表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

324/1005

困った岳父だな

 寿春より使者が来たというので、曹昂は陳留城内の一室へと向かった。

 室内には男が一人。

 男は曹昂を見るなり一礼した。

「寿春より参ったと聞いたが、義父上は壮健かな?」

「はい。お元気であられます」

 本題に入る前に雑談に興じる曹昂。

 袁術がどんな目的で使者を送って来たのか分からないので、とりあえず話に興じて相手の腹を探る事にした。

 話し終えたのか、使者が懐から手紙を取り出した。

「我が殿より、こちらを届ける様にと」

 曹昂は使者の差し出した手紙を受け取り、封を破いて中に入っている手紙に目を通した。

 ざっと目を通して、書かれている内容を読んだ。

 最初の方は、こちらは元気である事と、娘は元気にしているかどうかが書かれていた。 

 ここら辺はいつも通りであったが、次の行に行くと、凄い事が書かれていた。

 意訳すると劉協の姉を娶ったそうだが、何時絶える分からない王朝の皇女なんぞ娶るとは酔狂だな、と書かれていた。

 この劉協とは、現皇帝の献帝の名である。この何時絶える分からない王朝とは漢王朝の事を指していた。

 臣下である袁術が畏れ多くも現帝の名前を手紙に記し、漢王朝が何時滅ぶか分からないと書くなど、朝廷の重臣に見せたら『謀反だ』や『不敬罪で処刑』と言われてもおかしくなかった。

 この手紙は読み終わったら、処分しないと駄目だなと思いつつ、次の行を見た。

 其処には伝国璽を手に入れた事と、私はいずれ皇帝になるであろうとしっかりと書かれていた。

『私は今すぐにでも帝位に就くべきだと思うが、側近の閻象が今はまだその時期ではないと諫めるが、お主はどう思う?』

 手紙を読み終えた曹昂はすぐに返事を書く旨を使者に伝えると、別室に行き筆を取った。

「北は呂布。西は劉表が強い勢力を築いております。まずは、その二つの勢力を駆逐した後で、帝位の事を考えても宜しいかと思います。っと、こんなところか」

 遠回しに帝位に就くべきではないと諫める手紙を書いた曹昂は、使者にその手紙を渡した。

 使者の男は一礼し、部屋から出て行った。

 曹昂は安堵の息を漏らした後、袁玉の下に向かった。

 部屋を訊ねて来た曹昂を袁玉は笑顔で迎えてくれた。

「今日は如何なさいました?」

「義父上から文が来てね。その報告に」

「まぁ、父から」

 自分達が元気にしているかどうかという事が書かれていた事だけ告げた。

 流石に父親が帝位に就きたいと書いている事は告げられなかった曹昂。

 それを聞いた袁玉は嬉しそうであった。

 その後、二人は他愛のない話で時間を潰した。


 曹昂が手紙を書いた十数日後。


 手紙を受け取った使者は袁術に手紙を届けた。

「ふ~む。閻象よ。この手紙はどう思う?」

 袁術はそう言って持っている手紙を側に居る閻象に渡して見せた。

 手紙を受け取り読んだ閻象は頷いた。

「流石は殿が娘婿として見込んだお方ですな。素晴らしい慧眼をお持ちだ」

 閻象は曹昂の手紙を一読するなり、曹昂の意図を直ぐに察した。

 同時に自分と同じ考えの者が袁術の身内にいる事に安堵した。

(これで帝位に就けば良いと書かれていたら、殿は間違いなく帝位に就こうとしただろう)

 昨今の情勢と、今自分達が置かれている状況から考えて、帝位に就くべきではないと判断できたからだ。

「確かに、我等は曹操とは同盟を結んでおりますが、何時敵に回るか分かりません。加えて、呂布、劉表と言った勢力も見過ごす事も出来ませんな」

「ふぅむ。確かにな。では、帝位に就くのは止めるか。今は」

 そう言う袁術の顔はかなり不機嫌そうであった。

「それが宜しいかと」

 袁術の言葉を聞いた閻象は内心で安堵の息を漏らした。

「だが、娘婿の言う通りだ。我等の勢力を拡大する為には、呂布と劉表は邪魔だ。如何にすべきだと思う?」

 袁術に訊ねられた閻象は自分の考えを話し出した。

「お言葉通りですが、劉表は荊州を治めておりますので、我等よりも多くの兵を集められます。此処はまず呂布を討ち、然る後に劉表を討つべきかと」

「成程な。では、配下の将の誰かに兵を与えて攻めさせるか」

「お待ちを。呂布は我等に比べれば勢力こそ弱いですが、その配下は勇将揃いです。まともに当たれば、我が軍の被害は甚大です。此処は相手に混乱を起こさせてから攻め込むべきです」

「確かにそうだな。それで、どう混乱を起こすのだ?」

「呂布の配下に郝萌という者がおります。この者は武勇は優れているのですが、どうも金に目が無い男の様です。この者に賄賂を贈り、反乱を起こさせるのです」

「成程。その反乱で呂布が死ねば良し。死ななくても力を削ぐ事は出来るか」

 袁術は閻象の策を聞いて、面白そうだと思った。

「これだけでは弱いので、ある者に文を送ります」

「誰に送るのだ?」

「呂布が頼りにする軍師陳宮にです」

 閻象が言った名前の主を聞いた袁術は文を送り理由を訊ねた。

 閻象はその理由を話すと、袁術はその策で行く事を決めた。

 直ぐに郝萌に密使を派遣した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