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裏事情を確認する

 曹昂は行動を起こす前に気になる事があったので、それを確認する為に張繡の下に向かう。

 曹昂が気になっている事とは、それは鄒菊の事であった。

(実は、宛城の戦いは仕組まれたものだと聞いた事があるからな。其処の所を確認しよう)

 宛城の戦いが起こった原因は三つあると言われている。

 一つは曹操が鄒菊を側室に迎えた事に張繡が激怒して起こったという説。

 もう一つは曹操が鄒菊を側室に迎えた事に張繡が恨んでいる事と殺害を計画した事を知って、曹操に奇襲を仕掛ける事で起こったという説がある。

 そして、最後は張繍は本当は降伏するつもりはなく、鄒菊を使った美人計を使ったという説がある。

 これは、鄒菊の美貌で曹操を骨抜きにさせて、その隙に奇襲を仕掛けた事で起こったという説だ。

 そう言われているのは、降伏してそれほど時が経たない内に曹操が鄒菊に出会ったので、あまりに出来過ぎているからと言われている。

 先程の曹操の様子から、張繡が恨んでいる事を察して殺害を計画している様には見えなかった。

 なので、殺害計画を知って奇襲を仕掛けられたという説は消えた。

 曹昂は残り二つの内のどちらだろうか知る為に、張繡と話をする事にした。


 張繡が居る部屋に曹昂が着くと、張繡は丁度賈詡と話している所であった。

 曹昂の姿を見るなり、二人は話を止めて曹昂に一礼する。

「お初にお目に掛かります。私は曹昂。字を子脩と申します」

 曹昂が名乗ると、張繡達は顔を強張らせた。

 二人の表情を見た曹昂は直ぐに何かあるなと察した。

 だが、そんな思いを顔に出さず曹昂は訊ねた。

「父が随分とお世話になっているので、挨拶に参りました」

「あ、ああ、それはご丁寧に」

「曹子脩様の御高名はかねがね」

 張繡と賈詡は頭を下げた。

「いえいえ、そんな大した者ではありませんよ。ただ、父上のおこぼれを貰っているだけですよ」

 曹昂は笑顔で手を振る。

 だが、張繡達は逆に警戒を強めた顔をしていた。

「そろそろ誰を人質に出すのか決まったのかと思い訪ねて来たのですが、決まりましたか?」

「あ、ああ、いえ、それがまだ」

 張繡は少し戸惑いながら答えた。

「何分、一族の者から人質に見合う者が居ませんので、もう少々お時間を頂きたいと思います」

 賈詡も張繡の言葉を援護する様に口を挟んだ。

(ふむ。もう、奇襲をする事を決めたのかもな)

 二人の様子を見て、そう察する曹昂。

 だが、まだ確定はしなかった。

 其処で張繡に対して、ある事を訊ねて反応を見る事にした。

「そう言えば、張繡殿の叔母上が父上のお世話をしていると聞きましたが、本当ですか?」

 曹昂のその言葉を聞いた張繡は明らかに不快そうな顔をしていた。

(成程。実は鄒菊に横恋慕していたという話は本当の様だな。張済が死んだ時も、自分の妾になる様に言ったが断られたという話も事実だな。これは)

 張繡の反応を見て、曹昂の中で鄒菊を使った美人計の説は消えた。

 張繡が何も言わない事に、賈詡が肘で張繡を突いた。

 それで、ハッとした張繡は笑みを浮かべた。

「……は、ははは、叔母上が申し出ましてね。何分、曹司空様ほどの御方ですから、女性の方が良いと思いまして」

 張繡は笑いながら、曹昂に答えた。

 顔を引き攣らせながら笑う姿に、曹昂は申し訳ない気分であった。

(横恋慕している人を取られたら、誰でも怒るよな)

 これ以上触れない方が良いと思い、曹昂は話を変える事にした。

「そうですか。お気遣い頂きありがとうございます。ですが、父の世話をしてもらうのも心苦しいので、そろそろ、父を城の外に布陣している野営地に移動してもらおうと思っているのですが」

 曹昂の言葉を聞いて、二人は顔を見合わせた。

 そして、小声で何か話していた。

 微かに「まずいな」とか「しかし、まだ準備が」という言葉が聞こえて来た。

(ああ、もう奇襲する事を決めたな。これは)

 その会話から、全てを察した曹昂。

 早い所、こちらも準備せねばならないなと思った。

「……あ~おほん。司空様も不便な野営地におられるよりも、我が城で待ってもらった方が良いと思います。ですので、こちらが決まるまで、このままで」

 張繡が咳払いをした後、尤もらしい理由を述べた。

「……成程。そちらがそう言うのでしたら、こちらは構いません」

 変に疑われない様に、曹昂は話に合わせた。

「では、もう暫くお待ち下さい」

「分かりました。では」

 曹昂は一礼し、その場を後にした。

 

 張繡達が居る部屋から出た曹昂は、早急に準備へ取り掛かった。

 兵達に告げると共に、ある人物の元を訊ねた。

「典韋殿。ちょっと良いかな」

「若君。如何なされました?」

 曹昂は典韋と何事か話しあった。

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