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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第五章

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彭城の戦い

 本陣に戻った曹昂は部将達を招集した。

 全員集まると、朱霊が口を開いた。

「曹昂殿。先程の張闓達の言葉ですが、事実なのでしょうか?」

 朱霊の言葉は居並ぶ部将達の内心を代弁していた。

 敵討ちという大義名分で徐州に攻め込んで来たものの、皆は陶謙が曹嵩達を殺したのか分からなかった。

 何せ、実行した張闓達が何処かに逃げたので、張闓達が財宝に目が眩んでしたのか。陶謙が命じたのかすら分からずじまいだ。

 其処に張闓達が曹嵩達を殺すように命じたのは陶謙だとハッキリと宣言した。事実、これで名分は立った。

 だが、皆は同時に思った。これはあまりに自分達に都合が良すぎる。張闓達を捕まえて何らかの取引をさせて言わせただけではないのか?と。

 そんな思いを込めて訊ねる朱霊。

 皆も朱霊の言葉と同じ思いを抱いている様で、曹昂が何を言うのだろうと思いジッと見た。

 そんな疑念に満ちた視線を浴びた曹昂は笑みを浮かべるだけであった。

「さて、張闓達がそう言うのであればそうなのでは」

 曹昂はそう言うだけで、取引をさせたとも無理矢理そう言う様に強要させたとも言わなかった。

 何かあると思うがそれ以上はどうなるのか分からず聞くのが怖くて、誰も聞く事が出来なかった。

「まぁ、そんな事よりも。今は彭城の方が先ですね。張闓の話を聞いて、城内に居る者達は動揺していると思うけど、どう思う?」

 曹昂は劉巴に訊ねた。

 劉巴も張闓達の言葉が本当にそうなのか気になっていたが、訊ねられた考えを切り替えて意見を述べた。

「はっ。城内に居る民、兵達も張闓の話を聞いてかなり動揺していると思います。それでですが、殿。どうして、先程攻撃をしなかったのですか? あのまま攻めたら城を落とす事も出来たでしょうに」

 劉巴は城攻めをしない事が不思議であった。

「時を置けば、張闓の話は広まるだろう。そうした方が動揺が広がって、城から逃げ出す人達も出て来る筈さ。何せ、噂では降伏しなかった城は老若男女問わず牛馬どころか、草一本残らないと言われているんだ。逃げ出さない訳が無い」

「成程。してもいない噂を流したのは、この為でしたか」

 劉巴がそう言うのを聞いて、臧覇が驚いていた。

 そして、小声で隣にいる于禁に話しかけた。

「本当に皆殺しにしていないのか?」

「ああ、降伏を促して守備兵を軍に組み込み食料を奪っただけだ。殆どの城は降伏した。攻めた城と言えば郯県だけだな。最も、あの城も計略で簡単に落としたがな」

 于禁も隠す事は無いと思い徐州に入ってからした事を臧覇に話した。

 話を聞いた臧覇は感心していた。

 臧覇と于禁は話しているが、曹昂は話を続けた。

「それともう一つ。孫策が下邳県を落とした後で攻めた方が良い。城を攻めている途中で下邳県の城に逃げ込まれて籠もられでもしたら、落とすのに時間が掛かるからね」

「そうですな。これによりますと」

 曹昂の言葉に同意する様に劉巴は近くにある沢山の巻物が入っている箱の中から一巻を取り床に広げた。

 広げた巻物は地図の様で徐州一帯が細かく書かれていた。

「この下邳県は沂水と泗水に挟まれており葛嶧山もありますので、攻めるに難しいでしょうね」

「そうなんだ。だから、先に孫策がその県を落としてから彭城を攻めた方が追撃が楽になるからね」

 曹昂が床に広げた地図に碁石を置いた。

「下邳県を落とせば、逃げた陶謙達は籠城する事も出来ない。逃げるとしたら東に行くか南に行くかだけど、其処を孫策が城を出て攻撃したら敵に大きな損害を与えられると見込んでいるんだ」

 曹昂の説明を聞いてまず下邳県を落とす理由が分かった。

「そういう訳なので、孫策が城を落とすまで待機。城を落としたら、彭城を攻める。生死は問わないから、陶謙を捕らえるとしよう」

「「「承知しました」」」

 曹昂から作戦を聞いた于禁達は一礼し本陣から出て行った。

 于禁達は城を攻めるので梯子を多く作らせるか部隊の連携を強化する為の調練に掛かっていた。

 その夜。

 城から多くの者達が西門から出て行ったという報告を夜襲に供えて西門を見張らせている兵から報告が上がった。

 その逃げ出した者達の中に陶謙が紛れていないか確認の為に城内の密偵と連絡を取ったが、陶謙は城内にある大広間で対応に追われており逃げる様子が無いと報告が来たので、曹昂は眠りについた。


