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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第一章

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これが董卓か

 豫洲を出た曹操達は兗州東郡に着き皇甫嵩と合流した。

 その際、曹操は自分の息子も従軍させる事を話した。

 後で居た事を知られて叱責されるよりも、先に教えた方が良いと思ったからだ。

 皇甫嵩はそれを訊くなり、まだ九歳の子供を従軍させるとはどういうつもりなのか、意味を分かりかねていた。

 これも曹家の教育方針か何かだと思い「軍務の邪魔はさせない様に」とだけ言って連れて行く事を許可した。

 曹操が自分の部下で無い事と、曹操の父である曹嵩の影響力があるから許された様であった。

 兗州東郡で数日休むと曹操達は冀州へと向かった。


 九月某日。


 曹操達は冀州にある官軍の陣に辿り着いた。

「此処が官軍の陣ですか?」

「うむ。そうだ」

 曹昂は曹操と同じ馬で前に乗っていた。

 そして、陣を見てみた。

 敵の侵入を防ぐ柵はボロボロで見張り台も傷だらけであった。

 それを見るだけで敵の攻撃が激しかったのが分かる。

 しかし、兵の様子に関してはおかしなところがあった。

 官軍の兵は鎧がボロボロで汚れているのに対し、見慣れない形の鎧を着ている人達の鎧は少し汚れているが何処も壊れていなかった。

「見慣れない鎧ですね」

「うむ。恐らく涼州軍の鎧だろう。あそこは羌族などの異民族が多く暮らしているからな。その影響で鎧も形が変わっているのだろう」

「成程」

 見慣れない形の鎧が涼州軍の鎧だと分かり納得したが、腑に落ちない事があった。

(鎧は汚れているけど、どうして傷が無いのだろう?)

 官軍の兵の鎧はボロボロなのに対して、涼州軍の兵の鎧は汚れているだけで傷らしい傷など無い。

 陣の柵がボロボロになるという事はかなり激しい攻撃を受けた筈だ。

 それなのに汚れているだけとはおかしいと思う曹昂。

(……もしかして、官軍だけ戦わせた?)

 官軍の兵がボロボロなのでそんな事を思う曹昂。

 しかし、そう考えると辻褄が合った。

 同時にどうしてそんな事をするのか考えて、仮説を立ててみた。

 自分直属の兵の損耗を嫌ったのか、或いは何か目的があるからか。

 曹昂は考えるが答えは出なかった。

「どうした。昂」

「いえ、何でもありません」

 答えが出ない考えなどしても無意味だと思い考えるのを止めた。

 そして、曹操は馬から降りると曹昂も降ろした。

「私は軍議に参加する。お前も参加しろ」

「えっ? 良いのですか?」

「構わん。邪魔にはならないからな」

 曹操はそう言って曹昂を連れて軍議が行われる天幕へと向かった。


 曹操は先に天幕の中に入り席に着いた。曹昂はその右隣に座った。

 副官の史渙は曹操の左隣に座る。

 そうして、少し待っていると皇甫嵩が部将達を連れて天幕に入った。

 皇甫嵩達は曹操の隣に座っている曹昂を見てギョッとしたが、直ぐに平静に戻った。

「孟徳殿。御子息を軍議の場に連れて来るとは、どういう心算か?」

「はっ。我が子もいずれは一廉の武人になる様にと、今の内に教育をしようと軍議の場に連れて来ました。迷惑は掛けさせませんので、何卒この場に居る事をご容赦下さい」

 曹操が頼んできたので、皇甫嵩も無下には出来なかった。

 下手に揉めて曹嵩に睨まれる様な事になったら、自分の出世に係わると考えた皇甫嵩。

「……よかろう。好きに致せ」

 皇甫嵩が居る事を許可したので、曹操は頭を深く下げる。

 それを見た部将達は「ただの親馬鹿だな」とか「騎都尉殿も人の子か」とヒソヒソと話していた。

 この場合、聞こえていると言うべきだろうかと迷う曹昂。

 そうしていると、天幕に誰かが入って来た。

 それは五十に差し掛かろうという年齢で豊かな顎髭を生やし、精悍な顔立ちをし恰幅が良い体形で横も広い男性であった。

 目元が狼の様に鋭いのも特徴であった。

 曹昂はその人を見るなり、内心で元々目は細いのかそれとも太り過ぎて目が細くなったのかどちらなのだろうか気になった。

 そう思っていると、その男性はドタドタと足音を立てて皇甫嵩の前まで来て一礼した。

「皇甫将軍。儂の不手際により迷惑を掛けて申し訳ない」

「いや、謝罪は結構だ。董卓殿」

 皇甫嵩がその男性の名前を言った事でこの人が董卓なのだと知った曹昂。

「話は聞いているだろうが、お主の代わりにこの方面の軍の将軍となった。何か異議があれば聞くが?」

「いや、何もござらん」

「そうか。では、将軍の印綬を渡してもらおうか」

 皇甫嵩がそう言うと董卓は懐から将軍の印綬を出して皇甫嵩に直接渡した。

「うむ。本物だな。では、この瞬間からこの軍は私が指揮を取る。皆の者、異論は無いなっ」

 皇甫嵩がそう言うと、皆何も言わなかった。

 そして、皇甫嵩は董卓を見る。

「董卓殿。お主はどうする? 我が麾下に入るのであれば、此度の失態を私が取りなしてやるぞ。嫌であれば洛陽に戻る事になるが」

「儂の不手際でこのような大事になったのです。ですので、貴軍の末席に加わる事をお許し頂きたい」

「よろしい。では其方も軍議に参加せよ」

「はっ」

 董卓は一礼して、空いている席に座る。

 董卓が座るのを見て、皇甫嵩は近くに居る部下を手招きする。

 その部下が近くに来ると部下に何事か伝える。

 それを訊いた部下は一礼して離れて行った。

 少しすると部下は手に大きい巻物を持ってやって来た。

 その巻物を中央に広げた。どうやら、その巻物は地図の様であった。

 広宗近くの地図を詳細に描かれていた。

「これが黄巾党が籠もっている広宗の地図だ。皆の者、この地図を見てどのような作戦が良いか意見を聞きたい」

 皇甫嵩はそう言うのを聞いて部将達はざわついた。

 てっきり、攻城戦で広宗を落すのだろうと思っていたのだが、皇甫嵩の言い分だと別な方法で攻略する様な言い方であった。

 地図を見て意見を聞きたいと言われても、何も思いついていなかった部将達は小声で話し合う。

「…………」

 董卓は口を閉ざしていた。

 戦功を立てていない自分は口を出すべきではないと思ったからか、それとも良い作戦は思いつかなかったのか分からかった。

「……うん。これはあれをやれば良いんだ」

 曹昂は地図を見るなり作戦が思い浮かんだ。

「父上。父上」

「何だ。息子よ」

「…………という策は如何ですか?」

「ふむ。悪くないな」

 曹操は曹昂の策を聞いて、現状で一番、皇甫嵩の要望に適っていると思った。

「皇甫将軍」

「何だ。孟徳殿」

「私に一つ策がございます」

「聞こう」

 皇甫嵩は曹操の策に耳を傾けて、その策を聞き終えると、誰も反対の意見も無いので、その策を行う事となった。

 軍議が終わると、皆天幕を出て行く。

 曹昂も曹操の後に付いて行く。

 その背を董卓がジッと見ていた事に曹昂は気付かなかった。

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