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調略は進む

 呂布の首を取る為、袁術は出陣の準備を整える。

 選び抜かれた三万の親衛隊を虎賁軍と名付け、遠征の準備に取り掛かっていた。

 袁術はその準備が終わるのを、今か今かと待ち焦がれていた。

 既に徐州の下邳国は全て支配下に治め、広陵郡もほぼ制圧していた。

 後は彭城に籠もる呂布を討ち取れば、徐州を支配下に収めるのも夢ではなかった。

 酒を飲みながら、出陣の準備が終わるのを待っている袁術の所に、宮臣が来て三通の文を渡した。

 一枚目は曹操。二枚目は孫策。三枚目は実の娘の袁玉であった。

 何事だと思いながら、袁術はまず曹操からの手紙を読んでみた。

 最初は時候の挨拶が書かれていたが、本題と言える文を読んでいく内に、袁術は機嫌を悪くしていく。

 今すぐに破り捨てたいという気持ちがあったが、息を吐いて気持ちを抑える。

 読み終えた曹操の手紙をくしゃくしゃにして放り捨てると、次に孫策の文を読んだ。

 その文を読み進めると、顔を赤くする袁術。

 曹操の文と同じく、くしゃくしゃにして放り捨てた。

 そして、今度は袁玉の文を読んだ。

「…………~~~」

 袁玉の文を読み終えると、今度は文を破った。

「ええいっ、どいつもこいつも、朕が帝位に就いた事を喜ぶどころか、僭称を止めるべきだと言うとは、何事か⁉」

 今迄読んだ文は、書き方は違うが全て皇帝即位を諫める内容であった。

 放り捨てた文がある所に破った文を投げ捨て、袁術は立ち上がると怒りに任せて何度も踏みつけた。

「ふんっ、今に見ていろ。朕の力を見せて、足元に跪かせてやるっ」

 袁術は文を踏みつけ終えると、その場を後にし、虎賁軍の準備を急がせた。

 

 同じ頃。


 張勲率いる袁術軍は彭城国に侵入していた。

 呂県を占領し、其処で暫し休憩を取っていた。

 下邳国を落とした勢いに乗り、彭城を陥落しても良かったのだが、呂県を攻略する前に寿春から使者がやって来た。

 袁術が三万の軍勢と共に徐州に向かっている。合流してから、彭城を落とすという命が下った為、

 袁術が来るまでの間、休憩となった。

 

 夜。

 第六軍を指揮している韓暹も陣地で休憩を取っていた。

 退屈そうに酒を飲んでいると、其処に兵がやって来た。

「申し上げます。羊を連れてやって来た陳珪という者が将軍とお会いしたいそうです」

「なに? 陳珪だと?」

 報告を聞いた韓暹は首を傾げた。

 羊を連れてやって来たと言われても、韓暹は別段不思議に思う事は無かった。

 農民でも目先が利く者は、自分の命と家族を守るために、家畜や食料などを提供する事はある。

 呂県に着くまでの道のりでも、多くの村を焼きはしたが、そうした心づけをした者達については便宜を図っていた。

 村を挙げて心づけした場合は、村に何もしないで通り過ぎて行った。

 だが、その羊を連れて来たのが、徐州でも名家で知られている陳家の者で、呂布の家臣の中でも最近重用されている陳珪と聞けば、誰でも首を傾げるだろう。

「……兎も角会うか。通せ」

「はっ」

 会いに来た以上、何かあるのだろうと思い韓暹は陳圭と会う事にした。

 兵に命じて連れて来させると、老齢の男性が兵と共にやって来た。

「お初にお目に掛かる。儂は陳珪と申す」

「お名前は噂で聞いております」

 陳珪が一礼すると、韓暹も同じように頭を下げた。

「して、陳珪殿は何用で参ったのかな?」

 韓暹が訊ねると、陳珪は直ぐに答えず代わりに外を見た。

「今日は月が綺麗ですな。どうです。外で歩きながら話しませんかな」

 陳珪がそう言うのを聞いた韓暹は二人きりで話がしたいと察し、その提案を受け入れ外へ散歩しに向かった。

 二人は暫く歩きながら、話を交わした。

 暫くすると、韓暹は一人で陣地に戻って来た。

 その顔は何かを決意した顔をしていた。そして、直ぐに第七軍の楊奉の下に向かった。


 韓暹と話を終えた陳珪は帰路に就いていた。

 羊は一応、心づけという事で置いてきたので、帰りは一人だけで歩いていた。

 そこへ男性が近付いて来た。

 陳珪は驚き身構えるも、

「お待ちを。自分は戯志才様の使者として参った者です」

 男性がそう言うのを聞いて、陳珪は警戒を解いた。

 陳珪も戯志才が曹昂だと知っているので、特に問題は無かった。

「我が主から、これを」

 男はそう言って懐から文を取り出し陳珪に渡した。

「ふむ。成程、近々袁術は寿春を発ち、徐州に入るか」

 噂通りだなと思う陳珪。

「して、調略の方はどうなりましたか?」

「順調じゃ。今夜にでも韓暹は楊奉に話して、反乱を起こすと述べていたぞ」

「承知しました。では、私は主へ報告に向かいます」

 そう言って男は陳珪に一礼し、その場を離れて行った。

 

 数刻後。

 第七軍を指揮する楊奉の下に韓暹が訪ねた。

 二人は暫くの間話し合った後、話は纏まったのか途中から笑顔で酒を酌み交わしていた。

 そして、ほろ酔いの韓暹は自分が預かる軍の陣地へと戻って行った。

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