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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第一章

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罪を憎んで人を憎まず

 曹家の屋敷。

 其処では曹騰達が卓を囲んでいた。

「という訳なのです。曹大人。・・・んぐ、もぐもぐ」

「ほぅ、敵が投降を求めて来たのはそういう訳であったか。・・・・・・くちゃくちゃ」

「あむ。・・・・・・しかし、それは偽りの投降という事はないのか? 惇」

「うむ。確かにそうだな。あぐ・・・・・・実は何処かに兵を伏せているとも考えられるぞ」

 食事をしながら朝あった事を話す夏候惇。

 その話を食事をしながら訊く曹騰達。

 夏候惇が来たのが食事時だったので、丁度とばかりに食べながら話を聞く事にした。

 出されているのは曹昂が作った料理である米と塩漬けにして切った野菜と焼いた長い香腸だ。

 初めて食べる料理があったので驚く夏侯淵と曹洪であったが、曹騰は箸で長い香腸を取り齧り付いた。

 パキュっという音を立てて咀嚼する曹騰の姿を見て、美味しいのだろうと思い箸を伸ばした。

 実際食べてみると美味しいので驚く二人。

 曹騰が躊躇なく箸を伸ばしたのは、前々から食べていたからだ。

 元はと言えば、この香腸は曹騰が肉を食べたいと言っていたのを聞いた曹昂が作ったのだ。

 齢七十を超えているのだが、まだ歯は全部残っており普通に食事は出来るのだが、流石に咬合力は落ちていた。

 だから、肉などが噛み切れない事があった。

 其処で曹昂は老人でも食べられる肉料理を作った。

 その中で曹騰が気に入ったのは香腸であった。

 噛むと肉の汁が出て来て噛むのにそんなに力が要らないのと、長さも調節が出来るので食べ残すという事が無いので気に入った様だ。なので、偶に食卓に出ていた。

「・・・・・・しかし、曹家ではこんなに美味しい物が出て来るのか」

「うぅむ。流石は曹大人」

「いやいや、これも曾孫の知恵のお蔭じゃな」

「昂か。大秦の書物だけではなく、墨子も読みその上様々な物を作るとは、豊富な知識を持っているな」

「流石は孟徳の息子だ。将来有望ですな。曹大人」

「そうじゃのう」

 曾孫を褒められて顔に喜色を浮かべる曹騰。

「さて、その投降を求めて来た黄巾党の者達じゃが。偽りでは無いのか?」

 口を布で拭う曹騰は夏候惇に訊ねる。

「私も最初はそう思ったので、城門を出て事情を聴きに行きました」

 兵達を連れて夏候惇は城門を出て、投降を求める黄巾党の中で部隊長の者に話を聞いた。

 部隊長は二人いた。

 その二人から話を聞いたところ、

 自分達は一時撤退を進言したのだが、他の部隊長には聞き入れてもらえなかった。

 これではいくら話しても無駄だと察した彼等は自分の部隊を連れて汝南に帰ろうとしたら、交戦を主張する部隊長が斬り掛かって来て、部隊長の一人がその一撃を受けて倒れた。

 それを見た部隊長は殺されては堪らないとばかりに応戦した。

 結果、醜い同士討ちが始まった。

 兵達も誰が敵で誰が味方なのか分からないので、余計に被害が増した。

 そんな中、倒れたと思われた部隊長が息を吹き返して、斬り掛かって来た者に襲い掛かり倒した。

 それを見て交戦を主張する者の一人が、我が身可愛さか、それとも内輪揉めを起こす者達とはやっていけないと思ったのか逃げ出した。

 兵達もその後を追って逃げだした。その者の後を追い駆けたのか、それとも何処かに逃げたのかは分からない。

 生き残った部隊長達は部隊を纏めると、残った人数が約六千程しかいなかった。

 逃げ出した兵達が汝南に戻り何と言うか分からない。その上、負傷兵しかいないので官軍に見つかりでもしたら全滅が目に見えていた。

 なので、部隊長達は投降する事に決めたそうだ。

 その証拠に交戦を主張する者の首を持って来た。

「一応、この話を持ってくる前に人をやって黄巾党の者達が居たと思われる場所に行かせたら、夥しい数の死体と戦闘をしたと思われる跡があったそうだ」

「ふむ。であれば、投降も真実味が増すな。その部隊長達が率いている兵達の様子は?」

「見た限り憔悴しきっていた。戦闘する意思も無いし更に言えば、武器も鎧もボロボロで使い物にならん」

「ふむ。であれば、ますます投降は真実味は増すが、問題は」

 曹洪がそう言うと、皆同意とばかりに頷く。

 それは投降させるとしたら、その後の処遇の事であった。

 黄巾党の者達を降伏させても問題は無い。

 そこら辺は大長秋であった曹騰が朝廷に文を送ればどうとでもなる。

 問題は降伏させるとしたらどうするかだ。

 奴隷として重労働に従事させるのか、それとも売り払うのか。この時代では人身売買は普通に行われていたので違法ではない。

 もしくは近くの土地を開拓させて其処に住まわせるのか。それとも曹家の私兵に組み込むのか。

 どうすれば良いのか分からず頭を悩ませる曹騰達。

「・・・・・・ここは昂の意見でも聞くか?」

「そうですな」

「何かしら良い意見を出すでしょうし」

「我らも問題ないです」

 四人がそう決めると、早速曹昂を呼んだ。


 同じ屋敷で暮らしてるので、曹昂は直ぐに来た。

「話は聞きましたが、その黄巾党の兵達の扱いをどうするか悩んでいるそうですね」

「うむ。その通りじゃ」

「全員我が家の私兵にしたらどうですか?」

 曹昂がそう答えると、曹騰達は顎を撫でた。

「ふむ。どうして、丸々私兵に組み込むのか教えてくれるか?」

「分散させても、それはそれで処遇が大変です。奴隷にして売るにしても、その間の食事を与えないといけません。商人がこの県に何時頃来るかどうか分からないですよ。だったら、最初から兵として組み込んだ方が良いでしょう」

「ふむ。それもそうだな。曹大人。兵に組み込んでも問題無いのですか?」

「特に問題無い。一万でも二万でも私兵として組み込めるぞ」

「ならば、問題無いな」

「とは言え、六千人を全員預かるのも大変でしょう。我らも少し預かり私兵として使わせてもらおう」

「だな。夏候兄弟はそれぞれ千人。私が千人預かろう」

「では、残りの三千は我が家の兵として預かろう」

 こうして、投降した黄巾党の兵達は少し分散されたが、私兵に組み込まれる事となった。

 なお、この時投降した黄巾党の部隊長の名は劉辟、龔都(きょうと)という名前で曹家の屋敷の私兵に組み込まれた。黄巾党の兵の中で中隊長の地位に当たる者の中に弁喜という名前の者がいた。

 こうして、後に『譙県の戦い』と言われる様になった戦いは終わった。

 後の事は夏候惇達が話して決めるというので、曹昂は部屋を出た。

 自室に戻る途中で空を見上げる曹昂。

(父上。今頃、どうしているだろうか?)

 雲一つ無い空を見上げながら曹昂は思った。

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