 数日後。


 孫策軍の使者がやって来た。

 下邳県を守っていた県令が孫策軍を見るなり胆を潰した様で、孫策軍が城の近くまで来ると県令が城の外に出て降伏を申し出た。

 今は下邳県に駐屯していると手紙に書かれていた。

「何だ。まだ時間が掛かると思ったけど。意外とあっさりと落ちたな」

「これも殿の武名のお蔭です。では、殿。ご命令を」

 劉巴が促したので、曹昂は頷き立ち上がった。

「これより、彭城を包囲。包囲が完了した後に城攻めを行う。各部将にそう伝令せよ」

「「「はっ」」」

 曹昂の命令を伝えるべく部下達は一礼し走った。

 こうして『彭城の戦い』の幕が切って落とされた。


 曹昂が城の包囲を命じる少し前。


 彭城県城内の大広間。

 其処は重い空気が漂って来た。

「申し上げます。城内に居る兵、民問わず逃亡する者達が後を絶ちません。現状で敵軍に城を包囲されれば一月どころか数日耐えられれば良いところです」

 報告する前から空気が重い部屋を更に悪くする報告をしないといけない麋竺は口を開く前から辛そうな顔をしていた。

「ぬぅ、それで。城の兵はどれほど居るのだ?」

「正確に数えてはいませんが。一万は居ると思います」

「城で暮らしている者達はどうだ?」

「そちらもかなりの者が城から逃げ出しておりますので、どれほど居るのか分かりません」

 麋竺の報告を聞いて陶謙は手で顔を抑えた。

「ぬぅ、せがれの話を真に受けた者達が此処まで居るとは」

 陶応の話は直ぐに城内に広まった。

 更にはその話に尾ひれがつき「陶謙は息子の陶商を自分の後に継がせる為に、邪魔な陶応に曹嵩を殺す命令を出した。そして、陶応を殺して曹操に許しを乞うつもりであった」とか「陶謙は自分の企てがバレたので徐州を捨てて逃げる準備をしている」という噂まで流れていた。

 麋竺達がどれだけ曹嵩達を殺したのは張闓達であって陶謙は命じていないと言っても、信じる者は皆無であった。

 張闓だけであれば、そうだろうと思う者も居ただろうが、陶謙の息子の陶応までその様に証言しているのだ。

 陶謙と陶応の二人の仲は悪いとは言え、まさか息子が父親を陥れる様な事は言わないと普通に思うからだ。

 陶謙の所為で徐州が攻められると分かるなり、そんな卑劣漢の元に居られるかとばかりに兵と民達は逃げ出した。

「殿。これではこの城を守る事など、到底無理です。此処は城を出て再起を図りましょう」

「儂に逃げろと言うのかっ」

「遺憾ながら」

 麋竺が済まなそうな顔をしているのを見た陶謙は溜め息を吐いた。

「……仮に逃げるとしたら、何処の城に逃げるべきだ?」

「下邳国下邳県でしょう。あそこは要害ですので。敵軍が兵糧が尽きるまで籠城が可能です」

「むぅ、城に居る者達はどうなる?」

「……恐らく、皆殺しにされるかと」

 今迄の噂で敵軍が通った後には草木の一本も生えていないと言われていた。

 もし、陶謙が逃げれば城は落とされて城内に居る者達は皆殺しにされるだろうと麋竺は予測した。

「民を犠牲にして、自分だけ生き残れと言うのかっ。そんな事が出来るか‼」

「ですが。この城の今の状態では敵の攻勢を防ぐ事も出来ません」

 その後も麋竺と陶謙は口論を続けていると、兵が部屋に流れ込んで来た。

「報告‼ 敵曹昂軍が城の近くまで参りましたっ」

「もう来たかっ。殿。最早これまでです。早く脱出をっ」

「ならん。儂はそんな事など出来んっ!」

 陶謙は麋竺の進言を聞き入れないとばかりに首を振った。

 麋竺は無理にでも陶謙を連れ出そうと思い近付いたところで、別の兵が部屋に入って来た。

「報告! 城内に居る一部の兵が反乱を起こしましたっ。その者達により各城門が開かれました!」

「何だとっ」

 陶謙は自ら防衛の指揮を取り死力を尽くそうと思った矢先、兵達が反乱を起こしたと聞いて仰天した。

「何と、城門が開かれただとっ」

「はっ。このままでは敵軍が城内に流れ込んで参りますっ」

「殿。此処まで来たら防衛など無理です。逃げましょうっ」

「ぬ、ぬうう……仕方がない。下邳県にて再起を図るぞ!」

 陶謙はそう宣言し逃げ支度に掛かった。

 同じ部屋に居た劉備達も行動を共にする事にした。


 進軍を始めた曹昂軍十万。

 城が見える所まで来て、後は城を包囲し攻める様に命じるだけなのだが、曹昂は躊躇していた。

(ぬぅ、これは敵の策か?)

 曹昂達が城の近くまで来ると、突然跳ね橋が音を立てて降りて来たのだ。

 ついでとばかりに門も開かれていた。

 さぁ、どうぞお入り下さいとばかりに開かれた城門を見て曹昂は考えた。

(これはもしや空城の計? いや、敵に其処までの知恵者が居たかな? あっ、盧植が劉備の配下に居るって聞いたな。そいつの策か? 此処は少し様子を見るべきか?)

