜んだものだ」

 曹昂が荀攸について話すと、曹操は荀攸の才を高く評価していた。

(甥っ子で叔父の荀彧よりも六つ上というのは、ちょっと変わっていると思うけどね)

 これについては家庭の問題なので仕方がない事だと思う曹昂。

 荀攸の祖父である荀曇は荀彧の父親である荀緄とは兄弟であった。

 荀曇は荀攸の父である荀彝が出来た時には、まだ荀曇に子が居なかった。

 そして、荀彝が子の荀攸が出来て、荀攸が六歳の時に荀彧が生まれた。

 序列で言えば荀攸は荀彧の甥に当たるので、六歳年上の甥となってしまったのだ。

「で? どっちだ?」

「どっちとは?」

「ぷりんと餡子に決まっているだろう。どっち派だ?」

 曹操がそう訊ねると、曹昂は会食した時の事を思い出した。

「……どちらでも構わないと言っていましたね」

 あまり、食の好みは無いのか、自己主張が少ないのか荀攸は何を食べても反応が薄かった。

 黙々と食べ「とても、美味しいですね」とだけ言っていた荀攸。

(自己主張が少ないのもあるだろうけど、董卓の暗殺を計画したけど、失敗して牢獄に入れられた事で、何を食べても美味しいと思うようになったのかもな。あるいは、その計画も密告で発覚したから、本音を話さない様になったのかもな)

 荀攸の経歴を知っている曹昂は何となくだがそう思った。

「ふぅ、そうか。同志が出来ると思ったが残念だ」

 曹操は残念そうに呟いた後、曹昂を見た。

「今年は私達と年越しをするのか?」

「ええ、父上が良ければ」

「別に構わん。丕達も喜ぶだろう」

「そうですね」

 曹昂は許昌に居る時、暇を見つけては相手をしていたので、弟達はとても喜んでいた。

 妻妾達も居るので、曹昂は年越しまで許昌に居る事に決めた。

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