 開かれた城門を見て曹昂は少しの間、事態の観察する事にしようと軍には待機を命じようとしたら、城内から喚声が聞こえて来た。

 同時に鉄と鉄がぶつかり合う音と悲鳴まで聞こえて来た。

 ますます状況が分からなくなった曹昂。

 どうしようかと悩んでいる所に伝令がやって来た。

「報告! 城の南門から軍勢が出て行きました。旗は『陶』『劉』『関』『張』『盧』の五つの旗が掲げられていました」

「しまった! 城門が開かれたのは空城の計でも何でもなく反乱が起こっただけかっ。迂闊だったな。……仕方がない。于禁、朱霊の隊に伝令。南に逃げた敵兵を追撃せよっと」

「はっ」

 曹昂は気持ちを切り替えて、直ぐに命令を下した。

 その命令を聞いた兵達は直ぐに于禁達の元に走った。

「……陶謙達は于禁将軍に任せて。本陣と臧覇隊は彭城の制圧に掛かるっ」

 陶謙達の事は于禁達に任せて曹昂は城の陥落に掛かった。

 混乱状態で城を守る将も居ない上に城門は開かれていたので、城は半時も待たずに陥落した。

 だが、曹昂は怒り心頭であった。

「くそっ、まさか陶謙に逃げられるとはっ」

 逃げられる前に城を落とすか追撃して捕まえようと思っていたが、まんまと逃げられて曹昂は激昂していた。

 その様子を見て、周りの者達は一族の仇に逃げられて怒っているのだと思った。

「殿。この後如何なさいますか?」

 怒れる曹昂に劉巴は次の命令は何なのか訊ねた。

「……陶謙は卑怯にも己の身の可愛さに揚州へ逃げた! だが、我が一族の恨みを晴らさでおくべきか。皆の者、存分に奪い尽くせ!」

「は、それはつまり。略奪をせよという事ですか?」

「そうだ!」

「承知しました」

 城が陥落すると、曹昂は陶謙に逃げられた怒りにより略奪しても良いという命令を下したので、劉巴はその命を兵達に伝えた。

 その命を聞いた兵達は喜びの声をあげながら城内の物の略奪へと駆け出した。

 先の郯県城を陥落させた際、別動隊を率いた孫策隊が略奪した物を見ているので、自分達も同じような思いをしたいとの思いで駆け出す兵達。

 家屋の扉を壊し室内を物色した。人が居た場合は、邪魔されては困ると思い切り殺した後で物色した。

 中には若い女性も居た。その場合は兵達は下卑た笑みを浮かべて攫って何処かに連れて行った。

 数刻ほどすると、彭城内には悲しみと悲痛な叫びが響き渡った。


 城を脱出した陶謙達は東へ東へと逃げていた。

 追撃する于禁、朱霊軍は手を緩める事無く攻撃をした。

 逃げながら守るという、兵を動かす時に最も困難な行動を強いられる陶謙軍。

 如何に剛勇を誇る関羽、張飛と言えど戦えば腹が減り疲労が溜まる。

 昼夜問わず追撃する曹昂軍の攻勢に押されっぱなしであった。

 だが、それも下邳県に着けば終わると思い、陶謙達は駆けていた。

 その間に多くの兵達が倒れながらも一筋の希望を掴もうと懸命に逃げた。

 しかし、下邳県の城が見える所まで来ると陶謙達は絶望した。

 下邳の城の城壁には『曹』『孫』の旗が掲げられていたからだ。

 そして、その城に居るのが誰なのか程なく分かった。

「其処に居るのは卑劣漢の陶謙か! これは運が良い! その首を取って、この孫策の手柄にしてやる!」

 城壁に居る孫策が大音声で叫ぶと城門が音を立てて開かれた。

「狙うは陶謙の首ただ一つ。突撃せよ‼」

 程普は先頭に立って陶謙へ攻撃を仕掛けた。

 陶謙達は慌てて逃げようとしたが遅かった。程普率いる騎兵部隊の突撃を受けて、只でさえ少なくない陶謙軍の兵が地面に倒れた。

 程なく陶謙軍を追撃していた于禁、朱霊の軍が追い付き陶謙軍は挟撃された。

 兵は疲労困憊で碌に戦えない状態であったが、于禁達は手を緩めず攻撃した。

 陶謙達は挟撃される直前に逃げる事は成功したが、その際盧植の背中に矢が刺さった。

 辛くも逃げる事が出来た陶謙達は僅かな兵と共に南へ、南へと逃げていき東成県へと逃げ込んだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんか主人公の性格変わってない? ぬぅ、とか言う人じゃないし 怒りに身を任せるような人でも無かったし たぶんこの略奪が後に影響するんだろうけど雑すぎる
[一言] 今回の話はかなり酷いですね。逃げられたのお前が余裕ぶっこいてるからじゃん じいちゃん死亡の話も俺のために死んでくれとかいいながらよく分からんこと言いよるし、かなり無理があった。評価はどんどん…
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